医学界新聞

寄稿 松本 晴樹

2021.07.12 週刊医学界新聞(レジデント号):第3428号より

 新型コロナウイルス流行下であらためて医療のデジタル化が注目される中,新潟県ではコロナ後を見据えた県全体の医療ICTの改革を急ピッチで進展させるべく,複数のプロジェクトを走らせている。2020年11月から開始された「ヘルスケアICT立県」は,病院や地域単位にとどまらず,県全体で地域医療の課題を解決するためのプロジェクトだ。

 もともと新潟県では,花角英世県知事の号令の下で医療ICTの改革を推進していたが,以下の課題意識を持っていた。

●既存のオンライン診療は都会の利便性を志向しており,地域の真の医療課題を解決していない
●既存の医療ビッグデータ解析は生活習慣病のハイリスク者を見つけているが,その後の介入が従来のままである

 現在これらの課題に対し,大きく分けて2つの柱による改革をめざす。

 1つ目の柱は,新潟の地域医療に密着したヘルスケアICTプロダクトの開発である。特化する領域は,①小児・産婦人科,②救急医療,③生活習慣病だ。このうち①と②は,世界的にみてもICTの活用はあまり進んでいない。47都道府県の中でも医師不足が深刻と言われる新潟県にこそ,このような領域の課題解決の意義がある。

 例えば①小児・産婦人科の領域では,分娩・産科・小児科施設へのアクセスが容易でない地域であっても,医療ICTの活用によって,妊娠から出産,乳幼児ケア,学童期の健康促進までを包括的に支援できるパッケージの開発を目標とする。まずはオンラインで産科・小児科医に相談できる体制を少数の市町村に試験導入し,課題解決可能性の程度や包括支援パッケ...

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新潟県福祉保健部長

2006年千葉大卒。石巻赤十字病院,湘南鎌倉総合病院にて研修後,09年厚労省入省。母子保健,広報,科研費,診療報酬制度,医薬品等の費用対効果評価などを担当。16年米ハーバード公衆衛生大学院へ進学し医療政策を専攻する。18年厚労省医政局地域医療計画課課長補佐(地域医療構想担当)を経て,20年より現職。

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