医学界新聞

2020.12.07

第28回総合リハビリテーション賞の受賞者が2020年4月に決定した。本賞は,『総合リハビリテーション』誌編集顧問の上田敏氏が東大を退官する際(1993年)に金原一郎記念医学医療振興財団に寄付した基金を原資として発足。今回は2019年発行の同誌に掲載された投稿論文33編を選考対象とし,最も優れた論文に贈られた。なお,例年9月に開催されている贈呈式はCOVID-19の影響で中止となった。

写真 外川佑氏

受賞論文は,外川佑氏(新潟医療福祉大/作業療法士)他による「右半球損傷患者の神経心理学的検査,ドライビングシミュレータ,実車評価と運転可否判定の関係」[総合リハビリテーション.2019;47(4):373-9.]で,机上検査で問題が検出されず,ドライビングシミュレータ(driving simulator:DS)や実車評価で半側空間無視(unilateral spatial neglect:USN)由来の症状が顕在化する右半球損傷(right hemisphere damage:RHD)患者の神経心理学的検査,DS成績,実車評価上の問題と運転可否判定の関連性を明らかにしたもの。RHD患者20人を対象に,神経心理学的検査,DS成績および実車評価上の問題と,運転可否判定との関連性を調べたところ,運転不可群では車線を維持するDSトラッキング課題の誤差率が大きく,実車評価時の問題点が有意に多く認められた。外川氏らは,RHD患者における軽度のUSNの問題は,DSや実車評価などの動的評価の活用により事前に検出できる可能性があると結論付けた。

総合リハビリテーション』誌編集委員を代表して佐伯覚氏(産業医大)は,「近年脳損傷者や認知症高齢者の自動車事故の増加が社会問題となっている中で,DSの有用な活用法を示したことは医学的・社会的に重要。今後のDS実地臨床の発展に大きく寄与する」と講評した。受賞の報告に対し外川氏は,「自身も持病により運転免許が停止となった期間があり,地域の移動手段(Community mobility),交通安全の重要性を身をもって実感した。今後一層精進し,対象者のCommunity mobilityと交通安全に資する研究を推進したい」との抱負を寄せた。

総合リハビリテーション』誌では2020年にも,同年に掲載された投稿論文から第29回総合リハビリテーション賞を選定する。同賞の詳細については,同誌投稿規定を参照されたい。