総合リハビリテーション Vol.48 No.12
2020年 12月号

ISSN 0386-9822
定価 2,530円 (本体2,300円+税)

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今月のハイライト 障害者の加齢に伴う問題とその支援

障害児者も加齢により,さまざまな成人の疾患への罹患率が増え,長期間障害をもって暮らしてきたことによる二次障害も頻度が増加します.そして家族や支援者の加齢や疾患といった変化にも対応しなければなりません.医療の進歩によって得られつつある障害児者の寿命の延伸が,ゆたかなものになるように,周囲や環境も支援方法や制度を変更していく必要があります.
本特集では,さまざまな立場の方々から,障害児者の加齢に伴う問題とその支援についてご執筆い
だきました.

障害者のライフイベントに合わせた支援 小池純子氏
障害者のライフイベントに合わせた支援では,横の連携(関係機関のチームアプローチ)と,縦の連携(ライフステージをシームレスに支援するチームアプロ―チ)が不可欠である.肢体不自由児では,児童福祉法,障害者総合支援法による支援が中核となり,リハビリテーション医療では,フォローアップと適時支援が必要である.就学支援,就労支援と移行し,福祉サービスも障害者総合支援法の利用となる.成人診療へのトランジションが問題であると同様に,福祉における移行連携も課題であり,さまざまな資源を利用しつつ,子供と家族の両方のライフイベントをバランスよく支援していくことが望まれる.

重症心身障害児者の加齢と施策 後藤一也氏ら
全国の重症児(者)数は約47,000人,そのうち3割が入所し,7割が在宅で生活していると推計され,入所者の年齢分布のピークは40~50歳台に移行しつつある.医療面では,加齢変化に伴う経年的身体機能や病状変化(例:骨粗鬆症と易骨折性)と,長期臥床に関連すると思われる疾患と,がんの発症が指摘されている.コミュニケーションに困難のある症例が多いため,加齢に伴う両親や家族の死別や疎遠により,医療同意の代諾者がいなくなる問題も生じ,成年後見制度も利用されつつある.在宅症例では介護者の高齢化への対策,親なき後を見据えた支援が必要である.

知的障害者の加齢と生活支援 志賀利一氏
知的障害者の加齢については,①早期に心身機能が低下する,②わずかな機能低下で支援が大きく変わる,③各種身体的疾患の早期発見・治療が難しいという3つの問題がある.また,知的障害者は認知症発症リスクが高いことに関心が高まっている.支援面からは,65歳での介護保険との移行や連携における課題,障害者支援施設における心身機能の低下を前提とした支援の必要性,平均世帯人数の減少に伴い,家族・親族支援前提の仕組みが破綻しつつあることなどが挙げられる.これらの事態に対して,生活の場の確保,各種疾病や心身の機能低下の予防と早期発見,地域における支援体制の構築,意思決定支援と経歴の引継ぎが重要である.

神経難病の進行に伴う倫理的・社会的課題 川口有美子氏
神経難病は今の医学では完治させることはできない疾患ではあるが,対症療法は確立しており,進行に伴うさまざまな症状を和らげることがほぼ可能である.そしてそれらは,告知自体の配慮を含めて,告知された日から,適切なタイミングで導入・提供されるのが望ましい.そのような発症初期からの緩和ケアと,終末期の緩和ケアいずれの場合においても,患者が医師と対等に情報の共有ができ,家族の指図を受けない一人の独立した人間として扱われることが望ましい.また,神経難病は介護保険の第二号被保険者なので,40歳以降は,介護保険(優先)と障害者総合支援法のサービスの併用となり,不整合や困難性があり,当事者団体では最新情報の提供を行っている.

高齢者における脊髄損傷―2つの視点から 大濱 眞氏
脊髄損傷者の寿命の延伸に伴い,脊髄損傷に起因する症状・病態のほか,加齢による疾患への罹患や身体機能の変化への包括的な対応が必要となっている.「疲労」も研究されており,社会心理的側面からのサポートも必要である.障害者総合支援法が,65歳からは介護保険優先適用となることには問題が多い.また,高齢者の脊髄損傷受傷が増加しており,リハビリテーションも行うことができる脊髄損傷専門の治療施設がさらに必要とされている.

日中活動支援・就労支援事業における障害のある人の加齢に伴う問題と政策課題 小野 浩氏
日中活動支援の場としては,生活介護,就労移行・継続支援,自立訓練事業などの制度があり,2018年度の時点で,自立支援給付の通所事業所の合計数は28,148か所,利用者は642,809名にのぼる.それらの利用者の加齢に対し,通所事業所ではさまざまな配慮や工夫がなされているが,法律・制度の谷間でもあり,整備が追い付いていない.また,老障介護の状態になっているため,通う前の生活基盤自体への支援も必要である.事業体系の見直し,65歳問題の解決,地域生活支援事業の充実が望まれる.

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価格については医書.jpをご覧ください。

障害者のライフイベントに合わせた支援
小池 純子

重症心身障害児者の加齢と施策
後藤 一也,他

知的障害者の加齢と生活支援
志賀 利一

神経難病の進行に伴う倫理的・社会的課題
川口 有美子

高齢者における脊髄損傷――2つの視点から
大濱 眞

日中活動支援・就労支援事業における障害のある人の加齢に伴う問題と政策課題
小野 浩


●巻頭言
自助具とショウジョウバエ
硯川 潤

●入門講座 3Dプリンタを使ってみよう!(2)
ケア現場への3 Dプリンタ導入支援――効率よく学び,継続して活用するためのメソッド
林 園子

●実践講座 運動器外傷の画像診断(4)
軟部組織外傷の画像診断
平田 正純

●研究と報告
脳卒中急性期から適切な長下肢装具作製を進めるための装具カンファレンスの導入後の変化
関 崇志,他

●短報
通所リハビリテーションにおける嚥下評価と入院率の関係
古舘 康司

●症例報告
緩和ケア病棟でのリハビリテーションが有用であったAYA世代終末期がんの1例
添田 遼,他

●集中講座 評価法の使い方 シリーズ1 総論(11)
自動車運転
加藤 徳明

●ユニバーサルデザイン(8)
SDGsとユニバーサルデザイン
西山 敏樹

●クラウド・IT時代のリハビリテーション診療(5)
訪問診療クラウド連携ツールへのリハビリテーション関係者の参入
日下生 玄一

●リハビリテーション関連職種のキャリアサポート(2)
臨床心理士・公認心理師における実践
中島 恵子

●Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
萩原朔太郎の『虚妄の正義』――病跡学のコペルニクス的転回
高橋 正雄

●映画に見るリハビリテーション
「82年生まれ,キム・ジヨン」――別人格の声は女性を抑圧・差別してきた社会への異議申し立て
二通 諭

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