遠隔教育のABC
[第1回] 「遠隔教育」の区分とツールの選択
連載 淺田 義和
2020.06.08
遠隔教育のABC
「遠隔での教育実践が求められた。さて,何から準備すべきか?」。新型コロナウイルス感染症による学修環境の変化を踏まえ,遠隔教育を行う上で押さえたいツールの選択と授業設計のエッセンスを3回にわたり紹介します。
[第1回]「遠隔教育」の区分とツールの選択
淺田 義和(自治医科大学情報センターIR部門 講師)
新型コロナウイルスの影響による休校で,ICTを活用した遠隔教育によって授業をスタートしている教育機関も多いのではないでしょうか。第1回は,遠隔教育とはそもそも何か? という観点から,その講義形式やツールの選択方法などについて説明したいと思います。
同期型と非同期型 授業形式の違いを押さえる
「オンライン教育」「eラーニング」……。さまざまな言葉が飛び交う遠隔教育で,まず押さえたいのが「同期型(synchronous)」と「非同期型(asynchronous)」の区分です(表1)。両者の定義が曖昧なままでは,その先の授業設計に影響を及ぼします。
表1 同期型・非同期型の特徴(クリックで拡大) |
そこで,教授法の一つ「反転授業」を例に両者の違いを見てみましょう。反転授業では学生が各自,講義動画や課題などを用いて知識を予習します。それを踏まえ対面式の場でディスカッションなどの応用課題を行う流れが一般的です。このうち,予習が「非同期型」,応用課題が「同期型」に該当します。同期型は,反転授業では対面で行われますが,遠隔教育ではオンラインで行われることになります。
当然ながら両者にメリット・デメリットが存在します。反転授業の例のように,両者を合わせたハイブリット型として行うことも可能です。それぞれの特徴を踏まえ,今求められる形式を検討してみてください。なお,本連載では,同期型・非同期型を合わせて「遠隔教育」と呼びます。
利用可能なツールとリソースは
遠隔教育にはさまざまなツールやリソースが利用可能です。数あるツールの中からどう選べばよいでしょうか。
同期型では,学生と教員を「リアルタイム」につなぐツールが求められます。ZoomのようなWeb会議システムを使えば同時かつ双方向の接続が可能です。音声だけであればLINE等のグループ通話でも不可能ではありません。
同期型に対し非同期型では,教員による教材や課題の掲載,学生による閲覧・課題提出,教員による評価などをMoodleのような学習管理システム(Learning Management System:LMS)上で運営することになります(表2)。同期型でも課題提出の際にはLMSがあると便利です。手間は少しかかりますが,非同期型はメールにリンク先のURLやファイルを添付する(極端な例では郵送)だけでも開講可能です。
表2 Web会議システムとLMSとの比較(クリックで拡大) |
学修用リソースは教科書をはじめPDFや動画,オンライン上で公開されている資料(動画であればYouTubeやVimeo,スライドであればSlideShareやSpeaker Deckなど)も,同期型・非同期型の双方で利用可能です。自身の教材を公開し共有することもできます。タブレット上のアプリやMOOCsの教材も活用検討の余地があります。
ツールと目的を混同させない
ツールを検討する際は,その使い方にも焦点を当てる必要があります。筆者は以前,「PowerPointでうまく録画できないのでZoomを使おうと思うが,大丈夫か?」との質問を受けたことがあります。この質問の意図には,以下の3つの可能性があります。
B.課題解決型学習(Problem-Based Learning:PBL)など,学生参加型で進めたい
C.Zoomを用いて講義を録画したい
このうち,AとBは同期型での利用,Cは教材作成のための利用と,目的が異なります。先の質問はCの事例(=非同期型の教材を作りたい)でしたが,教育者とシステム管理者との間での情報伝達のミスを避けるためにも,①「何をしたいか」という利用するツールの話と,②「何のためにするか」という利用目的の話を区別することが不可欠です。
LMSも...
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遠隔教育のABC(終了)
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