Dr.セザキングのUSMLEセミナー
[第2回] STEP1・2 CK―いかに素早くMCQを解き進めるか?(後編)
本邦随一,いや唯一の「USMLEコンサルタント」,Dr.セザキングがUSMLEの極意をピンポイント解説!
連載 瀬嵜 智之
2020.04.13
Dr. セザキングの
USMLEセミナー
本邦随一,いや唯一の「USMLEコンサルタント」,Dr.セザキングがUSMLEの極意をピンポイント解説!
[第2回]STEP1・2 CK―いかに素早くMCQを解き進めるか?(後編)
瀬嵜 智之(USMLEコンサルタント)(前回よりつづく)
さて,前回(本紙3362号)では,マスターレベルになれば選択肢を見ただけで「具体的に問われているパターン」まで判断できるようになるというお話でした。今回も引き続き同じ問題を使用して考えてみましょう。
Which of the following is the most appropriate recommendations regarding pharmacological management in this patient?
A: Maintain valproate at the lowest effective dose
B: Switch to carbamazepine
C: Switch to haloperidol
D: Switch to lamotrigine
E: Switch to lithium
F: Switch to sertraline
前回は,①「現在の薬の効果が十分でない場合」,②「現在の薬の副作用が出てしまっている場合」,③「(女性であれば)妊娠のために薬を変更しないといけない場合」の3パターンを選択肢の分析から導き出したところで終わりましたね。それでは,さらに選択肢を吟味していきましょう。
まず,選択肢Aから本問ではバルプロ酸ナトリウムをすでに使用していることが推測できます。もし①のパターンであった場合,答えは「治療域上限ギリギリを狙ってバルプロ酸ナトリウムを増量する」になるはずですが,その選択肢はないのでこの可能性は除外されます。
②のパターンであれば,気分安定薬であるバルプロ酸ナトリウムから,他の薬に切り換える必要があるため,同じ気分安定薬であるB,D,Eが正解の候補として挙がります。しかし,バルプロ酸ナトリウムから炭酸リチウムに積極的に切り替える理由が見つからないので,おそらくBかDが正解だと予想できます。
最後に,③のパターンであった場合,催奇形性の危険性が指摘されていない薬に切り換える必要があるので,正解はDだと推測できます。
このように,最初に一部の重要な情報から全体像を考察する作業は,試験のみならず,臨床現場でも必要なものです。
ようやくここで問題文を最初から読んでいきます。マスターレベル程の推測ができずとも,中級者レベル「双極性障害の薬に関する治療方針について問われていること」まで把握できたと仮定して,キーワードを拾いながら読んでいきましょう。
1文目:患者は37歳女性で「やはり双極性障害の診断で問題なさそう」と安心し,症状は安定していると予想されます。
2文目:やはり双極性障害の問題です。 3文目:この文は過去のことを述べているので,今回の問いに答えるためには特に重要ではありません。読み取るべきは「今は安定している」ということです。 4文目:やはりここ2年間はバルプロ酸ナトリウムで安定しているようです。他の薬は飲んでいないので,薬物相互作用は気にしなくてもよいと判断できます。 5文目:予想通り「結婚した(妊娠したい)から薬をどうにかしたい」と相談がくるという“センタリング”が上がりました。 6文目:やはり「妊娠したいからピルをやめたい」とのこと。 7文目:「再発が気になるから妊娠中も薬は続けたい」ということです。じゃあ,「催奇形性の心配が少ないD:Lamotrigine にしましょう」となるわけです。 |
このようにキーワードを拾いながら読んでいくことで効率的に正解にたどり着くことができます。マスターレベルであれば“pregnant”の文字を見つけた瞬間に選択肢Dを選ぶことも可能です。問題文を読む前からある程度の当たりをつけて「答え合わせをする」感覚で問題文を読み進めていけるようになれば理想的です。今回取り上げたのはSTEP2 CK(臨床医学)ですが,STEP1(基礎医学)でも同じように「先読み」して,まずは問題に慣れていきましょう。
さて,次回の最終回はSTEP2 CSの攻略ポイントについて解説していきます!
(つづく)
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