医学界新聞

2020.02.17



東畑開人氏『居るのはつらいよ』が第19回大佛次郎論壇賞受賞


 東畑開人氏(十文字学園女子大)の『居るのはつらいよ――ケアとセラピーについての覚書』(医学書院《シリーズ ケアをひらく》)が第19回大佛次郎論壇賞(主催:朝日新聞社)を受賞し,贈呈式が1月29日,帝国ホテル(東京都千代田区)で開かれた。

 2001年に創設された同賞は,現代日本の現実にかかわりながら,よりよい社会の創造をめざす,政治,経済,社会,文化,国際関係をめぐる,独創的で優れた論考に贈られる。

 本書は,東畑氏が沖縄県の精神科診療所で臨床心理士としてカウンセリング業務をしながら精神障害者のデイケアを4年間受け持った経験から,ケアとセラピーの本質を考察したもの。

 選考経過を報告した選考委員の酒井啓子氏(千葉大)は同書について,「臨床心理士である自身のデイケア勤務経験をもとに,日本社会が抱えるケアシステムの問題を浮き彫りにした秀作」と評し,「ケアとセラピーの違いについて,型破りで冒険的な文体によって明確に示した点がわかりやすく,啓発的だった」と述べた。

 受賞のあいさつに立った東畑氏は,「心のケアをする仕事とは何が正しいかよくわからない,不確実なことをやり続ける仕事」と表現し,「うまくいった,100点を取ったという感覚を持つことがほとんどない職業生活をこれまで送ってきた」と自身のケアとのかかわりを振り返った。今回の受賞のように「『これでよかったんじゃないか』と誰かがはんこを押してくれたら,私だけでなくケアする仕事にかかわる日本中の人が頑張り続けられる」と受賞の喜びを語った。

記念の賞牌を手に笑顔を見せる東畑氏

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