医学界新聞

寄稿

2019.05.13



【寄稿】

施設を越えて研修医のリーダーを作る
日本版チーフレジデントミーティング始まる

小杉 俊介(飯塚病院 総合診療科)


 日本には多くの臨床研修病院が存在する(2018年度の臨床研修実施施設は1035か所に上る)。このうち,プログラムに所属する研修医(レジデント)たちをまとめる役割を期待されるのが「チーフレジデント」(以下,CR)だ。国内にもCRの役職を設けている施設があり,多くは卒後3~5年目の若手医師が務める。

 Alliance for Academic Internal Medicine(AAIM)という米国とカナダの医学部や教育病院で組織された団体の傘下にある,内科プログラムディレクターの組織Association of Program Directors in Internal Medicine(APDIM)は,CRを「管理・教育・メンタリングとカウンセリングの業務を実施している,卒業もしくは卒業見込みの研修医」と定義している。2009年の全米の調査では388プログラム,970人のCRがいることが報告されており1),CRになることはその後の自身のキャリアアップになると認識されている。

 一方,CRに関する本邦での調査や先行研究は少なく,日本ならではのCRの明確な定義も存在しない。臨床研修病院のうちどの程度CRがいるかすらも不明である。われわれはこれまで,既にCRが存在することがわかっている10施設に対しアンケート調査を実施し,その役割や代表する範囲に違いがあることを示してきた(Kosugi S, et al. Asia Pacific Medical Education Conference;APMEC 2018にて発表)。

 私が当院のCRだった際に米国で研修を受ける機会があり,そこで本場米国のCR業務の幅広さとその役割が重要視されていることを実感した。APDIMが次年度のCRを対象に「Chief Residents Meeting(全米チーフレジデント会議)」を毎年開催していると聞き,さらに日本からも聖路加国際病院の次期CRが参加していることを知って2),17年3月に私も参加した。

チーフレジデントの集う会を日本でもやってみたい

 「君たちには輝かしい未来が待っています!」。この言葉で始まったChief Residents Meetingは,CRになる意義,1年間の過ごし方,CRがよく陥るミスなど,CRに必要とされる知識を共有するためのレクチャーやワークショップが開かれ,CR同士のネットワーク作りが行われていた。「日本にどの程度CRがいるかわからないが,同じような会を日本でもやってみたい」。それが参加しての感想だった。

 帰国後に早速,CRの経験がある水戸協同病院の長崎一哉先生,橋本市民病院の橋本忠幸先生,聖路加国際病院の松尾貴公先生,The Queen's Medical Centerの野木真将先生らに企画を相談した。

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