科学者の良心(今村文昭)
連載
2018.09.03
栄養疫学者の視点から
栄養に関する研究の質は玉石混交。情報の渦に巻き込まれないために,栄養疫学を専門とする著者が「食と健康の関係」を考察します。
[第18話(最終回)]科学者の良心
今村 文昭(英国ケンブリッジ大学 MRC(Medical Research Council)疫学ユニット)
(前回よりつづく)
少々大げさな言い方になってしまうが,科学者の良心とは何だろう。そんなふうに考えさせられる出来事が何度かあった。これまでこなした数百の査読もその一端である(査読の課題,困難については第6話・3238号を参照)。医学雑誌に投稿され査読に回る論文の採択率はおよそ10%前後と考えている。したがって査読をする際,私は基本的に問題ありきという前提で目を通す。そしてその問題をできるだけ改善することで,科学,社会,および当該ジャーナルとその読者にとって良質な論文になり得るか否かの判断をエディターに伝える。
査読というボランティアを真摯に務めようと思えば相当の時間を要し本業に支障を来し得るからか,査読を軽視する研究者も少なくないようだ。私はこれまで出来不出来に関係なくどんな投稿でも,研究者としての幅を広げるための良い鍛錬だと考え,我流ながら査読をしてきた。これまで受けた査読賞や編集委員への招聘は,そんな自分の考え方を後押ししてくれた。
このご時世,査読がないに等しい営利目的の“プレデター誌”も増えてきた(BMJ. 2015[PMID:25596387])。査読においても,論文著者のあからさまな科学軽視に目を疑う内容にもしばしば遭遇する。勉強不足でも真摯な姿勢があれば良いが,中には科学を虚仮にしていると考えざるを得ないケースもあり,エディターにはその印象をハッキリ伝える。
私は一般向けの書籍であっても,現時点でエビデンスとされている見解に沿ったまま,かみ砕いて書くのが基本と考えている。一般向けなのだからそのための表現の工夫などが必要だが,それはエビデンスを都合良く解釈して書いても良いというようなことではまるでない。
以前...
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