医学界新聞

2018.01.22



Medical Library 書評・新刊案内


はじめて学ぶ看護過程

古橋 洋子 編

《評 者》今野 葉月(埼玉医短大教授・基礎看護学)

看護過程の考え方を明快かつ具体的に解説

 看護の醍醐味には“看護の対象の個別性を踏まえた看護の実践”があります。この個別性を踏まえた看護の実践には,看護理論と看護過程が不可欠であることは言うまでもありません。『はじめて学ぶ看護過程』というタイトルが示すとおり,本書は,看護実践に不可欠な要素である看護過程について解説している書籍です。看護過程の各ステップの解説はもちろん,情報収集の方法や記録の書き方などが,わかりやすく具体的に示されています。中でも,第II章の「看護過程の頭づくり」では,看護学生から「難しい」と常に声が上がる「アセスメント」にポイントを絞って解説しています。

 患者を理解するために,看護学生は事前学習として病態関連図などを作成します。本書でも,患者の病気と成長発達にかかわる一般的な内容を関連図にしていますが,その利用方法がとてもユニークです。それは,作成した病態関連図に患者の情報を重ねるようにしてまとめていく手法で,「積み上げ方式」と紹介されています。「積み上げ方式」でまとめていくと,患者の状態が関連図から浮かび上がって見えるため,患者から収集した情報のまとまりが一目でわかったり,不足している情報に気付いたりできるようです。

 さらに,本書では情報収集の方法のみにとどまらず,“情報がうまくつながらない”場面を想定して,学生がセルフチェックできるように短い文章でポイントを示しています。思考過程を学ぶ学生が困難にぶつかったとき,乗り越えられる工夫が随所にちりばめられています。

 また,看護過程をいくら学習しても,看護理論を活用しなければ患者の持つ健康上の問題を明確にすることはできません。本書では事例を用いて,「ヘンダーソン」「オレム」「ロイ」の看護の視点に沿った看護過程を紹介しています。「基礎看護学ではヘンダーソン看護論を使って看護過程も勉強したけれど,他の理論ではどうしたらよいのだろう?」と考える学生は少なくありません。どの看護理論を用いても“個別性のある看護”を導き出す力をつけるには,事例を通して,看護理論の特徴を踏まえた“アセスメント”や“看護診断”を学ぶことが効果的と思われます。

 本書は看護学生に向けて書かれていますが,教員や臨地実習指導者の立場で読み進めると,編者らが教育経験の中で培った指導方略を読み取ることができます。また,NANDA-NOC-NICの連動についても,事例を用いて具体的に示されていることから,電子カルテの運用にかかわる看護師にもお薦めできます。看護学生から看護師,教員まで,幅広く手に取っていただきたい一冊です。

B5・頁120 定価:本体2,000円+税 医学書院
ISBN978-4-260-02867-7


看護師長ハンドブック

古橋 洋子 編

《評 者》中川 美都子(富山県リハビリテーション病院・こども支援センター看護局長)

新任看護師長に贈りたい一冊

 このたび,『看護師長ハンドブック』が出版されたと伺い,早速に拝読したところ,とても読みやすく,現場ですぐに活かせる内容だと感じました。

 まず,「序章 看護師長になるということ」「第1章 看護師長に求められる資質」は,新しく看護師長になられた方にぜひ読んでいただきたい内容です。また,「第2章 看護師長になって」では,仕事の考え方・進め方が細かく丁寧に書かれており,チェック形式で活用しやすいと思いました。その中の「スタッフの育成」の項では,新人看護師や中堅看護師のみならず,中途採用看護師,主任,産休・育休および病休からの復職支援までカバーされており,本書を参考に対応できると思える内容でした。そこで,私は新任看護師長にこの本をプレゼントしました。

 新任看護師長は,この本を活用しながら,日々の病棟の業務に奮闘しています。なかでも,スタッフの育成については,どのようにアドバイスをしたらよいか悩んでいましたが,本書を活用することで問題解決の糸口が見つかったと話してくれました。また,看護師長の経験が浅い者にとっても,各項目に具体的な行動や留意点が表の形式で示されているために理解しやすく,行動計画や数か月単位の振り返りチェックリストとしても活用しているそうです。

 序章内の「看護師長のあるべき姿」の項に書かれていた,看護師長としての「信念を貫き通す」ことの大切さについては,私自身も大いに共感するところがありました。患者中心の揺るぎない看護観をもち,看護師長としての責任を果たそうとする姿は,スタッフに伝わるものです。看護師長としての覚悟や勇気,決断力の必要性も再認識しました。スタッフが忙しそうだと,管理者はつい手伝ってしまうものですが,病棟全体をみて指示する管理者になる必要があるとあらためて思いました。本書は,具体的にどう行動すべきかがまとめられているので,折に触れて参照できます。長く愛用できる一冊だと思います。

 私は現在看護局長の立場ですが,新任看護師長にこの本をプレゼントしてよかったと思っています。この本を活用することで,新任看護師長の日々の成長がうかがえます。また,今後新たに看護師長が誕生したときには,この本をお祝いとしてプレゼントしていきたいと思っています。本書を看護師長の教育に活用することをお勧めいたします。

A5・頁140 定価:本体2,200円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03006-9