泌尿器領域(宗近次朗,隈丸加奈子)
連載
2018.01.08
賢く使う画像検査
本来は適応のない画像検査,「念のため」の画像検査,オーダーしていませんか?本連載では,放射線科医の立場から,医学生・研修医にぜひ知ってもらいたい「画像検査の適切な利用方法」をレクチャーします。検査のメリット・デメリットのバランスを見極める“目”を養い,賢い選択をしましょう。[第9回]泌尿器領域
宗近 次朗(昭和大学医学部放射線医学講座)
隈丸 加奈子(順天堂大学医学部放射線診断学講座)
(前回からつづく)
症例50歳女性。過去に2度,腎盂腎炎と尿路結石の既往あり。前日より38.9℃の発熱が出現。救急外来を受診し尿検査で膿尿を認めた。抗菌薬と解熱鎮痛薬を処方して帰宅となった。しかしその後も自宅で発熱,悪寒,腰痛が持続したため,本日再度受診。血液検査では炎症反応高値を認めた。 |
急性腎盂腎炎は一般的に尿路の逆行性感染により惹起される有熱性尿路感染症です。基礎疾患(前立腺肥大症,神経因性膀胱,尿路結石,尿路悪性腫瘍,尿路カテーテル留置,糖尿病やステロイド投与などの全身性易感染状態)の有無により単純性と複雑性とに分類されます。
急性腎盂腎炎の病態と治療
症状は先行する膀胱炎症状(自覚しないことも多い)に加え,発熱,全身倦怠感,患側の肋骨・脊椎角圧痛(CVA tenderness)などが出現します。同時に悪心・嘔吐などの消化器症状を認めることもあります。尿検査では膿尿や細菌尿,血液検査では白血球増多などの炎症所見がみられます。原因菌は単純性では大腸菌が約8割を占めますが,複雑性は緑膿菌をはじめとする多種類のグラム陰性桿菌と,腸球菌を主とするグラム陽性球菌の割合が増加します。
治療は尿培養検査の結果が判明するまで,広域抗菌薬の使用を考慮します(empiric therapy)。その後,治療開始後3日目を目安にempiric therapyの効果を判定し,細菌学的結果が判明した時点で菌種,薬剤感受性に基づく適正な抗菌薬に切り替えます(definitive therapy)。可能であれば狭域スペクトラムの抗菌薬への切り替えが望ましいとされています(de-escalation)1, 2)。
急性腎盂腎炎が重症化すると腎膿瘍や腎周囲膿瘍へ進展します。腎膿瘍に進展する手前の病態として急性巣状細菌性腎炎(acute focal bacterial nephritis;AFBN)が認識されています。尿路閉塞に続発する腎盂腎炎では,膿腎症や尿流の停滞
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