医学界新聞

連載

2017.12.04



賢く使う画像検査

本来は適応のない画像検査,「念のため」の画像検査,オーダーしていませんか?本連載では,放射線科医の立場から,医学生・研修医にぜひ知ってもらいたい「画像検査の適切な利用方法」をレクチャーします。検査のメリット・デメリットのバランスを見極める“目”を養い,賢い選択をしましょう。

[第8回]腹部領域

曽我 茂義(防衛医科大学校放射線医学)
岡田 真広(日本大学医学部放射線医学分野)
隈丸 加奈子(順天堂大学医学部放射線診断学講座)


前回からつづく

症例

 発熱と腹痛を訴え来院した49歳男性。来院1時間前にから揚げを食べたという。研修医Aが診察したところ右季肋部に一致した圧痛がみられ,採血では白血球数12000 /μL,CRP 8.0 mg/dLと高値であった。急性胆囊炎を疑い,確定診断のための画像診断としてCT検査を行うことを指導医Bに提案した。

急性胆囊炎の画像検査の第一選択は超音波

 急性胆囊炎は胆囊に生じた急性の炎症性疾患のことであり,その多くは胆石に起因します。急性胆囊炎診断基準TG131)では,身体所見と検査所見を併せた診断基準が提唱されており(),感度91.2%,特異度96.9%と高い診断能を有します。

 急性胆囊炎診断基準TG13(文献1より)

 画像検査で特徴的所見を認めることが確定診断の条件で,急性胆囊炎の画像診断の第一選択は超音波検査です。近年,CT検査へのアクセスが良いことから,超音波検査に先んじてCT検査が施行される場面も見掛けますが,急性胆囊炎の診断においては,CT検査よりも超音波検査のほうが優れています。特に感度が高く(超音波検査83%,CT検査39%)2),コレステロール系の結石や混合石の場合,CTでは胆汁とのコントラストがつきにくく偽陰性となってしまうことがあるのに対して,超音波検査ではその多くを確認可能です()。

 症例の超音波,CT,MRI検査
A:超音波画像。5~8 mm大の結石5個と砂粒状の結石ないし胆砂の貯留を認める。
B:単純CT。胆囊に腫大を認めるものの,胆囊壁肥厚はなく,胆囊内腔に結石も確認できない。
C:造影CT。Bと同様に胆囊内腔の拡大のみで結石は指摘されない。
D:MRI検査のT2強調画像。胆囊内腔に8 mm大の結石と砂粒状の結石ないし胆砂の貯留を認める。

 また急性胆囊炎の診断に重要な所見である壁肥厚の有無についても,CT検査より,空間分解能が高い超音波検査のほうが優れています。さらに,超音波プローブによる胆囊圧迫時の疼痛(sonographic Murphy’s sign)の感度は63.0%(95%信頼区間:49.1~77.0%),特異度は93.6%(95%信頼区間:90.0~97.3%)とされ3),取得する画像データ以外にも診断に有用な情報が得られます。

 加えて超音波には放射線被ばくがなく,簡便であり外来診察でもベッドサイドでも即座に施行できるメリットがあります。『急性胆管炎・胆囊炎診療ガイドライン2013』では,「急性胆囊炎が疑われるすべての症例に超音波検......

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