医学界新聞

連載

2017.05.15



めざせ!病棟リライアンス
できるレジデントになるための㊙マニュアル

ヒトはいいけど要領はイマイチな研修医1年目のへっぽこ先生は,病棟業務がちょっと苦手(汗)。でもいつかは皆に「頼られる人(reliance=リライアンス)」になるため,日々奮闘中!!……なのですが,へっぽこ先生は今日も病棟で頭を抱えています。

[第12話(最終話)]
人生のフィナーレ
その見送りは,“最期”にふさわしいですか?

安藤 大樹(岐阜市民病院総合内科・リウマチ膠原病センター)


前回よりつづく

 病棟から「先生,今モニターの波形がフラットになりました」とへっぽこ先生のPHSに連絡が入りました。誤嚥性肺炎後の廃用で長期入院していた92歳のAさんです。3週間前から徐々に状態が悪化しており,ご家族にもその事実は何度も説明しています。ご高齢の奥さんは認知症のため十分に理解できていなかったようですが,かいがいしくAさんのお世話をしていた三男ご夫婦にはしっかり理解してもらっていました。あいにく今日はどなたの付き添いもなく,ご家族が病棟に来られるのは30分後だそうです。「Aさん,頑張りましたよね。ご家族も受け入れられていたようですし,“大往生”ですよね」と,看護師さんも感慨深げです。

(へっぽこ先生) そうだよね。今日はいらっしゃらないけど,ご家族も最期までしっかり介護されていたし……本当に良いご家族だからねぇ。
(セワシ先生) ご家族のケアを含めて,へっぽこ先生もしっかりやってくれたよね。もしかしたら,主治医の僕より信頼されているかもしれないよ。よかったら,最期の説明と死亡確認やってみない? きっとご家族も喜ばれるよ。
(へっぽこ先生) え,でも今までそんなことやったことありませんよ。第一,そんな重要なことを研修医の僕がやっていいんですか?


 患者さんの死を家族に告げること――,臨床現場の医師にとって最も重要な場面の一つです。でも,実際に皆さんが接した死の場面は,思ったよりもあっさり(というより事務的)ではありませんでしたか? 人生の最期が決まる瞬間は生まれた日と同じくらい,むしろそれ以上に重く尊い日のハズ。でも,生まれる瞬間は皆で大喜びするのに,亡くなる瞬間はさらっと終わっていくのが現実です。本当にそれでいいのでしょうか? 今回は,実際に死亡確認をする場面の流れに沿ってお話ししますね。

ご家族を呼ぶ際の気遣いも忘れずに

 初めからベッドサイドにご家族がいらっしゃる場合はいいのですが,状態悪化時にご家族を呼び出すときには注意が必要です。「○○さんの状態が悪化しました! 急いで来てください!」なんて電話が突然掛かってきたら,誰だって取り乱しますよね。特に夜中にそんな連絡があったら大パニックです。かといって「大丈夫だとは思いますが,とりあえず来てください」では,来院後のトラブルの元です。「突然の連絡で申し訳ありません。○○さんの状態がかなり悪くなっており,亡くなられる可能性もあります。詳細は来院後に説明いたします。できる限りの対応をさせていただきますので,慌てず,気を付けてご来院ください」といった連絡をしましょう(可能であれば連絡は医師からすることが望ましいです)。

病状説明は全員がそろってから

 ご家族が一人来院したら説明,次の方が来院したらもう一回説明,では十分な急変対応ができません。また,個別の説明ではそれぞれの解釈も変わりやすく,ご家族がお互い精神的なサポートをするのも難しくなります。「皆さまが来院されたら説明いたしますので,そろわれたらスタッフにお声掛けください」という一言が重要です。説明する際は,その後のトラブル防止や精神的ケアのために,担当看護師や経験豊富な看護師に同席してもらうほうがいいでしょう。そして,つい忘れがちですが,スマートフォンや院内PHSなどの音は消しておいてください(特に年配の方の中にはこうした媒体に対して不快感を持たれる方もいらっしゃいます)。

 説明を始めるときのポイントは,......

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