医学界新聞

2016.11.07



Medical Library 書評・新刊案内


加齢黄斑変性 第2版

吉村 長久 編

《評 者》北岡 隆(長崎大大学院教授・眼科・視覚科学)

内容が一新された待望の第2版

 待望の『加齢黄斑変性』の第2版が出版されました。

 加齢黄斑変性という疾患は「狭義加齢黄斑変性」と「広義加齢黄斑変性」という用語がある一方で,ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)の病気の本態は新生血管か,異常血管かといった議論があり,ある意味体系立てて理解しにくいという問題がありました。そんな中『加齢黄斑変性』初版では,PCVに多くのページが割かれ,通読しても面白く,一部を読んでいくだけでも加齢黄斑変性の理解が深まりました。しかしその後,新生血管の研究が進み,抗VEGF薬治療も新しい局面を迎え,pachychoroid neovasculopathyなどの概念が出てきて,加齢黄斑変性の概念も変わりつつあります。

 また初版では時代的背景もあり使用されたOCT画像がtime-domainのものも多く,解像度の点で粗い画像が多かったという問題がありました。第2版では画像が圧倒的にきれいになっており,さらに加齢黄斑変性の概念図が大きく変わっています。分担執筆が多い昨今にあり,編集の吉村長久先生の考えで貫かれた一貫性のある内容で,通読しても面白く,一部を読んでいっても理解が深まるという点はそのままですが,第2版というよりも別の本かと思えるほど内容が一新されており,継ぎはぎ感がありません。初版では,PCVは新生血管か血管異常かという議論があったという歴史的な背景から,PCVに多くのページが割かれており,読み物としても興味の尽きない内容で,第2版が出版されたことの,最も惜しむべき点は初版が手に入らなくなったことかもしれません。

 第2版の特徴を列挙しますと,今後欧米ほどでないが日本でも多くなることが予想される萎縮型加齢黄斑変性に多くの記載が割かれていること,症例検討が豊富に用意されていること,これまでに行われてきた抗VEGF薬治療の大規模臨床試験に多くの記載があり,よく理解できることが挙げられます。

 しかし何と言っても最大の特徴は,ややもすればわかりにくい加齢黄斑変性の概念が容易に理解できることです。「検査と診察」の項では,眼科医の基本姿勢と眼底疾患全般の診察の仕方がしっかりと書かれている点は変わりなく,日頃の忙しい診療に流されがちな自分自身を反省させられるとともに,若い眼科医にも通読して基本として身につけてもらいたい部分です。

 本書は,混乱した,理解しにくい加齢黄斑変性の分類の歴史,概念が,吉村先生の頭脳というフィルターを通して整理されて頭に入ってくるという点が特筆すべきところです。「序」にもありますようにOCT angiographyについてはまだ使用が始まったばかりであり本書では扱いがありませんが,本書を読めば,吉村先生の編集によるOCT angiographyについての本も早く読みたいと切望する気になるはずです。

A4・頁352 定価:本体18,000円+税 医学書院
ISBN978-4-260-02448-8


術者MITSUDOの押さないPCI

光藤 和明 著
倉敷中央病院循環器内科 執筆協力

《評 者》山下 武廣(心臓血管センター北海道大野病院副院長)

PCIが存続する限り名著であり続ける

 本書は,2015年10月に急逝された光藤和明医師が書きためた原稿を,倉敷中央病院循環器内科スタッフが加筆・整頓して書籍化したPCIの大書である。光藤医師が「PCIのFinal frontier」としたCTO(Chronic Total Occlusion),分岐部ステント術を中心に据え,加えて右冠動脈入口部,左主幹部へのステント術,さらには光藤医師がPCIの本質とした「押さないPCI」を,あえて「押してよい」場面を例示しながら詳述している。

 直面し得る陥穽を前もって予測し,リスクを可及的回避しながらいかに確実に手技を完遂するか,通常の技術書ではちりばめられる「パール」が,本書では惜しげもなくオンパレードで教示されている。一語一句全てが,膨大な経験と深い洞察に基づいたパールと感じられ,ベテランインターベンショニストであっても1ページ読み進む間に何度もハッとさせられるのではないだろうか。さらにPCIのテクニック論にとどまらず,PCIを用いて医療を行うプロフェッショナルとしての人生哲学が随所に染み出ており,これぞ光藤流PCIの神髄と感じられる。

 これからを担う若き医師たちに,めざすべきインターベンショニスト像を見いだし,見据える機会を与える必読の書であろう。中堅以上のインターベンショニストは,本書の内容をどこまで正確に理解し自身で実行し得るか,キャリア史上最大の到達目標を得るかもしれない。

 通読後は,本書がPCIという治療法が存続する限り永遠の名著となることを確信させる。

B5・頁264 定価:本体8,000円+税 医学書院
ISBN978-4-260-02527-0


DSM-5®ガイドブック
診断基準を使いこなすための指針

Black DW,Grant JE 原著
髙橋 三郎 監訳
下田 和孝,大曽根 彰 訳

《評 者》須田 史朗(自治医大教授・精神医学)

臨床現場での使用に即したDSM-5解説書の決定版

 本書はBlack DWとGrant JEによる“DSM-5 Guidebook”の全訳であり,数あるDSM-5解説書の中でもAmerican Psychiatric Association(APA)が出版した本家本元の“公式ガイドブック”である。

 1990年代以降,科学は目覚ましい発展を遂げ,さまざまな技術革新が多くの生命現象を可視化することに成功した。精神医学もその恩恵を受け,分子生物学や神経画像,疫学研究によるデータの蓄積が新たな知見と洞察を生み,なおも発展を続けている。ことに臨床研究においては,DSMによる疾病分類が果たしてきた役割は計り知れない。

 2013年5月,APAはおよそ...

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