加齢黄斑変性 第2版

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加齢黄斑変性の基礎から臨床までを網羅した好評書籍の改訂第2版。初版発行以降、基礎研究の著しい進展、OCTをはじめとした画像検査の急速な進歩、新規抗VEGF薬の臨床導入などにより、加齢黄斑変性の病態理解や診療に生じた大きな変化を余すところなく収載。重要な臨床試験の詳細解説や症例検討なども拡充し、全面改訂の圧巻の情報量。「日本人の加齢黄斑変性」の本質に迫る、待望の成書。
編集 𠮷村 長久
発行 2016年03月判型:A4頁:352
ISBN 978-4-260-02448-8
定価 19,800円 (本体18,000円+税)

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第2版の序

 初版から7年半を経過して,ようやく『加齢黄斑変性』の第2版をお届けできました.初版の『加齢黄斑変性』の企画段階,そして出版当初は,さほど疾患頻度の高くない単一疾患を対象に一冊の本が成立するのか,そもそもそのような本が世に受け入れられるのかという心配の声もありましたが,おかげさまで予想を上回る多くの読者を得ることができました.
 第2版を出版する計画は,今から4年以上前に遡ります.しかし,諸般の事情で改訂作業がはかどらず,延び延びになってしまいました.改訂作業当初は,画像を新しいものに変更して,治療の項目を大幅に改訂すればよいと考えていましたが,この間に加齢黄斑変性の病態理解,診断,治療のいずれの領域でも非常に大きな進展があり,初版の内容はほとんど残らなくなってしまいました.また,当初は分担執筆にして,全体の整合性を私が調整するつもりでしたが,結局,およそ半分を私が執筆することになってしまいました.
 今回の改訂では初版で強調しすぎたきらいのあるポリープ状脈絡膜血管症の扱いをやや小さくしました.一方,初版では十分な記載ができなかったドルーゼンや萎縮型加齢黄斑変性を比較的詳しく書きました.最近,注目を集めているpachychoroid neovasculopathyについてもやや詳しい説明を加えました.しかし,ごく最近臨床応用が始まったOCT angiographyについては,記載をすることができませんでした.今後,加齢黄斑変性の診療にOCT angiographyが重要な役割を果たすことは間違いありませんが,まだ評価が定まったとはいえません.これについては,別の形で整理をできればと考えています.
 加齢黄斑変性の診断と治療を十分に理解するには,これまでの研究の歴史をよく理解する必要があります.過去に行われた大規模臨床試験の理解は,加齢黄斑変性研究の過程を理解するのに重要です.第2版では,大規模臨床試験の章を設けてMacular Photocoagulation StudyからMARINA試験,ANCHOR試験,CATT試験など代表的な大規模臨床試験の解説を加えました.私たちが日日行っている抗VEGF薬治療がどのような歴史的背景のもとに成立しているのかを理解する一助になれば幸いです.
 改訂作業開始当初には,これほどの時間がかかるとは考えてもみませんでした.そして,改訂途中で私が京都大学を退職することが決まり,図らずも本書が私の退職記念出版のようになってしまいました.信州大学,京都大学と20年にわたり加齢黄斑変性の研究を続けてきた集大成とよべるものになったかどうか,読者諸賢のご批判をいただければ幸いです.
 最後に第2版の出版を可能にしていただいた京都大学眼科黄斑外来の皆さま,とりわけ,辻川明孝(現 香川大学),山城健児(現 大津赤十字病院),大音壮太郎,大石明生の諸先生方,そして,実際の改訂作業を全面的に手伝ってくれた大学院生の高橋綾子先生に深謝致します.
 また,改訂作業を粘り強く待っていただいた医学書院の方々にお礼を申し上げます.

 2016年2月 京都にて
 吉村長久

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第2版の序
初版の序
略語一覧

第1章 基礎知識
  I 黄斑部
    A 組織学的定義と臨床的定義
    B 黄斑部の定量的解析
    C AREDSのAMD grading system
    D 黄斑部三次元解析の臨床応用
    E 正常OCT画像の各網膜層の呼称
  II 加齢黄斑変性の基本用語
  III 加齢黄斑変性の疾患概念と分類
    A 滲出型加齢黄斑変性と萎縮型加齢黄斑変性
    B 日本と欧米の疾患概念の違い
  IV 加齢黄斑変性に特徴的な病変
    A ドルーゼン
    B RPE色素異常
    C PEDとRPE tear
    D 脈絡膜新生血管(CNV)
    E 瘢痕病巣
    F その他の特徴的な病巣
    G 脈絡膜血管透過性亢進(CVH)
  V 加齢黄斑変性と遺伝子
    A AMDと遺伝
    B AMDの感受性遺伝子
    C AMDサブタイプと遺伝子多型
    D ドルーゼンと色素異常にかかわる遺伝子多型
    E AMDの臨床的特徴にかかわる遺伝子多型
    F 治療効果と遺伝子多型
  VI 脈絡膜新生血管の定義と発症機序
    A 血管新生
    B 血管新生の分類
    C Angiogenesis(血管新生)の分子メカニズム
    D CNVの定義
    E CNVの発症機序
    【Topics】リポフスチンの意義とA2E
  VII 加齢黄斑変性の疫学
    A AMDの有病率

第2章 検査と診察
  I 眼底所見のとり方と検査の進め方
    A 診察手順
    B 検査
    C 詳細な診察
  II 蛍光眼底造影検査
    A カラー眼底撮影の重要性
    B 蛍光眼底造影検査の要点
    C きれいな画像をとるTips
  III OCT検査
    A 黄斑疾患のスキャンプロトコール
  IV 眼底自発蛍光検査
    A 原理
    B 臨床的意義
    C 撮影
    D 結果の解釈
    E 対象疾患
  V 微小視野検査
    A 装置
    B MP-3検査の実際
  VI 視力検査
    A 小数視力
    B Log MAR
    C ETDRS視力表
  VII 遺伝子検査
    A 遺伝子検査を行う前に
    B 遺伝子採血
    C 遺伝カウンセリング

第3章 加齢黄斑変性のサブタイプ
  I 滲出型加齢黄斑変性
    A 典型加齢黄斑変性(典型AMD)
    B ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)
    C 網膜内血管腫状増殖(RAP)
  II 萎縮型加齢黄斑変性
    【Topics】一部のGAとABCA4 遺伝子変異
    【Topics】Outer retinal corrugations
  III Pachychoroid neovasculopathy

第4章 鑑別を要する疾患
  I 特発性脈絡膜新生血管
  II 近視性脈絡膜新生血管
  III 中心性漿液性脈絡網膜症
  IV 網膜色素線条
  V 特発性傍中心窩毛細血管拡張症
    A MacTel Type 1
    B MacTel Type 2
  VI 網膜静脈分枝閉塞症
  VII 網膜細動脈瘤
  VIII 点状脈絡膜内層症
  IX 成人発症卵黄状黄斑ジストロフィ

第5章 臨床試験
  I Macular Photocoagulation Study(MPS)
    A Extrafoveal CNVに対するアルゴンレーザー光凝固術
    B Juxtafoveal CNVに対するクリプトンレーザー光凝固術
    C Subfoveal CNVに対するレーザー光凝固術
  II 光線力学療法導入臨床試験
    A TAP試験
    B VIP試験
    C TAP試験とVIP試験の解析研究
    D VIM試験
    E VIO試験
    F JAT試験
    G PDTガイドライン
  III ペガプタニブ導入臨床試験(VISION試験)
  IV ラニビズマブ導入試験と現在までの経過
    A 有効性を確立した研究
    B 維持期の硝子体注射回数の減少の可能性を検討した研究
    C 新しい治療方法treat and extend
    D 実臨床でのラニビズマブ治療の長期成績
  V ラニビズマブとベバシズマブの比較検討試験
    A CATT試験
    B IVAN試験
  VI アフリベルセプト導入試験
  VII サプリメントの有効性(AREDSとAREDS 2)
    A AREDSとAREDS 2の意義
    B AREDSの目的
    C AREDS 2
    D どのような患者がサプリメントを摂取するのがよいのか
  VIII ラニビズマブとベルテポルフィンPDTの併用治療に関する臨床試験
  IX 網膜色素上皮剥離の治療
    A レーザー光凝固術
    B 光線力学療法(PDT)
    C 抗VEGF薬治療
    D 併用療法

第6章 治療の実際
  I 光凝固術
    A Subfoveal CNVに対する光凝固術
    B PCVに対する光凝固術
  II 光線力学療法
    A 作用機序
    B PDTの実際
    C 合併症
    D Reduced-fluence PDT
  III 抗VEGF薬
    A VEGFとは
    B 抗VEGF薬(各論)
    C 抗VEGF薬の選択と投与スケジュール
    D 投与方法の実際
  IV 併用療法
    A トリアムシノロンアセトニド併用PDT
    B 抗VEGF薬/PDT併用療法
  V 抗VEGF薬治療の適応と効果予測
    A MARINA試験とANCHOR試験
    B CATT試験
    C 臨床研究
    D OCT所見と抗VEGF薬治療効果
  VI ロービジョンケア
    A AMDのロービジョンケア
    B ロービジョン検査判断料
  VII 医療経済的側面
    A 費用効果分析とは
    B 費用効果分析の手法について
    C AMDの医療技術評価にかかわる4つの主論点
    D AMD治療における費用効果

第7章 症例検討
    PCV 治療抵抗症例
    PCV 自然経過症例
    PCV 抗VEGF薬硝子体注射著効例
    PCV 50回以上硝子体注射を投与し,良好な視力を維持している症例
    PCV 硝子体手術を施行した3症例
    PCV ラニビズマブからアフリベルセプトに切り替えてポリープが消失した症例
    両眼PCV 10年間の経過
    AMD 治療抵抗例
    ドルーゼンからAMDを発症し,治療後RPE tearを起こした症例
    AMDかCSCか迷う症例
    修飾されたCSC
    CSC レーザー治療後にGAとCNVを発症した症例
    RAP 硝子体注射単独治療を行い,視力を維持した症例と低下した症例
    serous PED 変化のない症例と消失した症例
    Drusenoid PEDがGAになった症例
    ドルーゼンが消退した症例
    Reticular pseudodrusenが増加した症例,AO-SLO所見
    Reticular pseudodrusenで脈絡膜の薄い症例
    萎縮型AMD

索引

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内容が一新された待望の第2版
書評者: 北岡 隆 (長崎大大学院教授・眼科・視覚科学)
 待望の『加齢黄斑変性』の第2版が出版されました。

 加齢黄斑変性という疾患は「狭義加齢黄斑変性」と「広義加齢黄斑変性」という用語がある一方で,ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)の病気の本態は新生血管か,異常血管かといった議論があり,ある意味体系立てて理解しにくいという問題がありました。そんな中『加齢黄斑変性』初版では,PCVに多くのページが割かれ,通読しても面白く,一部を読んでいくだけでも加齢黄斑変性の理解が深まりました。

 しかしその後,新生血管の研究が進み,抗VEGF抗体治療も新しい局面を迎え,pachychoroidなどの概念が出てきて,加齢黄斑変性の概念も変わりつつあります。また初版では時代的背景もあり使用されたOCT画像がtime-domainのものも多く,解像度の点で粗い画像が多かったという問題がありました。

 第2版では画像が圧倒的にきれいになっており,さらに加齢黄斑変性の概念図が大きく変わっています。分担執筆が多い昨今にあり,編集の吉村長久先生の考えで貫かれた一貫性のある内容で,通読しても面白く,一部を読んでいっても理解が深まるという点はそのままですが,第2版というよりも別の本かと思えるほど内容が一新しており,継ぎはぎ感がありません。初版では,PCVは新生血管か血管異常かという議論があったという歴史的な背景があり,PCVに多くのページが割かれており,読み物としても興味の尽きない内容で,第2版が出版されたことの,最も惜しむべき点は初版が手に入らなくなったことかもしれません。

 第2版の特徴を列挙しますと,今後欧米ほどでないが日本でも多くなることが予想される萎縮型加齢黄斑変性に多くの記載が割かれていること,症例検討が豊富に用意されていること,これまでに行われてきた抗VEGF治療の大規模臨床試験に多くの記載があり,よく理解できることが挙げられます。しかし何と言っても最大の特徴は,ややもすればわかりにくい加齢黄斑変性の概念が容易に理解できることです。診察検査の項では,眼科医の基本姿勢と眼底疾患全般の診察の仕方がしっかりと書かれている点は変わりなく,日頃の忙しい診療に流されがちな自分自身を反省させられるとともに,若い眼科医にも通読して基本として身につけてもらいたい部分です。

 本書は,混乱した,理解しにくい加齢黄斑変性の分類の歴史,概念が,吉村先生の頭脳というフィルターを通して整理されて頭に入ってくるという点が特筆すべきところです。「序」にもありますようにOCT angiographyについてはまだ使用が始まったばかりであり本書では扱いがありませんが,本書を読めば,吉村先生の編集によるOCT angiographyについての本も早く読みたいと切望する気になるはずです。

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