助産の現場に必要な生命倫理の考え方とは(仁志田博司,桑原勲)
インタビュー
2016.05.30
【interview】助産の現場に必要な生命倫理の考え方とは
仁志田 博司氏に聞く | ||||
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昨年10月,『出生と死をめぐる生命倫理――連続と不連続の思想』(医学書院)が発刊された。著者は,日本の周産期医療における生命倫理の基礎を築いた新生児科医師・仁志田博司氏である。
『助産雑誌』では,その仁志田氏に,助産の現場に存在する倫理の問題についてどのように考えるかを,小児科医師であり,助産院開設者でもある桑原勲氏がインタビューする企画を実施。本紙では,その模様をダイジェストでお伝えする[インタビュー全文は『助産雑誌』誌(70巻6号)に記載]。
桑原 僕は京都府精華町で小児科クリニックを開業しています。お産にもかかわりたいと思い,同時に助産院を併設しました。仁志田先生には,新生児科の勤務医時代からお世話になっています。
早速ですが,昨年上梓された『出生と死をめぐる生命倫理――連続と不連続の思想』(以下,本書)の内容についてお聞きしたいと思います。(中略)
21週と22週の間にあるもの
桑原 本書では,9つの事例を用いて倫理がわかりやすく解説されています。例えば,第5章にある美鈴ちゃんの事例を挙げてみましょう。これは,成育限界がテーマですが,それを定めることの意味について述べていただけたらと思います。まず,成育限界が22週に定まった理由というのは?
仁志田 成育限界に関連する法律は,以前は悪名高き「優生保護法」で,現在は「母体保護法」です。例えばレイプされた場合などに行う人工妊娠中絶は,第2条第2項に「胎児が,母体外において,生命を保続することのできない時期に,人工的に,胎児及びその附属物を母体外に排出することをいう」と書いてある。そこには人工妊娠中絶ができる期限は何週とは書いていない。厚生事務次官通知によって,この期限は1953年は妊娠8か月未満, 1976年には24週未満と定められました。やがて1990年に22週未満になりましたが,これは3年間にわたって全国のデータを日本小児科学会の新生児委員会で集めて分析した成果です。
桑原 この美鈴ちゃんは,22週3日で出生したのですが,22週はちょうど成育限界のところですよね。例えばご両親と医療者が話し合った結果として,「治療をしない」という結論はありうる話なのですか。
仁志田 ええ。それはとても大切なポイントで,22週だからといって何がなんでも治療をする
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