血圧(志水太郎)
連載
2016.02.22
おだん子×エリザベスの
急変フィジカル
患者さんの身体から発せられるサインを読み取れれば,日々の看護も充実していくはず……。本連載では,2年目看護師の「おだん子ちゃん」,熟練看護師の「エリザベス先輩」と共に,“急変を防ぐ”“急変にも動じない”フィジカルアセスメントを学びます。
■第2夜 血圧
志水 太郎(東京城東病院総合内科)
(前回からつづく)
J病院7階の混合病棟,時刻は夜10時――。今日の夜勤も,2年目ナースのおだん子ちゃんです。
ラウンドを開始して間もなく,ある患者が胸を押さえて苦しんでいるところに遭遇しました。患者は石井さん(仮名)。72歳女性で,高血圧と糖尿病の既往がある方です。外来で血圧が高いことを指摘されると,「ここ2-3日,たまにドキドキすることがあった」と語り,精査のために入院したのが今日のこと。夕食のときは特に問題なさそうだったのに,今,なぜ……!
(患者) 「(胸を押さえて)……い,痛い」
(おだん子) 「ど,どうしました!? (……すごい冷や汗。顔色も悪いし……)」
前回(第1夜/第3159号参照)のように,まずは病歴をカルテで確認しましょう。①高血圧と糖尿病の既往を持つ72歳の女性が,②動悸を主訴に血圧のコントロール目的で入院。③入院したばかりなので普段の状態は明確ではありませんが,「夕食までは問題がなかったけれど,現段階では苦しがっている」という点から,患者さんの身に何か急な異常が起こっているのだと判断できます。
痛みで胸を押さえているという点から,「胸痛」の問題であるととらえることができそうです。さらに,「高血圧」「糖尿病」の既往があると聞くと,「大血管系の危険な病気のリスクがあるのかも」となんとなく想像できるのではないでしょうか。血圧のコントロールが良くないわけですから,「血管系のトラブルがいつ起こってもおかしくない」と想定し,危険な血管の異常が潜んでいる可能性が高いのでは?,と疑いたいところ。ここで,胸痛を引き起こす危険な疾患の代表的なものを再確認しておきましょう。
急変ポイント❷
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「危険」というのは,見逃すと人命にかかわるような,という意味です。英語では「6-killer chest pain」などと呼ばれ,急性期に特に警戒すべきものとされています。これらでなければひと安心なのですが,胸痛を訴える患者を発見した際には,「これらの病気らしいかどうか」を念頭に置いてアセスメントを進める必要があります。6つの疾患も,臓器別に3⇒2⇒1となっていて覚えやすいでしょう?
★
さて,今回の胸痛を訴えている患者さん,まさか6つの疾患に当てはまる症状なのでしょうか。
(おだん子) 「ど,どうしよう(オロオロ)」
(エリザベス) 「アナタ。この方,血圧のことでご入院なさったの? それで血圧は高くって? 低くって?」
(おだん子) 「先輩(いつの間に背後に!?)! た,確かに確認の必要ありですね。今,自動血圧計を持ってきます!」
(エリザベス) 「ヤぁねぇ。血圧が高いのか低いのかだけなら,触ればわかるでしょう」
(おだん子) 「へっ?」
エリザベス先輩は患者さんを見るやいなや,「血圧」について確認しようとしています。患者さんが高血圧の既往があることに注目し,そして心臓や血管系にリスクがあることを考え,血圧の状態を聞いているのでしょう。
(エリザベス) 「そもそもアナタ。状態が悪そうな患者さんを見たら,まずは末梢を触るのが鉄則じゃない。……あら,これはイヤな感じがするわね」
(おだん子) 「冷や汗もかいているんです。やっぱり血圧計を持ってきま……」
(エリザベス) 「コトは急ぐわ。これをご覧あそばせ!」
エリザベス先輩のキラキラフィジカル❷
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写真 ダブルハンド法 |
①まず右手で患者の右手首を包むように添え,第2,3指で橈骨動脈に触れる。もし脈が強い拍動なら脈圧(収縮期と拡張期の血圧の差)は40 mmHg以上と判断(写真①)。
②次に左第2,3指で患者の右上腕動脈を触れる(写真②)。
③左第2,3指で右上腕動脈を圧迫し,右第2,3指で橈骨動脈の減弱を確認する。もし弱い圧迫で橈骨動脈が触れなくなったら収縮期は120 mmHg以下,強い圧迫でも橈骨動脈が触れたら収縮期は160 mmHg以上。
④推定した収縮期血圧から推定した脈圧を引き算すれば,拡張期血圧も推定できる。
⑤必要があれば両腕で行い,左右差を確認...
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