評価について その1 スペシャリストによるジェネラリスト評価の辛辣さ(岩田健太郎)
連載
2016.02.15
The Genecialist Manifesto
ジェネシャリスト宣言
「ジェネラリストか,スペシャリストか」。二元論を乗り越え,“ジェネシャリスト”という新概念を提唱する。
【第32回】
評価について:その1 スペシャリストによるジェネラリスト評価の辛辣さ
岩田 健太郎(神戸大学大学院教授・感染症治療学/神戸大学医学部附属病院感染症内科)
(前回からつづく)
日本ではジェネラリストに対するスペシャリストの評価は,総じてからい。厳密に調査したわけではないけれど,そのように感じている。
日本では,ジェネラリストは「紹介される医者」以外の何者でもない。ジェネラリストには手に負えない問題が生じて,スペシャリストに相談されるのだ。その相談の大部分はスペシャリストにとって「朝飯前」の問題だ。「なんだ,こんなことも知らないのか」。その相談のいくつかはスペシャリストにとって「見当違い」の問題だ。「これ,診断が間違ってるじゃない」。その相談のある程度はスペシャリストにとって「ミスマネジメント」の問題だ。「もう,どうして感染性心内膜炎にフロモックス®とか出しちゃうの?」。その相談の一部はスペシャリストにとって「オレには関係ない問題」だ。「それって『うちの科』の病気じゃないし」。
特に,ミスマネジメントの問題は深刻だ。スペシャリストが怒りたくなる(こともある)気持ちは,ぼくにもよくわかる。心内膜炎を「なんだかよくわからない熱」として放っておかれて,それどころか中途半端に消化管からの吸収が悪い経口抗菌薬で生煮えに治療して(よって診断はより困難になり),挙句の果てに疣贅(ゆうぜい)の塞栓によって多発性脳塞栓で寝たきりになってから搬送される……。患者のプライバシーに配慮して少し話は変えているが,こういった話は現実にあり,とても残念なことにそう珍しい話ではない。もっと前に相談してくれていたら,この患者は治療で元気に完治していたのに……。
*
医者のほとんどは患者に対して献身的,かつ良心的だ。(ごく少数派の,特に昔のジェネラリストは勘違いしているが,)スペシャリストだってそれは例外でなく,ほぼ全員が患者に対して献身的で,良心的だ。ただ,患者に対してその献身や良心を上手に表出できていないケースが多いだけで。
明らかに患者に不当な診療が行われ,患者が苦しむ結果となった場合,医者の心には怒りの気持ちが湧き上がる。「ま,そういうことってよくあるんだよね。俺の家族じゃなくてよかった。くわばらくわばら」と,皮肉な笑顔で肩をすくめるようなスペシャリストでは,もちろん困る。怒るべきときに怒りを覚えるのが本当のプロだ。
もちろん,こういうミスマネジメントはジェネラリストだけに起きる現象ではない。スペシャリストとスペシャリストの間にだって残念な事例は起きる。しかし,その場合は「お互いさま」なのであり,ラテラリティは存在しない。自分だって同じようなヘマを他科の医者にし,怒りの原因になっている可能性は十分にある。そういう思いがあるから,他科のスペシャリストに対しては,ジェネラリストに対するようなそれより,総じて評価は辛辣になりにくい。
*
日本でも近年は大病院主義を回避するため,スペシャリストがジェネラリストに逆紹介する事例はある。しかしそれは(あくまで自分目線だが)患者の深刻な問題が回避され,「俺じゃなくても大丈夫」な状態にまで問題の深刻さが小さくなった場合である。よってジェネラリストのエクスパティーズに頼るというよりは,「うちの外来,もう一杯だから,いい加減そっちで見てよ。だいたい安定しているから」なのである。こうしてスペシャリストはどんどん「上から目線」になっていく。
ひどい場合には「オレ様に患者を紹介するときは最低限,これやらあれやらの検査くらいはやっとけよ」と横柄に注文するよう...
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