医学界新聞

2014.07.07

Medical Library 書評・新刊案内


エコーでコラボ
主治医と検査者の相互理解を深める心エコー奥義

三神 大世 監修
湯田 聡,山田 聡,赤坂 和美 編

《評 者》竹中 克(日大板橋病院客員教授・循環器内科/東大病院検査部客員研究員)

依頼理由別の心エコーと所見別の対応がわかる初学者向け教科書

 執筆陣全員が北海道民の心エコーの教科書が誕生しました。さて,「北海道民だけで執筆した教科書」にどんな意味があるのでしょうか? 執筆陣の中心となる,わが友山田聡先生は信州出身ですが,監修の三神先生は「かつて日本の各地から移住した人々が築いてきたコラボレーションの伝統」「北の豊穣な大地」とその意義を説明されています。私自身は,本書は北海道民の「気概」を示すものと理解して,それではその内容は全国区で通用するものか否かを拝読吟味させていただきました。

 心エコー初学者対象の292ページの教科書です。最初に総論として心エコーの基本がコンパクトにまとめられています。初学者対象でありながら,経食道心エコー法まで解説されており,また「心機能と血行動態評価の基本的な考え方」は短いながらも読み応えのある力作です。次に各論「心エコーの活かしかた」が配置されていますが,この部分が本書の特徴となります。従来の教科書は,疾患別に組まれているものがほとんどですが,日常臨床で患者さんが疾患別に心エコー検査室に来られることはありません(経過観察などを除く)。初診患者さんが心エコー室に来られる際の情報は「主治医からの依頼理由と臨床所見」です。私自身も「依頼理由別の心エコー」を単行本で著したり,雑誌の企画で取り上げたりしてきましたが,本書は最新の「依頼理由別の心エコー」教科書であります。さらに,心エコー室で依頼内容とは無関係の重要所見が偶然得られることもあります。これ,すなわち「得られた心エコー所見別の対応」にも十分なページが割かれています。前者が,主治医から検査者への投げ掛けで,後者が検査者から主治医への投げ掛けとなり,この二つが本書のタイトル「エコーでコラボ」「主治医と検査者の相互理解」の内容そのものであります。それでは,「心エコーの奥義」とは何でしょうか? 「人生とは死ぬことと見つけたり」のような至言・箴言がどこかに隠されているのかと思い読み進みましたが,各論14から32に盛り込まれた症例提示を通じた「主治医と検査者のやりとり(コラボ)」の数々が本書にちりばめられた奥義であることを納得しました。例えば「残留多重反射」「悪性リンパ腫」「左脚ブロック」のような内容が漏れて(省かれて)はいますが,それは単行本としての紙数制限のために致し方ないことと思います。「主治医と検査者のやりとり」という目で各論を読み進むと,特に初学者にとって心エコーの醍醐味・楽しさが味わえる素晴らしい読み物であることがわかります。各項における緊張感はやはり「道民の気概」を示していると言わざるを得ず,道民以外の日本人にも推薦したい心エコー法の教科書であります。

B5・頁292 定価:本体5,000円+税 医学書院
ISBN978-4-260-01742-8


心電図セルフアセスメント
229題で学ぶ判読へのアプローチ

Zainul Abedin,Robert Conner 原著
新 博次 監訳
村松 光 訳

《評 者》萩原 誠久(東女医大主任教授・循環器内科学/副院長)

心電図に対する苦手意識が払拭できる入門書

 いまだに心電図の読み方が苦手な先生方は多くおられると思う。1924年にノーベル生理学・医学賞を受賞したオランダの生理学者Einthovenが,心臓から微小な電気現象を記録する心電図法を1903年に開発してから約110年が経過している。心電図は心臓を構成する心筋細胞が発生する活動電位の総和であり,さらに活動電位は心筋細胞膜に存在するさまざまなイオンチャネルにより成り立っている。心電図は数多くある循環器系検査の中で最も標準的な検査であり,その判読結果によって,病態から治療方針の決定など,患者さんの生命予後にも関わる重要な検査手段となっている。

 これまで,心電図に関連する多くの参考書は出版されているが,『心電図セルフアセスメント――229題で学ぶ判読へのアプローチ』は学生から研修医,技師,看護師など,全ての医療従事者のための心電学の入門書である。心電図の基礎知識から異常波形の機序までがすんなりと理解できるので,読み終えた後には心電図に対する苦手意識が払拭される。さらに,本書の特徴はおのおのの項目ごとに20-30題のセルフアセスメント用の心電図に関する設問が準備されていることである。初めから読み続けて,セルフアセスメントを繰り返し行うことで心電図判読のコツがつかめると思う。

 本書は古くからの心電現象のみならず,最近明らかになったイオンチャネル病など最新知識にも対応したテキストであり,多くの方が心電図をマスターするために必携の一冊となることを確信する。

B5・頁240 定価:本体4,000円+税 医学書院
ISBN978-4-260-01917-0


見逃してはならない血液疾患
病理からみた44症例

北川 昌伸,定平 吉都,伊藤 雅文 編

《評 者》吉野 正(岡山大副学長)

重要・高頻度の疾患を中心に診断過程を疑似体験できる書

 血液疾患は種々の病態が鑑別にあがり,また分子病理学的にも多様で,全体像を深く知ることは容易ではない。WHO分類も版を重ねるほどに疾患概念が増加し,専門家といえども全ての領域を通暁することは困難なほどである。しかし,疾患病理発生上の分子基盤における知見は非常な勢いで増加し,その成果ともいうべき分子標的薬の開発は目覚ましい勢いで進んでいる。そのような現況により,血液疾患はかなりの深度で疾患概念を整理することが求められている。このたび上梓された『見逃してはならない血液疾患 病理からみた44症例』はわが国の骨髄病理をリードしている編集者の下で企画された,画期的な著書である。

 具体的な疾患について,その病歴,検査データ,形態像から診断に至る過程を懇切丁寧に示している。同様の観点と意図により編纂された病理関係の著書は皆無ではないが,焦点を血液疾患に絞り,治療と予後,また,鑑別診断と類縁疾患について詳述したものは,評者の知る限りほかにはない。ある疾患については病態生理や染色体あるいは責任遺伝子異常,また分子標的薬についての作用機序などバラエティーに富んだ記述と豊富な図表が駆使されていて,ざっと眺めているだけでも得るところがあるほどである。教科書を編纂するときある種のルールを設けることにより整然とした書物となるが,本書はそれをあまり強制していない。血液疾患の多様性を思うとき,それは仕方のないことでもあり,そのようにしなかった編集者の思いが伝わってくるようである。

 主訴が各項目の「題目」となっていて,それから患者さんの病歴,検査等々に進んでいく様式は,慣れていない読者にとって最初はなじみにくい部分があるかもしれない。しかし,実際臨床的あるいは病理的診断に至る過程はこのような様式の繰り返しである。したがって,最初のページから丹念に内容を追いかけるのが最良の方法ではないかもしれない。そのような道標として,本書では各疾患の頻度と難易度が明示されていることも特長の一つである。すなわち,頻度が高い疾患は遭遇する機会の多いものであり,難易度が高くないものから挑んでいくことによって血液疾患の全体像を俯瞰することができるのではないかと思われる。

 最初に記したように血液疾患のスタンダードはWHO分類になっているが,収載されている疾患はとてつもない数に増加している。頻度がいかに低くとも臨床,病理学的特徴が明らかなものは疾患単位となり得るからである。しかし,実臨床を行う上からも,病理診断をなす上からもそれと同等の知識が常には要求されないのは自明の理である。極めて重要かつ頻度の高い疾患を中心に据えて,その診断過程を疑似体験するという段階,最終的な結論を得るまでには鑑別診断が必須のものとなり,それを契機に周辺疾患への目配りをするという本書のねらいは,巧妙でかつ成功している。一つだけ加えるとするならば,本書の対象は若手病理医,研修医とされているが,臨床実習のグローバル化に向けて急速に変貌している現況では,医学生にとっても非常に重要な本となることを強く信ずるところである。

B5・頁288 定価:本体6,500円+税 医学書院
ISBN978-4-260-01674-2


抗菌薬マスター戦略 第2版
非問題解決型アプローチ

岩田 健太郎 監訳

《評 者》松永 直久(帝京大病院感染制御部部長)

医学生から指導医レベルまで勉強になる抗菌薬テキスト

 「参ったなあ」。

 医学生を対象に書かれた本であるのに,感染症専門医を標榜している自分がとても勉強になり,思わずつぶやいた感想である。他にも,薬剤師,研修医,フェロー,診療医も対象とあるが,指導医レベルの先生も含め,抗菌薬と感染症に興味がある方なら,一度手に取ってみることをお薦めしたい。

 「どこに」「何が」感染を起こしているかを意識するのが,感染症診療の基本である。培養を取り,エンピリック(経験的)治療から原因限定治療へと切りかえるといった「当たり前」のことを前提に構成されている。

 PART Iは細菌の基本,PART IIは抗菌薬,PART IIIは原因限定治療(細菌別の検討),PART IVは一般的な感染症のエンピリック(経験的)治療,PART Vは症例問題と解答,PART VIは復習問題という構成である。各PARTはさらに4~9章に分かれ,章末にはまとめの問題がある。微生物学,薬理学といった基礎医学的な説明を初めから順序立てて読んでいく方法もあれば,PART Vの症例問題から読む人もいるだろう。PART VIの復習問題にある短文の選択肢問題から入る方法も一つの手だ。各章についてみると,章末のまとめ問題を最初に解いて,まずポイントを押さえてから本文に入るのもお薦めである。PART IIでは,章末問題直前にある各抗菌薬の簡単なまとめも秀逸である。

 嫌気性菌は混合感染を起こす傾向があり,培養も難しいこと,同系統の抗菌薬であっても抗緑膿菌作用についての位置付けが異なることといった現場で必要なtipsもちりばめられている。

 私のように基礎医学に真面目に取り組まず,臨床で揉まれる中で感染症の理解を深めていった方は,逆に基礎医学的な記述に吸い込まれるかもしれない。「すべての緑膿菌の外膜のポーリン(孔)は,アンピシリンがペリプラズム腔を通ることを許さないので,すべての緑膿菌は,この抗菌薬に対して耐性なのである」という説明を見て,なるほどと思い,外膜と耐性についての文献を読みあさる羽目になった。すると,アンピシリンとピペラシリンの外膜の透過性は変わらないという論文にも出合い,迷路にはまってしまい,実はいまだに出られていない……。それもまた楽しい。

 章末に挙げられている参考文献には,古典的な文献も数多く含まれており,これらをひもといて自身の知識に深みを増すことができるのも楽しい。

 個人的に最も気に入ったのは,ヒストリーの項である。原虫薬であったメトロニダゾールを膣トリコモナスによる膣炎の治療に用いたところ,その患者の歯肉炎(嫌気性菌により起こる)が劇的に改善するところから,メトロニダゾールの嫌気性菌に対する抗菌活性について研究が進められた話など,抗菌薬についての興味深い秘話が並んでいる。

 しかし,抗菌薬が感染症診療の全てではない。この本を突破口に抗菌薬に対して抱く漠然とした高い壁を乗り越える方が増えること,そして,診断をつける重要性をあらためて認識し,注意深く経過観察していくことにやりがいを覚えるという想いを共に描く仲間が増えることを願うばかりである。その先に,一人でも多くの患者が感染症の問題を克服していくという明るい未来が広がることを祈りたい。

B5変型・頁394 定価:本体5,000円+税 MEDSi
http://www.medsi.co.jp/