心電図セルフアセスメント
229題で学ぶ判読へのアプローチ

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心電図は自動解析機能に任せきり? 心電図の本や雑誌は巷間あふれるが、“理解のしかた”にまで踏み込んだ本は少ない。本書は、229題のセルフアセスメントにより、心電図を精確に読み、不整脈の発症機序を考えるスキルを身につけられる貴重な1冊。日常診療で避けては通れない心電図が得意になれば、刻々と変化する患者の病態を見逃さず、得られる情報も計りしれない。自動解析を待っていられないすべての現場のかたへ。
原著 Zainul Abedin / Robert Conner
監訳 新 博次
村松 光
発行 2014年03月判型:B5頁:240
ISBN 978-4-260-01917-0
定価 4,400円 (本体4,000円+税)

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監訳者の序訳者の序日本語版への序

監訳者の序
 Zainul Abedin, Robert Conner著 “ECG Interpretation : The Self-Assessment Approach, 2nd ed” が日本語に完訳され出版されることになった。本書は,改訂により最新の循環器病学の進歩にも対応し,最近明らかになったイオンチャネル病にも心電図を中心とした解説を加えるなど実用性の高いものとなっている。さらに,多数のセルフアセスメントを用意することにより読者の判読スキルの向上に役立てる方式を用いるなど,臨床心電図学をコンパクトに学ぶための座右の書として好都合のものに仕上げられている。
 本書は,村松光博士が時間を惜しむことなく一貫したスタイルで翻訳したものであり,その努力は賞賛に値する。そのため文章スタイルが統一されており,通読するに際し不自然さを感じない。
 心電図は,今日の医療現場においても,多くの臨床に直結した重要な情報を与えてくれる。循環器領域では,心電計は血圧計に次いで普遍的であり,より標準的である。非侵襲的で簡便であるが,心電図所見が示す情報は重要かつ明確である。その臨床現場で速やかに提供される情報から得られる恩恵は計り知れないものがある。しかし,まことに残念であるが,最近では循環器を専攻しているにも関わらず若い医師の中には,心電図は記録したが,自ら判読せず自動的に記録されるコンピュータによる診断所見のみで判断する方がいる。そのようなことでは時間とともに刻々と変化する病態を見逃すのみならず,時には患者の生命を危うくする。だからこそぜひ本書を活用し,心電図判読に興味を持っていただきたい。心電図に関わる多くの医療関係者(医師,看護師,検査技師)にとって本書は魅力的な一冊となることを期待したい。心電図の判読力を高め,臨床現場でのスキルアップにつなげていただければ幸いである。

 2014年1月
 日本医科大学多摩永山病院院長
 新 博次


訳者の序
 心電図学の進歩は近年著しいものがある。心臓電気生理検査に代表される心内電位図や体表面心臓微小電位の数理学的解析,単一心筋細胞を用いパッチクランプ法を駆使してのイオン電流やイオンチャネルの動態解析,チャネル病の遺伝子解析,電気工学の進歩を融合させての電気解剖学的マッピング法など,電気生理学の基礎から臨床に至るまでその進歩の功績は非常に広範囲に及び,ますます発展していくものと考えられる。その成果に伴い不整脈の精確な診断が可能となり,さまざまな不整脈の発生機序が解明でき,さらには治療にも応用できるようになった。
 一方で体表面から簡便に記録できる標準12誘導心電図(以下,心電図)は,最初に医療現場に導入されて以来100年以上の歴史を有しており,あらゆる診療科で日常診療上欠かすことのできない一般的検査法として汎用・頻用されている。今日の心電計には自動解析機能が当然のごとく標準装備されているため,考えながらじっくりと心電図を読む習慣がともすると敬遠されがちになり,またディバイダーを片手にして心電図を精確に読んで不整脈の発生機序を考えるスキルが軽視されがちになってきているのかもしれない。
 巷間には心電図に関しいろいろな切り口から纏められている数多くの書籍が氾濫し,毎年次々と上梓されている。しかしながら,“心電図の理解の仕方”に関して詳細かつ丁寧に解説した書籍は決して多くはない。しかも実際に心電図を読みながら現象と機序を解説し,包括的に理解を深め知識を発展させていく手法を取り入れた書籍はさらに少ない。
 本書は上記のニードを適えてくれるテキストと考えられる。かつ日常診療で有効に活用できるスキルを養ってくれる優れ物と言える。著者のAbedin氏は,多くの心電図に関する書籍には,心電図でみられる現象と機序に関する説明の仕方で正しくないものがあることを,本書中の随所で的確に指摘している。また,より正確かつわかりやすい考え方に基づき解説を加えている点は賞賛に価し,従来の書籍にはない鋭い表現で論理を進めている。著者の意向が十分に理解できれば一歩踏み込んで心電図を読めるに違いないと確信する。本書には非常に多くの鮮明な心電図の実記録が掲載されているので,臨場感を味わいながらディバイダーを片手に判読しつつ,読み進めていただきたい。最後まで読破した暁には,きっと今までとは異なった視点で日常診療の心電図を読んで理解するスキルが獲得できることを念じて序としたい。
 最後に本原書を日本語翻訳しようという動機を滋養してくれた今までにお世話になった心電学や不整脈学の恩師に深く感謝の意を表したい。また,日々の翻訳作業を地道に支え励ましてくれた家族に対して感謝の気持ちを贈る。本書刊行にあたりご尽力いただいた医学書院の中根冬貴氏,柴崎巌氏に感謝いたします。

 2014年1月 山梨甲府にて
 村松 光


日本語版への序
 “ECG Interpretation:The Self-Assessment Approach” はRobert Conner氏の優れた企画である。高評を得た本書は彼の卓越した努力によるものであり,第2版では,第1版の成功をさらに発展させた。
 本書が採用している書式構成は今日の心電図の参考書に広く使われているものである。内容としては不整脈の機序に関する基礎的かつ臨床的な心電図の解説を大幅に追加し,より実用性を高めた。
 本書の目的は,心電図や電気生理学を学ぶ者に不整脈へのアプローチ法を提供することであり,心電図を解釈し不整脈の機序をさらに理解するために重要な基礎的題材と臨床的題材を深く織り込んでいる。本書の内容がより正確な臨床診断とより適切な治療や管理に結びつくものと期待している。
 村松光博士が独力で本書原文を日本語に翻訳されたことに対し,我々は深く感謝申し上げる。氏は信じられないほど勤勉かつ迅速にこの翻訳を成し遂げられた。

 Zainul Abedin, MD, FRCP(C), FHRS



 標準12誘導心電図(以下,心電図)の精確な理解はすべての医療従事者に必須の基本的スキルである。本書はセルフアセスメントを活用し,心電図の理解方法に関して包括的かつ段階的に表現されており,心電図の基本的な考え方から高度な概念まで発展的に学ぶことができる。本文,セルフアセスメントともに心電図をほぼ原寸大で図示しており,心電図判読の必須アイテムといってもよい実践的ガイドである。
 以下のような特徴がある。
内容を強調して読者に馴染みやすいフォーマットにしたため,実例を判読するのに役立つ。
学習目標を明確に表記したため,心電図解釈における複雑な事項を読者は効果的に学習できる。
多数の心電図記録の実例で重要な概念を標示し,判読スキルを会得するのにとても明瞭な心電図記録である。
多肢選択方式の問題では現象が的確に強調され,統合的な学習ができる。

 第2版では,初版を徹底的に見直した上で,心電図所見を追加した。また,さまざまな不整脈やイオンチャネル病に関する新しい章を加え,全面的にアップデートした。本書は電気生理学者,医学生,看護師,臨床検査技師などに対して心電図を系統的に学習するために不可欠な助けとなるであろう。

 Zainul Abedin, MD, FRCP(C), FHRS
 Robert Conner, RN

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1 波形と間隔
2 平均QRS軸の決定
3 正常心電図
  セルフアセスメント Part 1
4 心室内伝導障害
5 心筋虚血と心筋梗塞
  セルフアセスメント Part 2
6 心腔拡大と心臓肥大
7 急性心膜炎
8 洞調律とその機能不全
  セルフアセスメント Part 3
9 房室ブロック
10 心房不整脈
  セルフアセスメント Part 4
11 上室リエントリー性頻拍
12 Wolff-Parkinson-White症候群
  セルフアセスメント Part 5
13 接合部不整脈
14 心室不整脈
15 チャネル病
16 電気的ペーシング
  セルフアセスメント Part 6

参考文献
セルフアセスメント 解答
索引

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疾患ベースで心電図を教える後期研修医向けの問題集
書評者: 村川 裕二 (帝京大溝口病院教授・循環器病学)
 心電図を学ぶ人はどのくらいの数にのぼるのか。

 医学生は毎年9,000人。

 看護や臨床検査の教育を受ける人が51,000+4,000で55,000人。

 製薬会社の臨床開発でQT間隔がどうのこうのと論じる必要がある100人。あるいは,ふと魔が差して必要がないのに心電図の勉強を始める人が200人。

 合計して,心電図関係の書物の購買者が1年に64,300人ずつ出現することになる。この20年分が医学書に接するとしても,専門や職場の業務で心電図とは縁遠くなるほうが多いはず。なので,今日本で心電図を学ぼうとする人は30万人くらいだろうか。

 この数はインパクトがある。

 12誘導心電図はもう「進歩しつくした検査」。「完成されている」からいじる余地はない。10年前の本でも使えないでもない。とはいいながら,疾患としてブルガダ症候群やQT“短縮”症候群など,新顔が入ってくるので,テキストも少しずつ変化する。30年前に医師になった父親が医学生の娘に「心電図の本をあげる」と言っても,遠慮されるのも道理。

 ここで取り上げる『心電図セルフアセスメント』は「心電図のテキスト+問題集」である。導入部の「波形とQT間隔」から「正常心電図」までの3つの項は,初めて心電図を学ぶ人には難しい。基礎的なことは他のテキストで学んだことのある人を対象としている。

 「心室内伝導障害」が一つの項として4番目に出て来る。「急性心膜炎」も独立している。波形ベースでなく,疾患ベースで心電図を教えている。意表を突いた構成。こういう話の進め方もあったのか。評者自身,「眼がくらむほど売れ行きの良い心電図のテキスト」を書きたいと思っているので,ヒントになった。

 不整脈の解析にラダーグラムが使われている。ラダーグラムは「わかっていない人には敷居が高い」が,ここをクリアしないと不整脈はわからない。かなり詳しく説明されている。学生には向かない。研修医や現場で心電図に接する機会の多いスタッフに薦められるレベル。循環器内科で後期研修を始めるころに手にすると勉強しやすいタイミングか。問題に対して選択解答肢が提示されているものもあるが,基本は「これは何ですか?」という形のクエスチョンになっている。学ぶという意味では現場感覚に沿うが,選ぶよりも頭を絞るという点で要求度は高い。

 本書の装丁はかなり魅力がある。2色刷りなどと,物欲しげなところが無い。黒1色。表紙の色と文字のバランスも良い。日本語も重たくなく,洗練されている。

 端正なテキストである。
心電図に対する苦手意識が払拭できる入門書
書評者: 萩原 誠久 (東女医大主任教授・循環器内科学/副院長)
 いまだに心電図の読み方が苦手な先生方は多くおられると思う。1924年にノーベル生理学・医学賞を受賞したオランダの生理学者Einthovenが,心臓から微小な電気現象を記録する心電図法を1903年に開発してから約110年が経過している。心電図は心臓を構成する心筋細胞が発生する活動電位の総和であり,さらに活動電位は心筋細胞膜に存在するさまざまなイオンチャネルにより成り立っている。心電図は数多くある循環器系検査の中で最も標準的な検査であり,その判読結果によって,病態から治療方針の決定など,患者さんの生命予後にも関わる重要な検査手段となっている。

 これまで,心電図に関連する多くの参考書は出版されているが,『心電図セルフアセスメント—229題で学ぶ判読へのアプローチ』は学生から研修医,技師,看護師など,全ての医療従事者のための心電学の入門書である。心電図の基礎知識から異常波形の機序までがすんなりと理解できるので,読み終えた後には心電図に対する苦手意識が払拭〈ふっしょく〉される。さらに,本書の特徴はおのおのの項目ごとに20-30題のセルフアセスメント用の心電図に関する設問が準備されていることである。初めから読み続けて,セルフアセスメントを繰り返し行うことで心電図判読のコツがつかめると思う。

 本書は古くからの心電現象のみならず,最近明らかになったイオンチャネル病など最新知識にも対応したテキストであり,多くの方が心電図をマスターするために必携の一冊となることを確信する。
229題のセルフアセスメントで“理解の仕方”がわかる
書評者: 有田 眞 (大分医科大学名誉教授・湯布院厚生年金病院名誉院長)
 Willem Einthovenがヒトからの心電図記録に成功し,今年で早くも111年の歳月が流れた。この間の心臓電気現象異常の診断と治療に関する進歩は目覚ましく,枚挙にいとまがない。それにもかかわらず,1世紀以上の間その価値を全く減じることなく,日常臨床で“いぶし銀”のごとき光彩を放っているのが,体表面12誘導心電図であると言っても過言ではない。

 その重要性に鑑み,心電図については,基礎的立場から細胞内活動電位に絡めて理解を助けるもの,ベクトル的解釈を使って理解を促すもの,果ては波形の特徴をほぼ丸暗記することで診断に導こうするものなどさまざまで,毎年多数の書籍が刊行されている。このこと自体,心電図の重要性は認知されているが,これを本当に理解して正確な診断を下すことが難しい症例が多数存在することを物語っているのである。循環器科を標榜する医師であっても,心電図は何となく敬遠される傾向にあり,コンピュータによる診断をうのみにしている現実が無きにしもあらず,というのは言い過ぎであろうか。

 このたび,村松光博士翻訳,新博次先生監訳で出版された『心電図セルフアセスメント——229題で学ぶ判読へのアプローチ』は,このような混沌を断ち切る,誠に時宜を得た出版であると思われる。ちなみに訳者である村松博士は,評者が大分医科大学第二生理学講座に在職中,1988年から約2年間,縁あって研究生として在籍され,モルモット単一心室筋細胞の細胞内灌流法を確立し,cyclic AMPのNa電流に対する作用が膜電位依存性であることを世界で初めて明らかにされた,優秀なphysician scientistである。本書は,基礎電気生理学に極めて造詣の深い氏が,渾身の力を込め,しかもわかりやすい言葉で,一気に翻訳をされているので,読者は抵抗なく読み進むことができる。

 内容は「波形と間隔」から始まり,「心筋虚血と心筋梗塞」「心腔拡大と心臓肥大」「房室ブロック」「心房不整脈」「上室リエントリー性頻拍」「Wolff-Parkinson-White症候群」「心室不整脈」などを経て,近年注目を集めている「チャネル病」「電気的ペーシング」まで,全部で16の章に分かれているが,電気生理学の基礎知識がなくても理解できるよう,十分配慮した説明がなされている。

 一方,本書最大の特徴は,2ないし4章ごとに設けられた,セルフアセスメント(Part 1からPart 6まで,合計229題)にある。問題にチャレンジし,わからないところは巻末の懇切な解答ページを参照すれば,「心電図の重要性と面白さと奥深さを絶対に体得して欲しい」と願う,原著者と訳者の強烈な思いが伝わってくるに違いない。もう一つの特徴は,一見他愛ないことのようで実はとても大切なこと,すなわちほとんど全ての心電図トレースが実物大で極めて明瞭に印刷されていることである。検査室で記録された患者の心電図が,そのまま目に飛び込んでくるような臨場感を十分味わえるため,セルフアセスメント問題を読み解くにも,つい力が入るから不思議である。

 本書を座右の書とされ,心電図の理解を深めるとともに,心電図が好きでたまらない医師や研究者,看護師,臨床検査技師,理学療法士,臨床工学技士などの諸君が一人でも増えることを心から期待して,推薦の言葉とする。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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