医学界新聞

寄稿

2014.06.16

【寄稿】

信頼性の高い情報を「探して」「つなぐ」専門図書館と司書

佐藤 正惠(千葉県済生会習志野病院 図書室/患者図書室あおぞら 司書)


専門職としての図書館司書

 読者の皆様は日ごろ図書館をどのように利用されているだろうか。本稿では病院図書室の司書の立場から,医学図書館と司書の役割を紹介したい。

 そもそも,日本の病院図書室は医療法第22条で地域医療支援病院に設置が定められた施設である。臨床研修指定病院では,臨床研修に必要な図書または雑誌を有し,MEDLINE等の文献データベース,教育用コンテンツを整備することが求められている1)

 図書館司書資格は教員免許と同様に,文部科学省が認定する大学で開講される司書課程を履修することで得られる。司書課程では,著作権など関連法規,経営論,選書,分類,レファレンス(参考調査),データベース検索など図書館運営にかかわる業務全般を学び,医学図書館司書はさらに研修や自己研鑽で必要な知識やスキルを獲得していく。職能団体の一つであるNPO法人日本医学図書館協会(JMLA)は現職者教育を行い,ヘルスサイエンス情報専門員資格認定制度(JHIP)を運営し,コンピテンシー・モデルを提示している2)。ちなみに,米国で専門職であるライブラリアンの多くは大学院の米国図書館協会(ALA)認定課程で修士号を取得し,さらに研鑽を積み,米国医学図書館協会の専門職認定(AHIP)を受ける3)

図書館とライブラリアンの 新たな役割

 1990年代半ばからのインターネットと電子リソースの普及は,図書館,特に科学系図書館の在り方を大きく変貌させた。究極の電子化図書館も登場している。例えば米国のユタ大学医学図書館では,蔵書を大胆に廃棄し,空いたスペースをイノベーションの場として提供しており,大学病院には情報キオスク端末を設置して患者と家族のための情報提供を行っている。図書館はもはや“本の倉庫”ではなく,ライブラリアンはコミュニケーターやサポーターなど,研究や教育の一部として新たな役割を担う存在となっているという4)

 このように,より利用者に溶け込むサービスへとシフトしていくライブラリアンは, “Informationists”, “Embedded Librarian”, “Blended Librarian”などと呼ばれる。「エンベディッド・ライブラリアンとは,日常の業務において,図書館を離れ,利用者が活動している場から,利用者と活動をともにしつつ情報サービスを提供している図書館司書を指す」5)。これは1970年代に登場したClinical Medical Librarianの流れをより発展させたものと言えよう。

 実際,Sollenbergerらは医療分野でのライブラリアンの存在感が高まっていると報告し6),Butsonらは,ライブラリアンは患者のセルフ・アドボカシーや患者と医師間のコミュニケーションを支援するうえで重要な役割を果たしていると指摘している7)。カナダのRegina Qu'Appelle Health Regionヘルスサイエンス図書館は,YouTubeに90秒の図書館CM8)を作成し,ライブラリアンによる情報サービスのメリットをコメディタッチでアピールして2014年の国際図書館連盟(IFLA)国際マーケティング賞を受賞した。

情報リテラシー向上のために

 GoogleやPubMedで検索したものの,ノイズが多く必要な情報になかなかたどりつけなかったという経験はないだろうか。日本では,図書館が医学部生に文献検索など情報リテラシーの授業を行う大学の割合は約半数にとどまり,実施時期も低学年に集中しているという調査がある9)

 多忙な医療従事者にとって情報検索を体系的に学ぶ機会はあまり多くはなく,検索は自己流ということもあるだろう。「目安としては情報収集にかける時間は10分以内」10),「医師が臨床上の疑問解決に1時間以上費やすことはない」11)という意見もある。

 1997年のMEDLINEを含む医学関連分野データベースPubMedの無料公開は,“PubMedとジャズはアメリカから人類への最大の贈り物”と言われるほど画期的だった。だが,2千万件を超える文献から必要な文献を探し出すのは容易ではない。現在,PubMedやUpToDate®をはじめデータベース検索の多くの初期画面が検索窓一つのGoogleスタイルになり,一見簡便になったように見えて......

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