MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内
2014.04.28
Medical Library 書評・新刊案内
坂井 建雄,河田 光博 監訳
《評 者》杉本 哲夫(関西医大大学院教授・脳構築学)
洗練された美しい図を読ませる内容
『プロメテウス解剖学アトラス 頭頸部/神経解剖 第2版』が出版された。本書は洗練された美しい解剖図と読ませる内容を特色としている。初版にはすでに高い評価が与えられており,第2版はその伝統を見事に引き継いだ第一級のアトラスといえる。
本書は初版に比べると内容がさらに充実し,頭頸部と脳の解剖実習にも,知識の整理にも,これ1冊で十分賄えるアトラスになった。訳者序に紹介された通り,旧版の頸部の内容が頭部と合体し,頭頸部として新しく編成された。頭頸部のセクションに新しく組み込まれた内容をみると,その全てが医学教育のグローバルスタンダード基準をクリアしており,これからの医学教育に必須の項目といっても過言ではない。
まず触診可能な骨指標(体表解剖)が加わった。頭部と頸部の診察に役立つ部位が手際よく一覧にまとめられており,臨床的に重要な構造と体表にある三角との対応関係が示されている。新たに整理された図表は頭頸部の診察に役立つ。そして,顔の発生と口蓋裂の図解が新しく加えられた。ここでも読ませる部分とのバランスが絶妙である。甲状腺の解説ページにも臨床画像検査の図解が加わった。
頸椎の各部分骨と靭帯もここに詳しく掲載された。それに加えて環椎後頭関節と環軸関節,さらには鈎椎関節に関するページも整備された。頭蓋底に開口している孔は骨学や解剖実習の初心者にとって手ごわい学習対象である。学習の際,頭蓋底を通るもの(神経,脈管など)をリアルに描画した何枚かの図は格段の理解を促すよう配慮されているので,彼らにとって最高の援軍になるに違いない。
咽頭周囲の間隙は病変の進展を理解する上でも大変重要な構造であり,解剖実習などで必ず確認すべき箇所の一つである。本書では数ページを割いてユニークな図を巧みにレイアウトすることにより,丁寧な解説を提供している。
神経解剖のまとめとして,本書に新しく「中枢神経系:要約,回路図,まとめの表」が追加された。このセクションは神経解剖の講義・実習を一通り仕上げた学生諸氏や若い医師にとって,壮大な体系を短時間で復習するのに極めて役立つものである。ボリュームあるその中身を飾る回路図や表はもちろんプロメテウス伝統の美しさをもって完成されており,見開きページで読み切りのスタイルを保っている。
本書は本格的に勉強するという目的に確実に応じてくれる良書である。医学生,医師をはじめ医療系学部学生や医療に従事される各位に幅広く行き渡り,長く愛されることを期待し首途を祝福したい。
A4変型・頁552 定価:本体11,000円+税 医学書院
ISBN978-4-260-01441-0
菊地 臣一 編著
《評 者》折田 純久(千葉大大学院助教・整形外科学)
腰痛診療のバイブル待望の第2版
腰痛は国民愁訴で第一位を占める慢性疾患である。しかしながら,その発症機序や病態は十分にわかっておらず,病態や治療の全てが科学的に構成されたものではない。その結果,治療成績は停滞し腰痛の治療成績に向上は認められていない。
本書は,わが国の腰痛研究の第一人者としてこの分野をけん引されてきた編著者の菊地臣一先生の衝撃的な告白から始まる。腰痛研究の重鎮の独白には,現代の腰痛診療に携わるわれわれの発奮と自戒を促すに十分な重みと深みがある。目覚ましい近代化と医療技術の発展が進む現代において,その全容が全くと言っていいほど不明である腰痛という病態は,むしろそのコントラストと存在感を強め挑発的にわれわれの眼前に未明の深海のごとく横たわっているのである。
それでは,われわれはどのように腰痛診療に携わっていくべきか。「腰痛を知るのではなく,どう考えるかについて考察する」。このようなコンセプトにのっとり厳選された各分野の第一人者により執筆・編集された本書は多くの知見と示唆に満ちた,いわば腰痛診療にかかわるバイブルともいうべき一冊であり,それは本書の随所から見て取ることができる。初版はさかのぼること約10年前,2003年に発刊されたが,このコンセプトは脈々と受け継がれている。
芳醇なワインを連想させる深みのあるガーネットカラーの表紙をめくり,「腰痛」という大海に冒険に出るがごとくはやる気持ちを抑えながら目次を開く。飛び込んでくるのは腰痛の病態や検査,治療など日常診療の基本事項のほか「誤診例と治療難航例からみた診療のポイント」など,腰痛診療にかかわる者が常に疑問をはせながらもなかなか答えを見つけにくい項目である。最後の大項目「腰痛を考える――私の疑問」では編著者自身の疑問も織り交ぜた腰痛への思念が記述されており,本書の腰痛哲学の重みを盤石たるものとしている。かと思えば,「腰痛の病態」の項目では「形態学」「機能」「臨床研究」のおのおのの視点から腰痛の病態が多角的にかつ明解に記載されており,その明快さは教科書
この記事はログインすると全文を読むことができます。
医学書院IDをお持ちでない方は医学書院IDを取得(無料)ください。
いま話題の記事
-
医学界新聞プラス
[第2回]アセトアミノフェン経口製剤(カロナールⓇ)は 空腹時に服薬することが可能か?
『医薬品情報のひきだし』より連載 2022.08.05
-
医学界新聞プラス
[第1回]心エコーレポートの見方をざっくり教えてください
『循環器病棟の業務が全然わからないので、うし先生に聞いてみた。』より連載 2024.04.26
-
寄稿 2024.08.13
-
ピットフォールにハマらないER診療の勘どころ
[第22回] 高カリウム血症を制するための4つのMission連載 2024.03.11
-
新年号特集 医薬品開発の未来を展望する カラー解説
創薬における日本の現状と国際動向寄稿 2025.01.14
最新の記事
-
2025.01.14
-
新年号特集 医薬品開発の未来を展望する カラー解説
創薬における日本の現状と国際動向寄稿 2025.01.14
-
新年号特集 医薬品開発の未来を展望する
国民に最新の医薬品を届けるために対談・座談会 2025.01.14
-
新年号特集 医薬品開発の未来を展望する
医薬品開発の未来を担うスタートアップ・エコシステム/米国バイオテク市場の近況寄稿 2025.01.14
-
新年号特集 医薬品開発の未来を展望する
患者当事者に聞く,薬のことインタビュー 2025.01.14
開く
医学書院IDの登録設定により、
更新通知をメールで受け取れます。