臨床研修における外国人講師の招聘(塩尻俊明)
寄稿
2013.12.02
【寄稿】
臨床研修における外国人講師の招聘
研修医も指導医も,より多くの学びを得るためのノウハウとは
塩尻 俊明(国保旭中央病院院長補佐兼総合診療内科部長/教育研修部長・臨床教育センター長)
国保旭中央病院では,2002年より初期臨床研修プログラムの一環として外国人講師の招聘を行っています。これは,当院に筆者が赴任した当時の教育研修部長・吉田象二先生(現在は事業管理者)による「初期臨床研修必修化に備え,当院の研修医に少しでも北米臨床医学の実力を経験させたい」という提案がきっかけでした。筆者自身も,学生時代に伺った舞鶴市民病院で出会ったG. C. Willis先生の高い臨床能力に衝撃を受けた経験から,当時同院にいらした松村理司先生(現・洛和会音羽病院総長)にアドバイスをいただきつつ,講師の招聘を開始しました。本稿では,これまでの経験を基に,外国人講師を招聘する意義とノウハウについてお伝えします。
主にホスピタリストと感染症専門医を招聘
当院での外国人講師招聘の目的の一つは,研修医が日ごろ診ている症例に対し米国ではどのようにアプローチするのかを体感し,米国の標準的診療を知って国際的視野を持った医師に育ってほしいということです。二つ目の目的は,外国人講師の指導法に触れることで,指導医のティーチングスキルを向上させることです。
2012年度以降の招聘講師を表にまとめました。最近は,Johns Hopkins University(JHU)とUniversity of California, Los Angeles(UCLA)からの招聘が多く,講師の専門領域は,感染症専門医とホスピタリストが主です。
表 2012年以降招聘した外国人講師 |
感染症専門医が講師ならば,どの科をローテートしている研修医でも感染症症例をプレゼンテーションできますし,ホスピタリストも守備範囲が広いオールラウンダーですから,各専門科にまたがるような症例にも対応できます。初期研修医の教育において,日本の各専門医の教育的力量は,北米と比較しても十二分だと思います。したがって,初期研修医が北米臨床医学の実力をまさに体感できるのは,日本ではサブスペシャリティとしてまだまだ発展途上にある感染症専門医とホスピタリストが示してくれるgeneralityではないかと考えています。
米国式attending roundから研修医も指導医も学ぶ
外国人講師には,米国のレジデントが受けているようなattending round(指導医回診)をなるべく再現してもらうようお願いしています。研修医による症例のプレゼンテーション,外国人講師とのディスカッションに加え,患者の承諾を得た上で,可能な限りベッドサイドでの診察も行います(写真)。
写真 肺気腫の患者の呼吸音の聴診を指導するDr. Jason Napolitano(UCLA・ホスピタリスト) |
決して英語が得意な研修医ばかりではありませんが,果敢に挑戦してもらっています。どうしても英語が苦手な場合は,指導医もしくは英語が堪能な研修医がスムーズにattending roundを進められるようサポートします。昼食をはさんで午前と午後にそれぞれ,2-4例の入院症例のプレゼンテーションを行います。しばしば1例1時間以上かけ,じっくりと検討します。
また,指導医もこのカンファレンスに参加することで,ティーチングスキルの向上をはかります。
講師は,カンファレンスでは研修医に医学的知識を上から目線で授けるのではなく,研修医の発言を尊重します。たとえ多少間違っていても否定することは絶対になく,研修医自身が考えて結論にたどりつけるよう,なごやかな雰囲気で文献をしっかり引用しながら進められていきます。「勉強になるけれど緊張する」ではなく...
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