MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内
2013.11.18
Medical Library 書評・新刊案内
中西 睦子,小池 智子,松浦 正子 編
《評 者》吉田 千文(聖路加看護大教授・看護管理学)
ミクロ・マクロの両側面の新しい視点が組み込まれた看護管理書
十数年前,私は看護管理についての学習も実践経験も不十分なまま,某大学病院の副看護部長になった。当時は,医療安全体制の整備,国立大学の法人化,医師卒後研修必修化,電子カルテの導入,新病棟建設と組織の大変革が求められており,スタッフの疲弊と離職も重なり取り組むべき課題が山積していた。どうしたら良い看護ができ,スタッフがやりがいを持って働けるだろうかと,看護師長たちと議論し知恵を出し合い,事務部や他職種に交渉する,そういう怒涛のような日々を送った。
半ばガス欠の状態で職を辞したが,そのときに手に取った書籍の一つが本書の第2版であった。そこには,“病院があるから師長がいて,だから看護管理があるというような問題設定の仕方は本書ではされていない。看護サービスの提供は,あくまでもミクロ・マクロの視点から複眼的にとらえられる。つまりは制度・政策から個々の病棟の看護管理に至るまで,実際それは一つの巨大システムとして眺められる”(p. vi)とあった。この言葉のとおり一冊の中に看護管理の場とそこでの活動を意味付ける枠組み,看護を取り巻く包摂社会(政治・経済)が構造化されていた。本書を読み返しながら自身の体験に意味が与えられ救われる思いがした。それ以来改訂ごとに購入している。
第4版は,初版からのコンセプトを引き継いでいる。その上で最新のヘルスケア動向や蓄積されてきた看護管理学研究の知見を盛り込み解説し,大きな節目を迎えている社会情勢の中で看護が向かう方向,看護管理のあり方について学習者に問題提起する充実した内容になっている。
看護サービス提供の新しい視点がマクロ・ミクロの両側面に組み込まれている。マクロの側面には,多職種連携・協働と在宅看護が加わった。前者ではチーム医療の観点から看護サービス提供組織をいかにデザインするか,専門性の向上,役割の拡大,そして連携・補完の観点から説得力ある論が展開される。後者では,在宅看護を“患者らが自宅などの生活の場で療養を続けるために必要な看護を提供すること”とし,在宅看護=訪問看護という考え方へのアンチテーゼが提示されている。そして,病院や病院以外の組織が,それぞれ地域の一組織として在宅看護を行うための重要ポイントと方法論が述べられる。
ミクロの側面には,労働者としての看護職と研究の活用者としての実践家の新しい視点が加わった。前者は,看護職の活動を,ケアやサービスではなく“労働”“働き方”からとらえる視点である。看護師の職務満足,新人教育,キャリア開発における経験学習の意義などにも多くの紙面が割かれており,看護サービス提供者である看護職をより深く理解することが可能になっている。後者は,前版までに取られていた研究の実施者から,Evidence Based Management(EBM)の実施者へと看護実践家の立場が転換したことを意味している。私はこれに大いに賛成である。実践者が研究に取り組む意義もあるが,実践者は状況に直接働きかけることのできる恵まれた立場にある。次々と生み出される知を現場の課題解決に活用し,実践現場からさらなる研究課題を提起するといった研究と実践の循環を回していってほしいと思う。
個人的には,基礎教育から卒後教育までの看護管理学教育と継続教育を含む看護管理の教育体系が,その歴史的変遷を含めて整理され網羅的に提示されたことを大変うれしく思った。認定看護管理者制度教育課程の変遷はあまり資料がなく貴重な文献になる。
編者には,これまでの中西睦子氏(国際医療福祉大)に加え,小池智子氏(慶大),松浦正子氏(神戸大学病院)が加わっている。これにより看護管理の専門書が教育・研究・実践のいずれの立場にいる看護職にとってもわかりやすいものになって...
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