看護サービス管理 第4版
看護管理のあらゆる視点について学べる1冊
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看護サービス管理とは、基本的に「看護管理」と同義であるが、「サービス」を付けることで、看護を経済的な対価に耐えうる1つの専門性をもったサービスととらえることができる。本書は、その「看護サービス」の管理にまつわる経済面、労働環境面、教育面などあらゆる側面について解説。経営概念を身につけ、中長期的なビジョンから看護を考え、成果を生み出すことのできる看護管理者の育成をめざした書。
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- 序文
- 目次
- 書評
序文
開く
第4版の序
1998年に第1版を著した『看護サービス管理』が,今年2013年には第4版をお届けすることとなった.
われわれ編集者が考えてきたことは,マネジメントは,もとより日々の実際的・裁配を柱とする活動にとどまらず,裁配を導く戦略,さらにはそれら戦略がよってきたるビジョンやミッションを考えることのできる看護管理者を育てることを目指していこうということ,それに従って本書も進化させたいということである.
第3版での改訂は,2005年の医療制度改革大綱および2006年の診療報酬改定という大きな制度的変化を受けて立つ形で行った.第4版では,むしろ次のように看護活動の内部の変化に目を向けた見直しを行った.
主に充足させた内容は,まず第4章に「在宅看護におけるマネジメント」と,「看護提供の組織システムのデザイン」を新たに加えたこと,次に,第2章にあえて「医療におけるコミュニケーションと看護」という1項を加え,多様な職種が交錯して活躍する医療現場でのコミュニケーションを磨くスキルを提供しようと意図したこと,さらに3つ目は,研究と教育のテーマを扱った第11章で,従来の学部課程主体の記述から大学院教育まで広げたことである.
また,第11章研究結果の活用である「データの分析」の項には,EBM(根拠に基づく管理)の概念をはっきり打ち出した.これは認定看護管理者の認定資格要件に大学院での管理分野の学習が大いに関係してくること,教育制度が整えば管理者の育成はどの職域でもおおむねそうであるように,大学院の機能に期待するのは当然だからである.
常々気づいていたことだが,看護職は基本的にマネジメント能力が高い.つまり多様な活動を合理的に組み合わせて効率よく目標達成をはかるということにたけているのだ.にもかかわらず,看護サービス管理とは自分がすでに身につけているものとは別ものだと思いこんでいる人が多い.本書では,ケアの活動も看護管理の活動との共通項がたくさんあることをぜひ学んでほしい.関連する内容は本書の第1章第3節「医療費と看護サービス」および第4節「生産性の高い看護提供システムの構築」で触れているので参考にされ,マネジメント能力をさらに磨くのに役立ててほしいと願っている.
2013年2月1日
編者代表 中西 睦子
1998年に第1版を著した『看護サービス管理』が,今年2013年には第4版をお届けすることとなった.
われわれ編集者が考えてきたことは,マネジメントは,もとより日々の実際的・裁配を柱とする活動にとどまらず,裁配を導く戦略,さらにはそれら戦略がよってきたるビジョンやミッションを考えることのできる看護管理者を育てることを目指していこうということ,それに従って本書も進化させたいということである.
第3版での改訂は,2005年の医療制度改革大綱および2006年の診療報酬改定という大きな制度的変化を受けて立つ形で行った.第4版では,むしろ次のように看護活動の内部の変化に目を向けた見直しを行った.
主に充足させた内容は,まず第4章に「在宅看護におけるマネジメント」と,「看護提供の組織システムのデザイン」を新たに加えたこと,次に,第2章にあえて「医療におけるコミュニケーションと看護」という1項を加え,多様な職種が交錯して活躍する医療現場でのコミュニケーションを磨くスキルを提供しようと意図したこと,さらに3つ目は,研究と教育のテーマを扱った第11章で,従来の学部課程主体の記述から大学院教育まで広げたことである.
また,第11章研究結果の活用である「データの分析」の項には,EBM(根拠に基づく管理)の概念をはっきり打ち出した.これは認定看護管理者の認定資格要件に大学院での管理分野の学習が大いに関係してくること,教育制度が整えば管理者の育成はどの職域でもおおむねそうであるように,大学院の機能に期待するのは当然だからである.
常々気づいていたことだが,看護職は基本的にマネジメント能力が高い.つまり多様な活動を合理的に組み合わせて効率よく目標達成をはかるということにたけているのだ.にもかかわらず,看護サービス管理とは自分がすでに身につけているものとは別ものだと思いこんでいる人が多い.本書では,ケアの活動も看護管理の活動との共通項がたくさんあることをぜひ学んでほしい.関連する内容は本書の第1章第3節「医療費と看護サービス」および第4節「生産性の高い看護提供システムの構築」で触れているので参考にされ,マネジメント能力をさらに磨くのに役立ててほしいと願っている.
2013年2月1日
編者代表 中西 睦子
目次
開く
第1章 看護サービス管理とは何か
看護サービス管理とは
1 なぜサービスか
2 ヒト・モノ・カネ・情報という資源
3 組織と管理の一般的概念
4 看護サービス管理の対象
看護をサービスとしてとらえることの意味
1 コンシューマリズムの流れ
2 貨幣経済社会システムからみた看護
3 サービスの消費者としての患者とサービスの質
医療費と看護サービス
1 サービス対価としての医療とその動き
2 質的ニーズの増大は医療費抑制を招く
3 看護経済学の可能性
生産性の高い看護提供システムの構築
1 システムアプローチ
2 情報システムがもたらす空間的・時間的効率性
3 最終的には看護職自身に還元されるシステム
第2章 看護サービス管理の基礎
リーダーシップ・マネジメント
1 リーダーとは
2 リーダーシップ能力
3 リーダーシップスタイル
4 状況別リーダーシップ
モチベーション(動機づけ)
1 マズローの欲求体系理論
2 ハーツバーグの二要因理論
3 強化理論
4 期待理論
5 公平理論
組織論の仕組みと機能
1 組織とは
2 医療における組織
3 組織構造
管理論(さまざまな管理モデル)
1 管理論の歴史的変遷
2 仕事に対する姿勢
3 マネジメント論
4 管理職のアセスメント
医療におけるコミュニケーションと看護
1 コミュニケーションからみた医療の場
2 コミュニケーションと文化
3 葛藤とコミュニケーション
第3章 看護サービス管理の要素とプロセス
看護サービス管理の諸要素
1 看護サービス管理における意思決定
2 看護サービスにおける人的・物的資源
3 看護サービスの予算計画の必要性
4 看護サービスとリーダーシップ
5 看護サービスが対象とする地域の特性
6 看護部門の組織構造
看護サービス管理のプロセス
1 アセスメント
2 プラニング
3 組織化
4 行動化
5 統制
第4章 日本の医療と看護サービス提供システム
医療経済の仕組み
1 医療経済学とは
2 マクロ医療経済学-国民医療費の構造分析
3 ミクロ医療経済学-わが国の診療報酬体系の現状と課題
在宅看護におけるマネジメント
1 在宅看護は看護マネジメントにとって重要であるわけ
2 在宅看護の基本的な考え方
看護サービス提供システムの現状と課題
1 看護市場(マーケティング)
介護保険と看護サービス提供の展望
1 介護保険と出会う-看護職者はどこでどのようにかかわっているのか
2 介護保険制度のあらまし
3 介護保険がもたらすサービスの受け手と提供者
看護提供の組織システムのデザイン
1 限りある人的資源の活用
2 チーム医療の推進
3 チームの組織デザイン
4 チーム医療を促進する組織文化の情勢
第5章 看護行政の仕組みと看護政策
看護行政の仕組み
1 看護行政の組織と機能
2 看護政策の展開
政策決定過程と看護職の参画
1 わが国の立法の成立過程
2 診療報酬改定の過程
3 政策決定過程への参加
第6章 看護サービスの質保証
病院機能評価の考え方と仕組み
1 第三者評価と社会情勢
2 病院機能評価の沿革
3 病院機能評価の考えるあるべき姿
4 病院機能評価の仕組み
病院機能評価の現状と病院の課題
1 サービスの側面からの視点
2 第三者による評価方法とその対応
3 病院機能評価の社会的役割
4 病院機能評価の項目を用いた評価の視点
看護部門の自己評価
1 看護実践と評価
2 組織でつくる評価指標
3 評価の意味
患者満足
1 患者満足度に関する研究の始まり
2 患者満足度が注目されてきた背景
3 患者満足度調査の意義
4 医療に求められるサービス
5 患者満足度に影響する要因
看護師の職務満足
1 職務満足に関する研究の背景
2 職務満足はなぜ必要か
3 職務満足に関する研究
4 今後の課題
第7章 看護サービス管理におけるリスクマネジメント
医療現場のリスクマネジメント
1 リスクマネジメントとは-その歴史とわが国の医療現場への導入
2 組織横断的な取り組みによりシステムとしての安全をめざす
医療のリスクマネジメント
リスクマネジメントからみた看護事故防止の考え方
1 2群の看護事故における危険要因の主たる所在の違い
2 療養上の世話業務における事故の防止
3 診療の補助業務における事故の防止
ヒヤリ・ハット事例の分析とリスクマネジメントへの活用
1 個々事例の分析と活用
2 多数事例の分析と活用
看護師の労働安全衛生とリスクマネジメント
1 職業感染
2 抗がん剤の曝露
3 放射線の曝露
4 消毒剤グルタルアルデヒドの曝露
5 ラテックスアレルギー
6 患者・家族からの暴力・暴言
7 職業性腰痛
看護部のリスクマネジメントと看護管理者の役割
第8章 看護と情報管理のシステム
看護サービスの提供と情報管理
1 看護サービス提供のプロセス
2 スタッフナースに必要な情報
3 看護管理者に必要な情報
看護を支援する情報システムの実際
1 求められている看護サービス
2 診療支援システム
3 看護ケアを支援するシステム
4 看護管理を支援するシステム
看護情報システムの課題と展望
1 電子カルテと看護
2 看護実践のための分類基準(標準化の事例)
3 臨床で用いる看護実践用語の標準化
4 臨床看護知識の構造化と再利用
第9章 看護キャリア開発
専門職としての展望
1 専門職とは
2 看護の専門職化(プロフェッショナリゼーション)
3 看護の専門分化
4 専門分化の統合
キャリア開発の方策
1 キャリア開発に関連する用語の整理
2 組織におけるキャリア開発の位置づけ
3 キャリア開発モデル
4 生涯発達の視点
新人看護師教育の再構築
1 近年の新人看護師教育の現状
2 プリセプター制度の問題点
3 これからの新人看護師教育
現任教育におけるキャリア開発
1 医療現場の特徴からみる看護におけるキャリア開発の特徴
2 キャリア開発は“経験”を基盤とした臨床現場での学習の進化発展過程
3 キャリア開発のプロセス
4 キャリア開発プロセスの節目の段階
5 現任教育のゴール-自己と組織の成長に向けて
6 現任教育計画
7 現任教育の企画運営
8 現任教育の現状と問題
第10章 看護倫理と看護サービス管理
看護職の体験する倫理的ジレンマ
1 看護職のジレンマの特質
2 複雑になった倫理的判断基準
看護サービス管理の場に生じる倫理的問題
1 看護管理者の体験する倫理的ジレンマ
2 管理の場に生じる倫理的問題の例
看護サービス管理の倫理原則と看護管理者の役割
1 看護管理者の役割
2 看護管理者の倫理原則
看護倫理を実現するシステムづくりと組織文化の創造
1 看護倫理教育
2 システムづくり
第11章 看護サービス管理における研究と教育
看護サービス管理における研究
1 看護サービス管理研究の目的
2 看護サービス管理研究の動向と課題
3 看護情報のIT化は研究をどう変えるか
-ITの進化は,看護研究の新たな目覚めを促すか
4 研究成果の看護サービス管理への応用-EBMデータを生かす
看護サービス管理の基礎教育
1 基本的考えと教育の目的・内容
2 看護管理学の教育方法
3 学習活動の評価
看護管理者の育成と大学院教育
1 認定看護管理者制度の変遷
2 大学院における看護管理教育
索引
看護サービス管理とは
1 なぜサービスか
2 ヒト・モノ・カネ・情報という資源
3 組織と管理の一般的概念
4 看護サービス管理の対象
看護をサービスとしてとらえることの意味
1 コンシューマリズムの流れ
2 貨幣経済社会システムからみた看護
3 サービスの消費者としての患者とサービスの質
医療費と看護サービス
1 サービス対価としての医療とその動き
2 質的ニーズの増大は医療費抑制を招く
3 看護経済学の可能性
生産性の高い看護提供システムの構築
1 システムアプローチ
2 情報システムがもたらす空間的・時間的効率性
3 最終的には看護職自身に還元されるシステム
第2章 看護サービス管理の基礎
リーダーシップ・マネジメント
1 リーダーとは
2 リーダーシップ能力
3 リーダーシップスタイル
4 状況別リーダーシップ
モチベーション(動機づけ)
1 マズローの欲求体系理論
2 ハーツバーグの二要因理論
3 強化理論
4 期待理論
5 公平理論
組織論の仕組みと機能
1 組織とは
2 医療における組織
3 組織構造
管理論(さまざまな管理モデル)
1 管理論の歴史的変遷
2 仕事に対する姿勢
3 マネジメント論
4 管理職のアセスメント
医療におけるコミュニケーションと看護
1 コミュニケーションからみた医療の場
2 コミュニケーションと文化
3 葛藤とコミュニケーション
第3章 看護サービス管理の要素とプロセス
看護サービス管理の諸要素
1 看護サービス管理における意思決定
2 看護サービスにおける人的・物的資源
3 看護サービスの予算計画の必要性
4 看護サービスとリーダーシップ
5 看護サービスが対象とする地域の特性
6 看護部門の組織構造
看護サービス管理のプロセス
1 アセスメント
2 プラニング
3 組織化
4 行動化
5 統制
第4章 日本の医療と看護サービス提供システム
医療経済の仕組み
1 医療経済学とは
2 マクロ医療経済学-国民医療費の構造分析
3 ミクロ医療経済学-わが国の診療報酬体系の現状と課題
在宅看護におけるマネジメント
1 在宅看護は看護マネジメントにとって重要であるわけ
2 在宅看護の基本的な考え方
看護サービス提供システムの現状と課題
1 看護市場(マーケティング)
介護保険と看護サービス提供の展望
1 介護保険と出会う-看護職者はどこでどのようにかかわっているのか
2 介護保険制度のあらまし
3 介護保険がもたらすサービスの受け手と提供者
看護提供の組織システムのデザイン
1 限りある人的資源の活用
2 チーム医療の推進
3 チームの組織デザイン
4 チーム医療を促進する組織文化の情勢
第5章 看護行政の仕組みと看護政策
看護行政の仕組み
1 看護行政の組織と機能
2 看護政策の展開
政策決定過程と看護職の参画
1 わが国の立法の成立過程
2 診療報酬改定の過程
3 政策決定過程への参加
第6章 看護サービスの質保証
病院機能評価の考え方と仕組み
1 第三者評価と社会情勢
2 病院機能評価の沿革
3 病院機能評価の考えるあるべき姿
4 病院機能評価の仕組み
病院機能評価の現状と病院の課題
1 サービスの側面からの視点
2 第三者による評価方法とその対応
3 病院機能評価の社会的役割
4 病院機能評価の項目を用いた評価の視点
看護部門の自己評価
1 看護実践と評価
2 組織でつくる評価指標
3 評価の意味
患者満足
1 患者満足度に関する研究の始まり
2 患者満足度が注目されてきた背景
3 患者満足度調査の意義
4 医療に求められるサービス
5 患者満足度に影響する要因
看護師の職務満足
1 職務満足に関する研究の背景
2 職務満足はなぜ必要か
3 職務満足に関する研究
4 今後の課題
第7章 看護サービス管理におけるリスクマネジメント
医療現場のリスクマネジメント
1 リスクマネジメントとは-その歴史とわが国の医療現場への導入
2 組織横断的な取り組みによりシステムとしての安全をめざす
医療のリスクマネジメント
リスクマネジメントからみた看護事故防止の考え方
1 2群の看護事故における危険要因の主たる所在の違い
2 療養上の世話業務における事故の防止
3 診療の補助業務における事故の防止
ヒヤリ・ハット事例の分析とリスクマネジメントへの活用
1 個々事例の分析と活用
2 多数事例の分析と活用
看護師の労働安全衛生とリスクマネジメント
1 職業感染
2 抗がん剤の曝露
3 放射線の曝露
4 消毒剤グルタルアルデヒドの曝露
5 ラテックスアレルギー
6 患者・家族からの暴力・暴言
7 職業性腰痛
看護部のリスクマネジメントと看護管理者の役割
第8章 看護と情報管理のシステム
看護サービスの提供と情報管理
1 看護サービス提供のプロセス
2 スタッフナースに必要な情報
3 看護管理者に必要な情報
看護を支援する情報システムの実際
1 求められている看護サービス
2 診療支援システム
3 看護ケアを支援するシステム
4 看護管理を支援するシステム
看護情報システムの課題と展望
1 電子カルテと看護
2 看護実践のための分類基準(標準化の事例)
3 臨床で用いる看護実践用語の標準化
4 臨床看護知識の構造化と再利用
第9章 看護キャリア開発
専門職としての展望
1 専門職とは
2 看護の専門職化(プロフェッショナリゼーション)
3 看護の専門分化
4 専門分化の統合
キャリア開発の方策
1 キャリア開発に関連する用語の整理
2 組織におけるキャリア開発の位置づけ
3 キャリア開発モデル
4 生涯発達の視点
新人看護師教育の再構築
1 近年の新人看護師教育の現状
2 プリセプター制度の問題点
3 これからの新人看護師教育
現任教育におけるキャリア開発
1 医療現場の特徴からみる看護におけるキャリア開発の特徴
2 キャリア開発は“経験”を基盤とした臨床現場での学習の進化発展過程
3 キャリア開発のプロセス
4 キャリア開発プロセスの節目の段階
5 現任教育のゴール-自己と組織の成長に向けて
6 現任教育計画
7 現任教育の企画運営
8 現任教育の現状と問題
第10章 看護倫理と看護サービス管理
看護職の体験する倫理的ジレンマ
1 看護職のジレンマの特質
2 複雑になった倫理的判断基準
看護サービス管理の場に生じる倫理的問題
1 看護管理者の体験する倫理的ジレンマ
2 管理の場に生じる倫理的問題の例
看護サービス管理の倫理原則と看護管理者の役割
1 看護管理者の役割
2 看護管理者の倫理原則
看護倫理を実現するシステムづくりと組織文化の創造
1 看護倫理教育
2 システムづくり
第11章 看護サービス管理における研究と教育
看護サービス管理における研究
1 看護サービス管理研究の目的
2 看護サービス管理研究の動向と課題
3 看護情報のIT化は研究をどう変えるか
-ITの進化は,看護研究の新たな目覚めを促すか
4 研究成果の看護サービス管理への応用-EBMデータを生かす
看護サービス管理の基礎教育
1 基本的考えと教育の目的・内容
2 看護管理学の教育方法
3 学習活動の評価
看護管理者の育成と大学院教育
1 認定看護管理者制度の変遷
2 大学院における看護管理教育
索引
書評
開く
ミクロ・マクロの両側面の新しい視点が組み込まれた看護管理書
書評者: 吉田 千文 (聖路加看護大教授・看護管理学)
十数年前,私は看護管理についての学習も実践経験も不十分なまま,某大学病院の副看護部長になった。当時は,医療安全体制の整備,国立大学の法人化,医師卒後研修必修化,電子カルテの導入,新病棟建設と組織の大変革が求められており,スタッフの疲弊と離職も重なり取り組むべき課題が山積していた。どうしたら良い看護ができ,スタッフがやりがいを持って働けるだろうかと,看護師長たちと議論し知恵を出し合い,事務部や他職種に交渉する,そういう怒涛のような日々を送った。
半ばガス欠の状態で職を辞したが,そのときに手に取った書籍の一つが本書の第2版であった。そこには,“病院があるから師長がいて,だから看護管理があるというような問題設定の仕方は本書ではされていない。看護サービスの提供は,あくまでもミクロ・マクロの視点から複眼的にとらえられる。つまりは制度・政策から個々の病棟の看護管理に至るまで,実際それは一つの巨大システムとして眺められる”(p. vi)とあった。この言葉のとおり一冊の中に看護管理の場とそこでの活動を意味付ける枠組み,看護を取り巻く包摂社会(政治・経済)が構造化されていた。本書を読み返しながら自身の体験に意味が与えられ救われる思いがした。それ以来改訂ごとに購入している。
第4版は,初版からのコンセプトを引き継いでいる。その上で最新のヘルスケア動向や蓄積されてきた看護管理学研究の知見を盛り込み解説し,大きな節目を迎えている社会情勢の中で看護が向かう方向,看護管理のあり方について学習者に問題提起する充実した内容になっている。
看護サービス提供の新しい視点がマクロ・ミクロの両側面に組み込まれている。マクロの側面には,多職種連携・協働と在宅看護が加わった。前者ではチーム医療の観点から看護サービス提供組織をいかにデザインするか,専門性の向上,役割の拡大,そして連携・補完の観点から説得力ある論が展開される。後者では,在宅看護を“患者らが自宅などの生活の場で療養を続けるために必要な看護を提供すること”とし,在宅看護=訪問看護という考え方へのアンチテーゼが提示されている。そして,病院や病院以外の組織が,それぞれ地域の一組織として在宅看護を行うための重要ポイントと方法論が述べられる。
ミクロの側面には,労働者としての看護職と研究の活用者としての実践家の新しい視点が加わった。前者は,看護職の活動を,ケアやサービスではなく“労働”“働き方”からとらえる視点である。看護師の職務満足,新人教育,キャリア開発における経験学習の意義などにも多くの紙面が割かれており,看護サービス提供者である看護職をより深く理解することが可能になっている。後者は,前版までに取られていた研究の実施者から,Evidenced Based Management(EBM)の実施者へと看護実践家の立場が転換したことを意味している。私はこれに大いに賛成である。実践者が研究に取り組む意義もあるが,実践者は状況に直接働きかけることのできる恵まれた立場にある。次々と生み出される知を現場の課題解決に活用し,実践現場からさらなる研究課題を提起するといった研究と実践の循環を回していってほしいと思う。
個人的には,基礎教育から卒後教育までの看護管理学教育と継続教育を含む看護管理の教育体系が,その歴史的変遷を含めて整理され網羅的に提示されたことを大変うれしく思った。認定看護管理者制度教育課程の変遷はあまり資料がなく貴重な文献になる。
編者には,これまでの中西睦子氏(国際医療福祉大)に加え,小池智子氏(慶大),松浦正子氏(神戸大学病院)が加わっている。これにより看護管理の専門書が教育・研究・実践のいずれの立場にいる看護職にとってもわかりやすいものになっているのだと思う。
看護活動の内部の変化に目を向けての改版で,より幅広い読者に対応 (雑誌『看護教育』より)
書評者: 林 千冬 (神戸市看護大学教授)
基礎教育の学生から看護管理者に至るまで,コンパクトながら幅広い層に対応する,言い換えれば長く使える良書の第4版である。
「第4版の序」によれば,今回の改訂では主として「看護活動の内部の変化に目を向けた見直し」が図られたといい,新たに4つの内容が追加されている。「第2章 看護サービス管理の基礎」に追加された「医療におけるコミュニケーション」(手塚千鶴子)は,「医療において連携する多様な専門職の人とのコミュニケーションは,異文化コミュニケーション」だと位置づけ,そこからコンフリクト対処とそのためのアサーティブ・コミュニケーションの必要性につないでいく流れが明快である。「第4章 日本の医療と看護サービス提供システム」には「在宅看護におけるマネジメント」(山田雅子)と「看護提供の組織システムのデザイン」(小池智子)が加えられた。「在宅看護におけるマネジメント」は,訪問看護の側については事業所の開設からマーケティングに至るまで,病院施設の側については退院支援・退院調整のあり方,そして全体を貫く地域医療連携の課題といったように,今日の重要課題である在宅介護をめぐる課題が短い項に見事に圧縮されている。
唯一残念だったのは「看護提供の組織システムのデザイン」の項である。タイトルからは組織化・組織デザインの原理や実践の記述を期待したが,なぜか現在進行形の「チーム医療の推進」をめぐる政策的な動きの紹介にかなりの紙幅が使われている。仮にチームワーク,チーム医療のあり方から組織のあり方を解説したかったのだとしても,厚生労働省の検討会(チーム医療推進会議)などでよく言われる「医療専門職の役割の拡大と補完の強化」といった表現をそのまま無批判に用いることは,チーム医療・チームワークの学術的定義からみて非常に疑問であると同時に,テキストとしては不適切だ。
逆に出色だったのは,第11章「看護サービス管理における研究と教育」における「研究成果の看護サービス管理への応用」(松浦正子)である。前の3版では「看護管理者が行う研究」だった部分を全面的に書き換えたものだが,実践家である看護管理者こそ「研究を行う」よりもまず「応用」が大切だという指摘には大いに共感する。また,研究成果の応用とはすなわちEBM(Evidence Based Management)であり,EBMを「研究成果によって得られた入手可能な範囲で最も信頼できる根拠を把握したうえで,限られた資源のなかで行う看護管理のプロセス」だと定義し,その進め方とともに,近年普及しているベンチマーキングの手法についてもわかりやすく解説している。この項はは,学生,教員はもとより現場の看護管理者にぜひ一読を薦めたい。
(『看護教育』2013年7月号掲載)
書評者: 吉田 千文 (聖路加看護大教授・看護管理学)
十数年前,私は看護管理についての学習も実践経験も不十分なまま,某大学病院の副看護部長になった。当時は,医療安全体制の整備,国立大学の法人化,医師卒後研修必修化,電子カルテの導入,新病棟建設と組織の大変革が求められており,スタッフの疲弊と離職も重なり取り組むべき課題が山積していた。どうしたら良い看護ができ,スタッフがやりがいを持って働けるだろうかと,看護師長たちと議論し知恵を出し合い,事務部や他職種に交渉する,そういう怒涛のような日々を送った。
半ばガス欠の状態で職を辞したが,そのときに手に取った書籍の一つが本書の第2版であった。そこには,“病院があるから師長がいて,だから看護管理があるというような問題設定の仕方は本書ではされていない。看護サービスの提供は,あくまでもミクロ・マクロの視点から複眼的にとらえられる。つまりは制度・政策から個々の病棟の看護管理に至るまで,実際それは一つの巨大システムとして眺められる”(p. vi)とあった。この言葉のとおり一冊の中に看護管理の場とそこでの活動を意味付ける枠組み,看護を取り巻く包摂社会(政治・経済)が構造化されていた。本書を読み返しながら自身の体験に意味が与えられ救われる思いがした。それ以来改訂ごとに購入している。
第4版は,初版からのコンセプトを引き継いでいる。その上で最新のヘルスケア動向や蓄積されてきた看護管理学研究の知見を盛り込み解説し,大きな節目を迎えている社会情勢の中で看護が向かう方向,看護管理のあり方について学習者に問題提起する充実した内容になっている。
看護サービス提供の新しい視点がマクロ・ミクロの両側面に組み込まれている。マクロの側面には,多職種連携・協働と在宅看護が加わった。前者ではチーム医療の観点から看護サービス提供組織をいかにデザインするか,専門性の向上,役割の拡大,そして連携・補完の観点から説得力ある論が展開される。後者では,在宅看護を“患者らが自宅などの生活の場で療養を続けるために必要な看護を提供すること”とし,在宅看護=訪問看護という考え方へのアンチテーゼが提示されている。そして,病院や病院以外の組織が,それぞれ地域の一組織として在宅看護を行うための重要ポイントと方法論が述べられる。
ミクロの側面には,労働者としての看護職と研究の活用者としての実践家の新しい視点が加わった。前者は,看護職の活動を,ケアやサービスではなく“労働”“働き方”からとらえる視点である。看護師の職務満足,新人教育,キャリア開発における経験学習の意義などにも多くの紙面が割かれており,看護サービス提供者である看護職をより深く理解することが可能になっている。後者は,前版までに取られていた研究の実施者から,Evidenced Based Management(EBM)の実施者へと看護実践家の立場が転換したことを意味している。私はこれに大いに賛成である。実践者が研究に取り組む意義もあるが,実践者は状況に直接働きかけることのできる恵まれた立場にある。次々と生み出される知を現場の課題解決に活用し,実践現場からさらなる研究課題を提起するといった研究と実践の循環を回していってほしいと思う。
個人的には,基礎教育から卒後教育までの看護管理学教育と継続教育を含む看護管理の教育体系が,その歴史的変遷を含めて整理され網羅的に提示されたことを大変うれしく思った。認定看護管理者制度教育課程の変遷はあまり資料がなく貴重な文献になる。
編者には,これまでの中西睦子氏(国際医療福祉大)に加え,小池智子氏(慶大),松浦正子氏(神戸大学病院)が加わっている。これにより看護管理の専門書が教育・研究・実践のいずれの立場にいる看護職にとってもわかりやすいものになっているのだと思う。
看護活動の内部の変化に目を向けての改版で,より幅広い読者に対応 (雑誌『看護教育』より)
書評者: 林 千冬 (神戸市看護大学教授)
基礎教育の学生から看護管理者に至るまで,コンパクトながら幅広い層に対応する,言い換えれば長く使える良書の第4版である。
「第4版の序」によれば,今回の改訂では主として「看護活動の内部の変化に目を向けた見直し」が図られたといい,新たに4つの内容が追加されている。「第2章 看護サービス管理の基礎」に追加された「医療におけるコミュニケーション」(手塚千鶴子)は,「医療において連携する多様な専門職の人とのコミュニケーションは,異文化コミュニケーション」だと位置づけ,そこからコンフリクト対処とそのためのアサーティブ・コミュニケーションの必要性につないでいく流れが明快である。「第4章 日本の医療と看護サービス提供システム」には「在宅看護におけるマネジメント」(山田雅子)と「看護提供の組織システムのデザイン」(小池智子)が加えられた。「在宅看護におけるマネジメント」は,訪問看護の側については事業所の開設からマーケティングに至るまで,病院施設の側については退院支援・退院調整のあり方,そして全体を貫く地域医療連携の課題といったように,今日の重要課題である在宅介護をめぐる課題が短い項に見事に圧縮されている。
唯一残念だったのは「看護提供の組織システムのデザイン」の項である。タイトルからは組織化・組織デザインの原理や実践の記述を期待したが,なぜか現在進行形の「チーム医療の推進」をめぐる政策的な動きの紹介にかなりの紙幅が使われている。仮にチームワーク,チーム医療のあり方から組織のあり方を解説したかったのだとしても,厚生労働省の検討会(チーム医療推進会議)などでよく言われる「医療専門職の役割の拡大と補完の強化」といった表現をそのまま無批判に用いることは,チーム医療・チームワークの学術的定義からみて非常に疑問であると同時に,テキストとしては不適切だ。
逆に出色だったのは,第11章「看護サービス管理における研究と教育」における「研究成果の看護サービス管理への応用」(松浦正子)である。前の3版では「看護管理者が行う研究」だった部分を全面的に書き換えたものだが,実践家である看護管理者こそ「研究を行う」よりもまず「応用」が大切だという指摘には大いに共感する。また,研究成果の応用とはすなわちEBM(Evidence Based Management)であり,EBMを「研究成果によって得られた入手可能な範囲で最も信頼できる根拠を把握したうえで,限られた資源のなかで行う看護管理のプロセス」だと定義し,その進め方とともに,近年普及しているベンチマーキングの手法についてもわかりやすく解説している。この項はは,学生,教員はもとより現場の看護管理者にぜひ一読を薦めたい。
(『看護教育』2013年7月号掲載)
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