一過性意識消失(黒川勝己)
連載
2013.11.11
こんな時にはこのQを!
"問診力"で見逃さない神経症状
【第2回】
一過性意識消失
黒川 勝己(川崎医科大学附属病院神経内科准教授)
(3047号よりつづく)
「難しい」「とっつきにくい」と言われる神経診察ですが,問診で的確な病歴聴取ができれば,一気に鑑別を絞り込めます。 この連載では,コモンな神経症状に切り込み,危険な疾患を見逃さない「Q」を示せる"問診力"を鍛えます。
症例患者:70歳,男性主訴:意識消失 病歴:本日午前3時30分ごろ,苦しそうなうめき声を出しているのに患者の妻が気付いた。両上肢をガクガクさせていたので,妻が顔を叩いたところ,5分くらいで発作は収まり目が覚めたが,尿失禁をしていた。気分が悪かったため,トイレに行って少し吐いた。3か月前と昨日の朝方にも同様な発作があったので,心配になり救急外来を受診した。 |
まずは症例をご覧ください。
患者は「一過性意識消失」を繰り返しているようです。一過性意識消失の二大原因は,「てんかん」と「失神」です。「てんかん」は脳細胞が興奮して意識を失う病態であり,「失神」は一過性の全脳虚血(≒低血圧)により意識を失う病態です。「失神」は,さらに「心原性失神」と「神経調節性失神」などに分類されます。この中で予後が最も不良な病態は「心原性失神」であり,突然死の危険性や,一命を取り留めても蘇生後脳症で寝たきりになる可能性もあり,見逃したくないところです。
病態は異なりますが,「てんかん」と「失神」の鑑別は必ずしも簡単ではありません。両者とも,外来受診時には患者が意識を回復していることが多く,バイタルサインや神経学的所見を取っても異常はありません。"病歴"が決め手になりますが,本人は発作中意識を失っているため,目撃者からの情報が非常に重要になってきます。本症例の"病歴"からは「てんかん」と「失神」のどちらの可能性が考えられるでしょうか。
***
救急外来では,血液検査,12誘導心電図と頭部CTが施行され,「異常なし」と診断された。けいれん発作の原因を調べるため,同日午前中に神経内科外来を紹介受診した。神経内科では脳波検査の所見から「境界」と判断され,てんかん発作の可能性があるとの説明を受け,抗てんかん薬が処方され,帰宅した。
脳波検査で微妙な所見があったため,神経内科では「てんかん」の可能性があると判断されたようです。確かに「てんかん」を疑った場合には脳波検査を施行しますが,脳波検査はあくまで診断を補助するものと考え
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