医学界新聞

連載

2012.12.10

在宅医療モノ語り

第33話
語り手:きれいさっぱり流します 洗浄ボトルさん

鶴岡優子
(つるかめ診療所)


前回からつづく

 在宅医療の現場にはいろいろな物語りが交錯している。患者を主人公に,同居家族や親戚,医療・介護スタッフ,近隣住民などが脇役となり,ザイタクは劇場になる。筆者もザイタク劇場の脇役のひとりであるが,往診鞄に特別な関心を持ち全国の医療機関を訪ね歩いている。往診鞄の中を覗き道具を見つめていると,道具(モノ)も何かを語っているようだ。今回の主役は「洗浄ボトル」さん。さあ,何と語っているのだろうか?


洗浄ボトルのビフォー
某ドラッグストアから候補者たちが大集合してくれました。ビフォーの中身は洗剤だったり,飲み物だったり。アフターの仕事を考えると,飲み物がいちばんイメージいいかも。ボディの弾力もそれぞれに違います。
 商品名を出してはよくないでしょうから,少し回りくどい言い方をします。お風呂の浴槽や周辺をきれいにするための洗剤の容器,おわかりですか? そうそう,黄色のあの方です。実は,彼は私の前任者で,在宅医療の洗浄用のボトルとして働いていました。もちろん,洗剤を使い切った後の話です。お湯などいれて簡易シャワーとして活躍していたのです。最近は泡立ちスプレーになっているモノが多く,シャワータイプを探すのには少し苦労します。

 私は500 mLのペットボトルを改良して作られた洗浄ボトルです。キャップの部分に穴が空けられています。ボトル部分にお湯を入れて逆さにして手で押しながらシャワーを作ります。出番はいろいろです。ベッドの上での洗髪だったり,陰部の洗浄だったり,褥瘡,いわゆる床ずれの処置だったり。通常は医師の往診鞄より,看護師の訪問鞄に入っている...

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