入院中のADLほか(4)(川島篤志)
連載
2012.09.24
小テストで学ぶ “フィジカルアセスメント” for Nurses
【第24回(最終回)】入院中のADLほか(4)
川島篤志(市立福知山市民病院総合内科医長)
(前回よりつづく)
患者さんの身体は,情報の宝庫。“身体を診る能力=フィジカルアセスメント”を身に付けることで,日常の看護はさらに楽しく,充実したものになるはずです。
そこで本連載では,福知山市民病院でナース向けに実施されている“フィジカルアセスメントの小テスト”を紙上再録しました。テストと言っても,決まった答えはありません。一人で,友達と,同僚と,ぜひ繰り返し小テストに挑戦し,自分なりのフィジカルアセスメントのコツ,見つけてみてください。
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解説
2年間続いたこの連載もいよいよ最終回,あと3問となりました。最後までお付き合いのほど,よろしくお願いします。
浮腫
(17)下腿のむくみは,脛骨前面を圧迫するのが一般的な診方です。骨があるところはしっかり圧迫できるので,約10秒間圧迫し,凹みがどれくらいで戻るかを見ます。Fast edemaは40秒以内で戻るとされ,病態としては最近生じた低アルブミン血症ということになります。代表的なのはネフローゼ症候群でしょうか? “ぱぁ~ん”と戻ってくる感じです。頻度も低めなので,皆さんがよく診る浮腫は次のSlow edemaで,原因は大まかに言うと心不全・腎不全等や,慢性経過の低アルブミン血症になります。
Slow edemaは60秒でも戻らないとされ,凹んだものの表面をなでると,しばらく凹みが実感できます。じゃあ,50秒は? と聞きたくなりますが,これは研究デザインによるものなので,あまり気にせずにいきましょう!
足先のむくみは,リンパ管のうっ滞が関与しているときの浮腫になります。第2趾の基部が肥厚していて,ムニュっとした感触でつまみにくい所見のことをStemmer signと言います。既に認識している人もいるかもしれませんが,足の浮腫の多くは足の甲からむくんでいる(指趾は意外とむくんでいない)と思いませんか?
また脛骨前面や足背ではなく,重力依存性に大腿部や腹部・背部に浮腫がある方もおられます。感覚としては低反発枕のような微妙なつかみ心地がありますが,これは低栄養・長期臥床の方に多く,何らかの理由で貯留したNaが溜まっている状態です。
ちなみに浮腫=利尿薬投与ではありません。末梢が冷たいときはLow outputの可能性があるので,利尿薬はかえってLow outputを助長する可能性があるわけです。ただ,このあたりの話題はきっちり理解していないと明確な処方理由についての議論ができないので,あまり突っ込まないほうがいいかもしれません。
そのほか,薬剤性の浮腫(降圧薬であるカルシウム拮抗薬,NSAIDsによるNa貯留などが代表的)など,浮腫の原因はさまざまです。浮腫の診断も奥深いものですが,あまり好きではない医師も多いかもしれませんね。
(18)一般的に左足のほうがむくみやすいです。これは解剖学的な理由によるもので,左の下肢からの...
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