医学界新聞

連載

2012.09.10

外来診療
次の一手

第6回】「下腹部が痛いんです……」

前野哲博(筑波大学附属病院 総合診療科教授)=監修
小曽根早知子(筑波大学附属病院 総合診療科)=執筆


2989号よりつづく

本連載では,「情報を集めながら考える」外来特有の思考ロジックを体験してもらうため,病歴のオープニングに当たる短い情報のみを提示します。限られた情報からどこまで診断に迫れるか,そして最も効率的な「次の一手」は何か,ぜひ皆さんも考えてみてください。


【症例】Sさん 22歳女性


ややつらそうな表情で入室してきた。
Sさん「下腹部が痛いんです……」
Dr. M「いつから,どんな感じですか?」
Sさん「夜中から痛くて,だんだんひどくなっています」
Dr. M「痛みに波はありますか?」
Sさん「あまりないです」

バイタルサイン:体温37.4℃,血圧112/64 mmHg,脈拍74回/分(整)。

⇒次の一手は?

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この病歴から言えることは?

 若い,妊娠可能年齢の女性の下腹部痛である。下腹部痛といえば,部位からは虫垂炎,腸炎,膀胱炎,骨盤内炎症性疾患(PID),子宮外妊娠,などが挙がる。痛みに波がないことから間欠痛ではなく,胃腸炎の可能性は低そうだ。「夜中から」と急性発症であり,37℃台の微熱を伴っている点から,何らかの感染性疾患は考慮したい。発熱以外にバイタルサインの異常は見られず,少なくとも急性出血などの緊急性の高い疾患の可能性は低そうだ。ただ,つらそうで「だんだんひどくなっている」と増悪傾向でもあり...

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