医学界新聞

寄稿

2012.04.16

寄稿

適正に臨床試験を実施できる
医師を養成するために

小林真一(昭和大学医学部教授・臨床薬理学/臨床薬理研究センター長)


 医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(GCP省令)の改正,臨床試験に関する倫理指針の整備などに伴い,わが国の臨床試験(治験)にかかわるルールは明確になってきたが,いわゆる"ドラッグ・ラグ"の状況は続いている。その一方で,臨床試験の適正な実施に不可欠とされる臨床試験コーディネーター(CRC)の養成は,日本臨床薬理学会,行政(厚生労働省,文部科学省),日本看護協会,日本病院薬剤師協会,日本臨床衛生検査技師会などの諸団体の協力により推進され,多くのCRCが誕生している。また,日本臨床薬理学会認定CRC制度も開始され,現在認定者数は1500人を超えるなど,全国で活躍するようになった。

 このような状況下で,第I相からPOC(Proof of concept)試験までのいわゆる早期・探索的臨床試験をわが国で実施し,国際共同治験にも積極的に参加し,わが国の臨床試験のさらなる発展をめざすためには,「臨床試験(治験)を適正に実施できる医師」の養成が喫緊の課題であろう。しかしながら,わが国では臨床研究に関する教育は十分とはいえず,各大学の臨床薬理学・薬理学の関連講座での卒前教育と,一部の学会においてわずかに行われているのみである。

専門医に求められる臨床試験の基礎知識

 医師は医学部卒業と同時に初期臨床研修を開始するが,その後は臨床各分野の専門医取得をめざすことが多い。このような環境下で臨床試験の基礎となる知識を医師が確保するためには,「わが国の専門医たる者は臨床試験の基礎知識は有すべき」という理念が必要であろう。そこで2010年2月,「臨床試験を適正に行える医師養成のための協議会(以下,協議会)」が,日本医学会会長の高久史麿氏を会長として設立された(図1)。

図1 「臨床試験を適正に行える医師養成のための協議会」の構成

 協議会では,池田康夫氏(日本専門医制評価・認定機構理事長)の賛同のもと,09年,10年に日本専門医制評価・認定機構に加盟する各学会にアンケート調査を実施した。その結果,協議会の基本理念である「わが国の専門医たる者は臨床試験の基礎知識が必

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