医学界新聞

連載

2011.10.31

〔連載〕続 アメリカ医療の光と影  第209回

共和党大統領候補たちの医療政策(2)

李 啓充 医師/作家(在ボストン)


2949号よりつづく

前回のあらすじ:オバマへの支持率が低下する中,共和党は「医療制度改革法廃止」を選挙公約にするとともに同法に対する違憲訴訟を起こし,政治と司法の両面から攻撃を加えている。


 前回,共和党はオバマの医療制度改革法に対する違憲訴訟を起こしていると書いたが,司法の場で最大の争点となっているのが,同法の「医療保険加入義務化」条項である。そもそも,オバマと民主党は,なぜ国民に対して医療保険への加入義務を強いる条項を改革法に組み入れたのか,今回は,その背景について考える。

オバマが選んだ「保険加入義務化」という現実的政策

 これまで何度も述べてきたように,米国が「無保険社会」(国民の6人に1人が無保険)となっている最大の原因は,「民」を主体として医療保険制度を運営してきたことにある。民間企業にとって利潤追求が何よりも優先されるのは言うまでもなく,米国保険業界にあってそのための最も手っ取り早い方法として長年愛用されてきたのが,いわゆる「サクランボ摘み(いいとこどり)」であった。

 さまざまな手段を使って,有病者を医療保険から排除するのであるが,既往疾患の存在を理由に保険加入を拒否したり,加入者が病気となった途端に保険から排除したりする行為はその典型である。では,なぜ,保険会社が有病者を目の敵にするのかというと,その第一の理由は,有病者は医療コストがかさむことにある。有病者を排除し,健常者のみを集めて医療保険を運営することができれば医療コストは一切かからず,加入者から納めさせた保険料が「丸儲け」となるからであ

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