医学界新聞

連載

2011.11.14

〔連載〕続 アメリカ医療の光と影  第210回

共和党大統領候補たちの医療政策(3)

李 啓充 医師/作家(在ボストン)


2951号よりつづく

前回までのあらすじ:オバマへの支持率が低下するなか,共和党は「医療制度改革法廃止」を選挙公約にするとともに,同法に対する違憲訴訟を起こし,政治と司法の両面から攻撃を加えている。


共和党の論拠となる「ブロッコリー論争」

 オバマの医療制度改革法の正式名称は「患者保護および購入可能な医療法(patient protection and affordable care act)」(当地では後半3語の頭文字をとって,ACAと省略されることが多い)であるが,「974」という総ページ数が示すように,非常に大部の法律であり,その内容も多岐にわたっている。しかし,多岐に及んでいるとはいっても,「医療を国民にとって購入可能なものとする」こと,すなわち,「無保険者対策」が今回の医療制度改革法の最大眼目となっていることは,その正式名称が示す通りである。

 では,国民の6人に1人を占める無保険者をどうやって減らそうとしているのかというと,その対策は,(1)医療保険に加入しない国民に対して税制上の「ペナルティ」を課すことで国民に医療保険への加入を義務付ける,(2)各州に医療保険「交換所(exchange)」(州政府が保険会社と交渉,保険料・保険給付等について合意した保険商品を州民に提供する場)を創設し,医療保険の購入を促進する,(3)低所得者に対しては医療保険を購入できるよう公費で支援する,の3点に要約される。前々回も述べたように,今回の無保険者対策のプロトタイプとなったのは,2006年にマサチューセッツ州で実施された医療制度改革であるが,ともに,州民あるいは国民に対する「保険加入義務化」が無保険者対策の大前提となっている。

 さて,共和党が「オバマの医療制度改革法は憲法違反」とする違憲訴訟を全米各地で起こしていることは前回も書いた通りだが,違憲訴訟の原告となっているのは,フロリダ州やテキサス州など,共和党が知事や州議会で多数派を占める州の州政府が主であり,現在,全米の半数を超える州が原...

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