医学界新聞

連載

2011.09.12

「本物のホスピタリスト」をめざし米国で研鑽を積む筆者が,
その役割や実際の業務を紹介します。

REAL HOSPITALIST

[Vol.9] Case Closed パート2

石山貴章
(St. Mary's Health Center, Hospital Medicine Department/ホスピタリスト)


前回よりつづく

If you really enjoyed the Japanese “Manga” or “Anime”, I would greatly recommend “Case Closed”.
(もしホントに日本の「マンガ」や「アニメ」が好きなら,「名探偵コナン」を薦めるね。)

I will try it as soon as possible.
(すぐに試してみるわ。)

 ミステリ(探偵もの)が好きだ。中でも近年,「名探偵コナン」は大好物だ。恥ずかしい話だが,最近では自分の子どもたちと一緒になって,ここアメリカでもやっているアニメを見ている次第である。自分の頭脳をフルに活用して(たいした頭脳でもないのだが),その作者の挑戦を受けることに,無類の喜びを感じる。

 ホスピタリストの仕事,というより総合内科全般の仕事だろうが,鑑別診断を挙げていくことは,まさにこの喜びに通じる。私にとっては,趣味と実益の一致である。

 さて,今回のReal Hospitalistはインターミッション(間奏曲)第二弾,「Case Closedパート2」(Case Closedとは漫画「名探偵コナン」のアメリカでの翻訳版タイトルです。念のため)。今回は苦手なHIV症例である。医師を悩ますさまざまな病態が起こり得るHIV感染。さてさて,どんな謎解きが待っていることか。

 症例は25歳の男性。HIV感染の既往でARTs(抗レトロウイルス薬)を服用しているものの,恐らくコンプライアンスが悪いと見られ,入院前のCD4値はなんと5しかない。左腹痛のためER受診となった。身体所見を取ると,脾臓が明らかに肥大しており,CTで見るとなんと脾臓が骨盤内まで入り込んでいる。血液所見上,重度貧血と血小板減少のため,Splenic Sequestrationによる溶血性貧血を疑われICUへ。そこで私のもとに入院となった。

 見るからに興味深い症例ではある。こういう謎解き症例は通常ワクワクする。だがしかし,経験数が少ないと自覚するHIV症例である。若干の苦手意識を持ちながらも検討を開始した。

 あらためて血液検査結果を見ると,白血球数も軽度に減少しており汎血球減少症を認める。血算上Tear Drop Cellも見られる。これらに加え,前述の脾腫大,さらに軽い肝腫大から,HIV/AIDSに伴うリンパ腫やカポジ肉腫を疑う一方,ここで骨髄線維症等の骨髄性疾患の可能性を疑ってしまった。左腹痛は,脾腫大からの症状と判断した。冷静になれば,25歳の若い男性にこの鑑別診断を加えたこと自体,少々恥ずかしい。もう,ここか...

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