看取りパイロット――高齢者終末期医療(大蔵暢)
連載
2011.05.09
高齢者を包括的に診る
老年医学のエッセンス
【その5】
看取りパイロット――高齢者終末期医療
大蔵暢(医療法人社団愛和会 馬事公苑クリニック)
(前回よりつづく)
高齢化が急速に進む日本社会。慢性疾患や老年症候群が複雑に絡み合って虚弱化した高齢者の診療には,幅広い知識と臨床推論能力,患者や家族とのコミュニケーション能力,さらにはチーム医療におけるリーダーシップなど,医師としての総合力が求められます。不可逆的な「老衰」プロセスをたどる高齢者の身体を継続的・包括的に評価し,より楽しく充実した毎日を過ごせるようマネジメントする――そんな老年医学の魅力を,本連載でお伝えしていきます。
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高齢者終末期医療とは
今回は,高齢者の終末期(特に老衰自然死)を長い人生航行の終わりに見立てて終末期医療を議論する。高齢者は老衰を含めたさまざまな病気を患うことにより,いくつかのパターンで日常生活機能や可動性が低下し死に至る(BMJ. 2005 [PMID: 15860828])。いずれのパターンでも,医師には日々衰弱していく終末期患者のあらゆる症状をコントロールし,苦痛のない安らかな最期を提供することが求められている。長い航行をしてきた航空機の高度を平穏に低下させ,安全に軟着陸させる熟練パイロットの仕事に似たところがある。
また終末期医療には,いろいろな人がかかわるが,それらを「マネジメント」しながら,高齢患者と家族にとっての一大イベントを,幸福感あふれるものに演出するのも医師の役割である。ピーター・F・ドラッカー風に言えば,主に老人ホームで看取りを行う筆者にとって,第一の“顧客”は言うまでもなく高齢患者であるが,その家族や友人,そして老人ホームのスタッフも“顧客”として,それぞれ「幸福感」と「やりがい」を感じてもらうような終末期医療を提供することを心がけている。
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終末期への移行
高度虚弱患者には通常高度の認知身体機能障害があり,生活に多くの介護を必要とする。彼らはある時期になると食事量が低下してきて,この変化は終末期への移行を意味する(図)。家族やコメディカルスタッフとミーティングを行い,患者の状態を共有しケアのゴール...
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