医学界新聞

連載

2010.11.15

在宅医療モノ語り

第8話
語り手: まあるく視界をつくります 懐中電灯さん

鶴岡優子
(つるかめ診療所)


前回からつづく

在宅医療の現場にはいろいろな物語りが交錯している。患者を主人公に,同居家族や親戚,医療・介護スタッフ,近隣住民などが脇役となり,ザイタクは劇場になる。筆者もザイタク劇場の脇役のひとりであるが,往診鞄に特別な関心を持ち全国の医療機関を訪ね歩いている。往診鞄の中を覗き道具を見つめていると,道具(モノ)も何かを語っているようだ。今回の主役は「懐中電灯」さん。さあ,何と語っているのだろうか?


たまには腹を割ってみました
右側3本はマグライト社のもので,私は右端におります。左端はLEDペンライト君。たまには腹を割って話そうと電池を取り出してみました。単3電池2個と,単4電池1個では体重にも差が出ます。後ろは交換用電池とヘッドランプ。往診車のトランクで待機中ですが,出番はまだありません。
 映画『八つ墓村』って知っていますか? 実はアレ,私の親戚も出演しているんです。昔の話ですが,出演依頼がきたときはワルモノなので随分悩んだそうです。俳優さんが頭に親戚2本をさし,ものすごい形相で走ります。とても怖くて悲しい話ですが,当時の小学生は「八つ墓村の崇りじゃー」と真似をしていました。あれで家庭に普及したとは思いませんが,確かに一家に一本はある道具です。私は携帯用の照明器具,懐中電灯です。夜間や停電,災害のとき,洞窟探検のとき,暗闇の中に視界をつくる,基本的にはイイモノです。

 はい,医療用に開発された仲間もいます。その代表がペンライト君。人体の洞窟である口腔内などの観察に使用するのが一般的です。また,眼に当てて瞳孔の対光反射を診るときに使用されるのもこのライトで,眼に当ててもよい程度の光に抑えられているのが特徴ですね。白衣の胸ポケットに収まる大きさで軽いことも魅力です。そのほか,用途に合...

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