医・歯・薬・看護・PT・OTの合同学習(昭和大学)
寄稿
2010.10.04
すべての年次で継続的に教育
医・歯・薬・看護・PT・OTの合同学習
昭和大学
昭和大を取材したのは5日間からなる「学部連携病棟実習」の4-5日目。この実習では,各学部から5年生(保健医療学部は4年生)が1名ずつ参加して5-7名で1グループをつくり,一人の患者を担当する。実習中は,できるだけグループで行動し,他学科の学生が患者とかかわる際に駆使する知識や技術を学び,チーム医療を理解することをめざす。ここでは,70代女性のパーキンソン病患者を担当したグループ(メンバーは医・歯・薬・看護・作業療法の学生各1名)が5日目に行った振り返りのミーティングに沿って,実習で学生たちはどのような場面に出合い,何を学んだのか,紹介する。
患者とのかかわりに各職種の個性が現れる
振り返りではまず,医学生から担当患者の身体的所見や検査値が報告され,MIBG心筋シンチグラフィの結果などからパーキンソン病と診断された過程が示された。続いて,看護学生から食事,排泄,コミュニケーション等をもとにしたADL評価の結果が,薬学生から痛みや不眠などの患者の状態に応じた服薬状況が示された。
続いて,実習中に集中的にアプローチした点に関する報告が行われた。
(1)振戦:右上下肢を中心に認め,緊張なども影響している様子だった。そこで,実習3日目に薬学部学生も服薬指導に参加してパーキンソン病治療薬の服用回数を増やしたところ,症状は改善された。
(2)首下がり:症状の増悪・寛解が1日のうちに繰り返されていたが,リハビリなどによって改善傾向を見いだすことができた。マッサージやストレッチで股関節・脊椎の伸展を促し,首下がりの改善に努めるなどリハビリによる治療を行った。
また,自宅では家事もこなすという患者のことを考え,家事に必要とされる握力の基準値10kgwを維持するためのトレーニングも行い,ADLの改善・維持を図った。
(3)多汗:実習初日の会話・リハビリ時に目立ち,学生グループも原因や対応について検討。2日目以降は改善していき,最終日にはほとんど認められなくなった。
(4)不眠:実習前に抗不安薬の服用を中断したことが一因と学生たちは考え,主治医への提案により催眠薬を就寝前に処方したことで改善された。
(5)不満・不安: 実習初日は「学生の実習に協力しなければよかった」と思っていたようだが,実習が進むにつれて,次第に学生たちに悩みを打ち明けるようになった。「月に一度通っている保健所で,同じパーキンソン病の人の症状が進んでいくのをみてきた。自分もそうなるのか」「薬の量が増えてきている」など,さまざまな不安を口にしていたが,学生グループの丁寧な説明もあり,不安もほとんど緩和した。
(6)口腔ケア:歯磨きのサポートや口腔内診査を実施。口腔内診査では,パーキンソン病の入院患者の口腔内としては比較的清潔だが,ケアを怠ると誤嚥性肺炎になる恐れがあると判断。また,就寝時も入れたままの一本義歯は誤飲も懸念され,これらの点への介入が指導をする歯科医師と医学生を中心に検討された。しかし,患者は歯科治療が苦手であったため,徐々に介入していくこととし,まず義歯洗浄を実施した。これにより,患者は清涼感を感じ,口腔ケアに前向きな姿勢を示すようになった。
この「チーム」の個性と職種連携の軌跡を,これらの6項目の中にみることができた。病態と症状の把握では医学生が,薬の処方支援と服薬指導では薬学生が,リハビリや退院後の生活支援では作業療法学生が,患者の心理面の理解や声かけでは看護学生が,口腔ケアでは歯学生が,それぞれ積極的に行動し,患者のケアに努めていた。実習生の感想を別欄にて紹介する。
「学部を超えて」教育理念に込めた思いを形に
昭和大のIPEプログラム確立の原点は,「昭和大学の教育理念」に謳われている「学部の枠を越えてともに学び,互いに理解し合え,協力できる人材を育成する」という言葉だ。
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トライアルに協力する学生の大半は自主的な参加だという。学生と教職員が力を出し合うことにより,カリキュラムの整備が着々と進んでいる。
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