医学界新聞

連載

2010.05.10

ノエル先生と考える日本の医学教育

【第12回】 女性医師の問題・4(終)

ゴードン・ノエル(オレゴン健康科学大学 内科教授)
大滝純司(東京医科大学 医学教育学講座教授)
松村真司(松村医院院長)


本連載の執筆陣がご意見・ご質問に答えます!!


2874号よりつづく

 わが国の医学教育は大きな転換期を迎えています。医療安全への関心が高まり,プライマリ・ケアを主体とした教育に注目が集まる一方で,よりよい医療に向けて試行錯誤が続いている状況です。

 本連載では,各国の医学教育に造詣が深く,また日本の医学教育のさまざまな問題について関心を持たれているゴードン・ノエル先生と,医師の偏在の問題や,専門医教育制度といったマクロの問題から,問題ある学習者への対応方法,効果的なフィードバックの方法などのミクロの問題まで,医学教育にまつわるさまざまな問題を取り上げていきたいと思います。

 今回も引き続き,オレゴン健康科学大学のレベッカ・ハリソン先生とともに,米国と日本の女性医師の役割や生活について比較検討します。


ノエル ハリソン先生,前回は医学生のとき,もしくは研修中に出産した女性医師がどのように仕事と家庭を両立しているかを伺いましたが,今回はその具体的な“やりくり”の方法についてお聞かせください。

仕事と家庭の両立をめざして

ハリソン 仕事と家庭の両立のために米国で行われている施策を表に示しました。今や米国では,研修病院やメディカルスクールだけでなく診療所までもが,出産後や養子を迎えた後の医師たちが子どもと一緒に過ごす時間を持てるように,産休や育児休暇制度を整備しています。実際には,女性は90日間,男性は2週間の育児休暇を取得することが多いようです(90日まで取得する男性医師もいます)。その間に家族に病人が出た場合は,「Family and Medical Leave Act」(家族介護休暇法)により休暇を延長することもできます。

 米国における育児方針,家庭と仕事の両立の現状

多くの米国の組織で導入されている標準的労務管理施策
1)女性の労働者が出産または養子を迎えた場合は,90日間の育児休暇を付与する
2)男性の労働者に子どもが生まれた場合や養子を迎えた場合は,2週間の育児休暇を付与する
3)連邦法「Family and Medical Leave Act」(家族介護休暇法)に基づき,被雇用者に対して,病気の家族の介護や医療のための休暇期間の延長を許可する

病院・診療所,家庭における育児支援策
1)病院や医学部併設の託児施設
2)人的支援を雇う(ヘルパー,ベビーシッター,24時間住み込みヘルパー)
3)配偶者との育児の平等な分担
4)どちらか一方の配偶者が家にとどまる
5)両親や親戚の支援
6)学童保育,延長保育など,教育機関による育児支援プログラム
7)掃除,洗濯,買い物などを外注する「アウトソーシング」

勤務形態の調整
1)勤務時間の短縮,あるいはパートタイムで働く
2)フレックスタイム制や在宅勤務

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