MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内
2010.04.12
MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内


一條 貞雄,高橋 系一 著
《評 者》越野 好文(金沢大名誉教授/粟津神経サナトリウム特別名誉顧問)
豊富な脳波図を通して脳波の判読力を養う
1998年に,一條貞雄先生は臨床の現場で出合う脳波がどのような意味を持つのか,それをどう解釈するのかに重点を置いて書かれた『脳波判読に関する101章』を私たちに届けてくださった。長年にわたる臨床脳波判読のご経験から生まれた,臨床にすぐに役に立つ,実にわかりやすい書籍であったが,このたび11年ぶりに改訂された。手にとってまず気がついたことは,初版も読みやすい本ではあったが,第2版は文字サイズの工夫と色刷りの活用で,さらに一段と見やすくなったことである。これまで脳波になじみのなかった人も興味をそそられることであろう。
本書では脳波判読の基礎から臨床までが,豊富な,そして貴重な脳波図によって具体的に示されている。読者は脳波に親しみを覚えるに違いない。内容としては,脳波判読に関する解剖・神経生理,脳波の記録方法・賦活法・アーチファクト,正常・異常な脳波波形,小児・思春期および老年期の脳波,てんかんと関連した疾患および意識障害など各種疾患の脳波,薬物による脳波,睡眠脳波,さらに誘発電位・脳電位分布と脳磁図が取り上げられている。第2版では,新しい脳波図も加わり,さらに充実した。
臨床脳波は実用の面からは完成の域にあると思えるが,それでも10年の間に関連領域において,いくつかの動きがあった。2001年,2006年にてんかん発作型の新しい国際分類が提案された。本書では,てんかん発作型,およびてんかん症候群の分類が紹介され,それに伴い「てんかんと脳波所見」の章の構成が変更された。また2007年,アメリカ睡眠学会から新しい「睡眠ポリグラフィの記録手技と,睡眠段階判定基準」が提唱されたことから,睡眠ダイアグラムに関する記述も増えた。
1999年に変更・追加された国際臨床神経生理学会の「脳波用語・解説」(日本語版)が新しく巻末に追加された。Brain wave,Build up,Evoked response,Phantom spike-and-waveなど,従来普通に使用されていた用語のうちかなりの数のものが,現在では使わないほうがよい(use discouraged)とされた。国際的に共通の用語を用いることは研究の基本であるが,これらの用語になじんでいた者には時代の変化を感じる。
脳の形態的検査である画像診断と機能検査である脳波は,互いに補い合ってこそ,臨床的な威力を発揮できる。脳波は苦手だと感じている人が少なくないのではないかと思うが,脳波の判読は,基本を学べば決して難しいものではない。ここに脳波の判読力養成に的を絞った本書の出番がある。研修医,および精神科・神経内科・脳神経外科・小児科・総合診療科の専門医をめざす医師には,まず,本書を通読し,脳波に興味を持ってもらいたい。またすでに脳波判読に従事している先生には知識の整理に役立ち,臨床で必要になった場合にその都度関係した章を精読することで,脳波判読力に磨きがかかることが期待できる。
B5・頁248 定価5,250円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-00981-2


相馬 一亥 監修 上條 吉人 執筆
《評 者》森脇 龍太郎(千葉労災病院救急・集中治療部)
現時点での急性中毒学のバイブル
上條吉人先生は,わが国で最も先進的な急性中毒の診療および研究を行っておられ,また学会などでもオピニオンリーダーとして華々しく活躍されている。臨床中毒学を専門とする者で,先生の名前を知らない者はいないと言っても過言ではなく,間違いなく今後の日本の臨床中毒学を背負って立つ人材の一人である。
数年前,同じ医学書院から出版された先生の著書『急性中毒診療ハンドブック』は,簡潔明瞭にエッセンスがまとめられていて,またおのおのの中毒のメカニズムについても強調されており,さらには今まで業界には存在していなかったメモニクスによる記憶法なども編み出され,大変ユニークで親しみやすい内容であった。今回,その精神を踏襲しながら膨大な加筆をたった一人で行い完成させたものが,この『臨床中毒学』と思われる。本の体裁がハードカバーで,今までの先生の著書と違っていかにもいかめしい印象を受けたが,内容を拝見すると,臨床医にもわかりやすい明瞭な解説・図表が数々あり,結局のところ今までのアプローチとまったく同じであることに安心した次第である。
先生は現在,中毒学を中心とする救急医学を専門とされているが,医師になって数年間は精神医学を履修され,また医学部入学前には化学を専攻されていたと聞く。しかもしっかりとその大学を卒業されているのである。
本書の構成は,定番どおり「総論」「各論」の構成であるが,「総論」では,「全身管理」「吸収...
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