医学界新聞

寄稿

2010.02.15

【視点】

日本製薬医学会による「臨床研究に関する提言」

今村恭子(日本製薬医学会理事長)


わが国の臨床研究の現状と課題

 治験の空洞化対策として厚労省・文科省が全国治験活性化計画を策定し,継続的に体制を強化した結果,全国の主要医療機関では,依然いくつかの問題を抱えてはいるものの,治験体制のかなりの充実がみられてきた。一方で,治験の基盤である臨床研究に対しては,その充実が叫ばれながらもなかなか国家的な支援が得られていない。

 わが国の臨床研究に対する評価は,国際的な論文発表ランキングでいえば18位まで転落し,中国の後塵を拝している。しかし本来,臨床研究とは新薬の治験では得られなかったエビデンスを補完し,日々の診療での活用を通して医療の質を向上するために必要不可欠な活動のはずである。また,製薬企業が開発に着手しない分野の治療法に対しては医師主導治験という選択肢も生まれてはいるが,薬事法で高度に規制された治験の実施など,多忙な医師には到底無理であり,せっかくの制度も活用されにくい状況である。

 この背景には,臨床研究に携わる人材や組織(医学部での教育不足,院内支援体制の不備,公的研究資金の不足,民間資金における利益相反),プロセス(研究資金受入体制の不備,多様な臨床研究計画に対するIRBの審査能力不足,承認した研究の進捗管理能力不足),戦略(成果の活用方針の不透明性,戦略性のない研究の乱立)など,改善を要する...

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