医学界新聞

連載

2010.02.01

医長のためのビジネス塾

〔第12回〕論理的思考(4)統合・収束して考える

井村 洋(飯塚病院総合診療科部長)


前回からつづく

 論理的思考として,前回は分解・分析して考える方法を紹介しました。今回はその逆で,統合・収束して考える方法を紹介します。その考え方を実践するために利用する代表的なツールが,ピラミッド・ストラクチャーです。伝えたいことや種々の情報を整理整頓し,わかりやすく説得力のある主張を行うためのツールとしては,最適なものです。

ピラミッド・ストラクチャーの構造

 ピラミッド・ストラクチャーの構造
 ピラミッド・ストラクチャーの構造は,本連載第9回で紹介した論理的思考の基本ユニットの集積です(図)。前回紹介したイシュー・ツリーを記憶している方にとっては,あれを90度回転して縦に置き換えただけのように見えるかもしれません。形だけで判断すれば,その通りです。

 しかし,意味するところは全く異なっています。なぜならば,思考の方向が異なるのです。分解・分析するためのイシュー・ツリーは,最初に解決すべき問題を掲げて,だんだんと分解していく構造になっていました。対して,このピラミッド・ストラクチャーは,思考が全く逆の方向に流れています。底辺の情報や事実から始まり,階層を下から上へと積み上げながらまとめていくスタイルです。

 この「下から上」という論理の方向が,ピラミッド・ストラクチャーの大きなポイントなのです。情報や事実を基にして作られる下層のメッセージをひとつ上の階層に明示し,その階層のメッセージを束ねてまたひとつ上のメッセージとして明示し,最終的に頂点のメッセージに帰結していくという構造です。いかにも論理のピラミッドという感じがします。

メインメッセージ
 下層から積み上げた論理のピラミッドの頂点に収まるのが,メインメッセージです。何らかの回答すべき論点があり,それに応える形でメインメッセージが存在することになります。ですから,回答すべき論点は,常に疑問文でなければいけません。例えば,「○○科外来の待ち時間の短縮のためには,どのような対策が望ましいか?」という具合です。それに応えるメインメッセージは,きっぱりと言い切る文章にしておく必要があります。「○○科外来の待ち時間短縮のためには,紹介・予約患者だけに受診制限するべきである!」などです。

メインメッセージを支えるキーメッセージ
 メインメッセージを,一段下層で支えるのがキーメッセージです。キーメッセージの数に決まりはありませんが,一般的に3-5個のことが多いようです。この上下2つの階層間の関係は重要です。キーメッセージを統合することによって,メインメッセージに収束しておく必要があります。つまり,キーメッセージを複数提示した後に「それをまとめると,どういうことが言えるの? 要するにどういうこと?」と問われれば,メインメッセージの主張内容にすんなりとつながっている必要があるのです。

 反対にメインメッセージに対して,「どう...

この記事はログインすると全文を読むことができます。
医学書院IDをお持ちでない方は医学書院IDを取得(無料)ください。

開く

医学書院IDの登録設定により、
更新通知をメールで受け取れます。

医学界新聞公式SNS

  • Facebook