職員共有編(1)右上肢処置禁止 左上肢処置禁止(横井郁子)
連載
2009.11.23
【Pictogram】
いのちを見守るコミュニケーションデザイン――医療看護支援ピクトグラム
■職員共有編(1)
右上肢処置禁止
左上肢処置禁止
横井郁子(東邦大学医学部看護学科教授)
(前回よりつづく)
看護師さん,僕の血圧は“左で”,ですよ。
ごめんなさい! 向かいの大野さんが右ですね。
今回のピクトグラム(以下,ピクト)は血液透析のために上肢にシャントを作成している方を想定したものです。「血圧測定や採血をシャント肢で行わないように」というメッセージを示しています。
私たちのピクト作成の条件は,日常生活支援情報であること,病名や病状が推測されないということでした。今回の情報をピクトにするかは最後まで悩みました。これは生活支援情報だろうか,職員が共有すればよい情報をピクトにしてよいのか。
私たちは改めて病院での生活というものを考えました。病院では異常の早期発見のために随時,体温,脈拍,血圧といったバイタルサインを測定し,さらに採血などをして身体の微妙な変化を見逃さないようにしています。病院での生活支援は常にそのような変化の予測を前提としています。したがって,異常の初期情報のとりやすさは迅速で円滑な生活支援につながるのではないだろうか。これが「職員共有」で挙げた情報をピクトにした大きな理由です。
はじめて担当となった看護師から「血圧測定は左腕で行いますね」とシャント肢を意識した対応をされただけで「この人は信頼できる」と思う患者さんは少なくないようです。看護師がベッドサイドに立つときにはそれなりの準備があって当然です。しかし,一人の看護師がすべての患者さんの情報を完全に記憶できるものではありません。信頼のコミュニケーションが生まれる橋渡しをデザインの力でできないものか。これは「いのちを見守るコミュニケーションデザイン」に託されたテーマの一つでもあります。
「いのちを見守るコミュニケーションデザイン」が2009グッドデザイン賞を受賞しました。
http://www.g-mark.org/award/detail.html?id=35990 ベッドまわりのサインづくり研究会(横井) 医療看護支援ピクトグラム |
(つづく)
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