医学界新聞

連載

2009.11.09

研修病院見学ルポ
~いい病院のええとこ取りをめざして~

【第7回】聖隷浜松病院

水野 篤(聖路加国際病院 内科)


前回からつづく

特色

救急と総合診療内科では,研修1年目からある程度の責任を持ち,(主治医として)担当の患者を受け持つ。
研修センター専任の看護師の方がおり,院内各所とのパイプ役となっている。
海外の臨床研修病院へ短期留学するチャンスがある。
充実した研修センターがあり,研修医の意見が反映されQOLを保てる環境。

Profile
病床数:744床
救急車受け入れ台数:5116台(2008年度)
救急受け入れ人数:2万2081人(2008年度)

Opening
 集合時間を設定していなかったが,7時30分に病院に到着。受付の方に研修センターに案内してもらった。研修センターにはまだ誰もいなかったので,すぐそばにある研修医室で待つこととし,たまたま居合わせた2年目研修医と談笑した(最初,どうやら学生と勘違いされてしまったようで,逆に気をつかわせてしまった。若干挙動不審であったか……)。その後,8時に研修センター専任の看護師の方が来られ,研修センターに移動した。

朝のカンファレンス-回診
 まず,研修センターの看護師の方から簡単な説明をしていただいた。総合診療内科のカンファレンスがすでに開催されているとのことでカンファレンス室に移動したが,残念ながら終了していた。そこで,そのまま総合診療内科の回診に同行することにした。  回診は,基本的に2チームで行うとのこと。5-7年目医師が指導医となりチームをまとめ,総合診療内科の研修医が主治医として実務を行う形だ。見学日は総合診療内科の渡邊卓哉部長が回診に同行していたが,普段は直接関与することはないという。7人の患者を滞りなく回診したが,ベッドサイドティーチングよりも病棟での実務がメインであった。後で研修医に話を聞いたが,ベッドサイドでの身体所見の取り方は主に独学で勉強しているとのこと。指導医にも同様の質問をしてみると,以前はOSCE(客観的臨床能力試験)のようなカンファレンスも週1回実施していたが,研修医の負担が大きく現在は休止しているという。OSCEの内容は,研修医が実際に診た症例の患者役となり他の研修医が病歴聴取を行っていくものということで,勉強になる形ではあったが,開催するほうも大変だったようである。どこの病院でもベッドサイドでの教育は苦労していることがうかがえる。

研修センター
 回診終了後,研修センター長の清水貴子先生にお会いしいろいろな話を聞いた。話題は,研修の話から医療倫理や政治的な話まで,興味深い話が多かった。研修センターは事務職員と看護師,医師から成るチームであり,親切な方ばかりで雰囲気がよい。今回,臨床研修病院を見学するなかで,研修センターにあたる部署が最初に見学者の対応をしてくれる病院は多くはないと感じたが,システムとしてはそのほうが見学する側ももちろん安心だろう。医学生・研修医にとっては,研修のことやプライベートのことなども相談できるので,充実した見学になると考えられる。実際,筆者が勤務する聖路加国際病院でもそのような形で見学を受け付けている。

研修システム
 聖隷浜松病院では,1996年に内科から専門診療科が分科し,その時に総合診療内科が設立されたとのこと。研修システムとしては,研修医は1年目と2年目で必ず総合診療内科,ERをローテーションするが,この時には研修医が主治医として診察を行う。また,研修センターの看護師が週1回患者さんのところに行き,「何か不都合はないか」などとヒアリングをするとのこと。そこで主治医が研修医であることも説明するらしい。なお,患者から苦情が出たことはないという。研修医のモチベーションが全員高いからなのか? 患者がよい人ばかりだからなのか? どちらにせよ,かなり積極的なサポートを実践しているようだ。

海外臨床研修病院への短期留学のチャンス
 今年度は3週間だけではあるが,3年目の後期研修医が米国の臨床研修病院に短期留学を行ったとのこと。今後もこのような制度を続けていく予定で,さらに米国以外の病院への派遣も視野に入っているという。海外での臨床研修を希望する研修医が多い昨今,短期留学制度があるのは研修病院として人気がある理由の1つだろう。

研修医室とアメニティ
 研修医室のデスクは各自に一台ずつ提供されるわけではなく,共有のものが部屋の中央に置かれている。当初,個人用のデスクを検討していたが,研修医みんなで集まれる場所を提供するという考えにのっとり,麻生飯塚病院を参考に医局内に大きな机を一台置くことに決めたという。確かに印象は似ていると感じた。パソコンは十分に用意され,研修医室のものはUpToDate®やMD consultにも接続されており,多くの電子ジャーナルを閲覧可能。勉強するには申し分ない環境だ。また,サーバーに共有フォルダがあり,どこでも教育スライドを見られるとのこと。このあたりの設備はさすがである。  そのほか,ICUや救急室,透析室や聖隷浜松病院の特徴であるPETセンターも見学した。本院では,病棟に多くの介護士が配置されており(各病棟に9人!!),チームとして働いているようだ。救急は,2次の輪番病院ということだが,救急室が特に広いわけではなかった。

多くの医師が集まる昼のカンファレンス
昼のカンファレンス
 いろいろ見学しているうちに昼となった。見学日は週1回開催される,薬剤説明とレクチャーを行うカンファレンスがあるとのことで参加。レクチャーは,放射線科が担当だった。4年目医師がさまざまな症例のCT,MRIをPowerpointで解説。かなり多くの聴衆がおり,プレゼンテーターにとってはやりがいがあるだろう。  その後は渡邊部長や1年目研修医から話を聞いた。研修医は研修内容におおむね満足しているという。また,研修医の受け持ち患者数などの調節には,指導医はかなり気を使っているとのことだった。総合診療内科の後期研修修了後のモデルとしては,より専門的な資格(感染症専門医など)の取得をめざすなど,いろいろなビジョンがあるようだ。研修の中心となる指導医の話を聞くことができ,満足な見学を行うことができた。

聖路加国際病院との共通点
 聖路加国際病院との共通点として,まず病院の雰囲気が明るいところが挙げられる。聖路加国際病院の教育研修部にあたる「研修センター」の雰囲気がよい部分も似ており,また研修にも後輩の教育にも役立つパソコン上の共有ファイル,というツールがあるところも共通点だ。

Point!
研修に力を入れた総合診療内科があり,アメニティもしっかりしている。また,研修センターも頼りになるため相談しやすいだろう。みんな仲よくやっている雰囲気が,よい病院という印象を感じさせた。

つづく

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