医学界新聞

連載

2009.11.09

レジデントのための
Evidence Based Clinical Practice

【11回】 高血圧へのアプローチ(前編)

谷口俊文
(ワシントン大学感染症フェロー)


前回よりつづく

 高血圧のマネジメントは外来,入院ともに重要です。世界中で最も研究されている分野のひとつで多くのエビデンスが蓄積されつつあります。まずは高血圧の患者を目の前にしたときの基本的なアプローチの仕方を学びましょう。合併症を伴う高血圧の治療とそのエビデンスは次回学ぶことにします。

■Case

 36歳男性。会社の健康診断でいつも高血圧を指摘されていたが,治療することはなかった。夜間に一過性のめまいのため救急外来を受診。異常が見つからず帰宅となったが,そのときに再び高血圧を指摘されたため,後日総合内科を受診することにした。血圧186/95mmHg,脈拍数96/分,SpO298%で身体診察にて大きな所見は認められなかった。アムロジピンとバルサルタンが開始されるも,血圧の改善はみられない。

Clinical Discussion

 高血圧と診断されたばかりの患者に対して,どのような診察や検査をする必要があるだろうか。この患者は過去にも高血圧を指摘されていたことより,若年の高血圧である。また2剤による治療にも抵抗性がみられる。二次性高血圧のワークアップは必須だ。ここではそのアプローチや,ほかにどのような検査が必要なのか,また本態性高血圧であった場合にどのように血圧治療の戦略を立てればいいのかを学ぶ。

マネジメントの基本

外来における高血圧の診断
 基本的には収縮期血圧140mmHg以上,もしくは拡張期血圧90mmHg以上。2-4週間の間隔をあけて3回中2回以上この条件を満たしたら高血圧と診断する。そのほか,各血圧測定において1-2分の間隔をあけて2回測定などの細かな決まりはあるが,JSH2009(文献(1))を参照のこと。この時点で1)二次性高血圧のワークアップ,2)他の心血管疾患のリスク・アセスメント,3)高血圧による臓器障害の有無の検索などが始まる。結果次第では薬物療法のアプローチが異なるからである。

1)二次性高血圧のワークアップ
 以下の場合は積極的に二次性高血圧のスクリーニングを行うが,他の場合でも症例に応じて判断すべきである。

・25歳未満もしくは55歳以上の新規に高血圧と診断された患者
・薬剤抵抗性高血圧(3種類もしくはそれ以上の降圧薬を最大量使用してもコントロールできないとき)
・低カリウム血症
・動悸,頭痛,発汗を認めるとき
・重度の冠動脈疾患,頸動脈疾患,末梢血管疾患の合併
・心窩部の血管雑音
・橈骨-大腿動脈脈拍の遅延,特に肩甲間心雑音を認める場合

 二次性高血圧を来す代表的な疾患を下記にまとめておく。

・大動脈縮窄症
・クッシング症候群
・原発性アルドステロン症
・褐色細胞腫
・腎血管性高血圧
・腎実質性高血圧
・副甲状腺疾患
・甲状腺疾患
・睡眠時無呼吸症候群

2)心血管疾患のリスク・アセスメント
 高血圧,高齢(65歳以上),喫煙,肥満(JSH2009ではBMI≧25),脂質異常,糖尿病,微量アルブミン尿,若年(JSH2009では50歳未満)発症の心血管疾患の家族歴はすべて重要な心血管疾患のリスクである。これらは診察時にすべて調べておくべきである。

3)高血圧による臓器障害の有無の検索
 ターゲットを定めた

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