倉敷中央病院(水野篤)
連載
2009.07.06
研修病院見学ルポ
~いい病院のええとこ取りをめざして~
【第3回】倉敷中央病院
水野 篤(聖路加国際病院 内科)
(前回からつづく)
特色 全国トップレベルの高度な専門科での研修が主体。
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◆Opening
朝8時,今回見学のすべての手続きを行ってくれた,研修担当である総合診療科の福岡敏雄部長と救急外来で待ち合わせた。福岡先生は,筆者と同僚で名古屋大学出身の研修医の当時の恩師でもあり,そのうわさを以前より聞いてはいたものの,いざ緊張しながら待っていると関西弁のフランクな語り口であり,非常に安心した。
◆朝のカンファレンス
早速,救急外来の1室に入る。コンピューターを見ながら前日の日勤帯での救急外来患者について,救急研修中の2年目研修医の振り返りを行った。朝・夕と救急外来受診患者の振り返りを行っているとのことだが,これは昨年より開始したということ。ここでは,4-5人の研修医が電子カルテから興味深い症例を取り上げていた。新規発症の甲状腺機能亢進症や卵巣嚢腫茎捻転,心不全などcommon diseaseがずらっと取り上げられ,なかには原因不明の急性腹症など興味深い症例もあった。
パソコン環境は聖路加と類似したもので,全パソコンからDynamed,UpToDate,MD Consultを閲覧可能であった。さらに,いろいろな症例をまとめたPowerPointも,院内のどこからでもアクセスできるように中央化している。この点は前回の麻生飯塚病院と同様である。机,ロッカーも完備。アメニティはかなり充実している。研修環境は恵まれていると感じた。
◆さて,ICUに
約1時間半ほど振り返りを行った後,ERの見学をさせていただいた。ERの施設は非常にきれいな印象を持ったが,また改装を行いさらに動線をよくするということであった。同院はCCUなどが非常に広いことでも有名であり,設備もすばらしいものがある。引き続き10時よりICUの回診。ICUの患者は基本的には各科の主治医が治療の責任を負っているが,主治医がいない間のカテコラミン投与や呼吸器管理をICUの研修医(後期を含む)が相談しながら行うようである。回診はICUでは一般的な方法で,個々の患者に新たに現れたわずかな変化と今後の方針を報告するスタイル。また,たまたまではあるが筆者の大学時代の同期がICUにおり驚いた。偶然というものはまさにこんなものだろう。ここぞとばかりにいろいろと質問させてもらった。
彼は消化器内科2年目の後期研修医で,研修は各科で行っているとのこと。話を聞くと,やはりこれまでは教育カンファレンスや救急のreviewなどはなく,個々人の努力で研修を進めるという昔ながらの研修システムであったようだ。ほかの科の様子を聞くと,基本的なチームは3人制。1・2年目研修医+後期研修医(1-3年目)+スタッフということ。それぞれの科を実際に見学しているわけではないので詳細はわからないが,質問による事情聴取ではこのような状態とのこと。
研修医室:アメニティがよいと快適そうである。 各人に机・ロッカーが与えられる。 |
午後は病院全体を見学。CCUにはやはり度肝を抜かれた。CCU-S,CCU-Cに分かれており,それぞれが20床以上もある!! 透析室やその他の施設も見たが,やはり1000床規模の病院であるので,それぞれがかなり広い。ちなみに昼食は職員食堂を利用したが,クオリティは高く,安くて美味しい。しかも,最上階にあり爽快である。しつこいようであるがアメニティがよい。
◆その後-夕方のカンファ
ICUでは,SBT(Spontaneous Breathing Trial)やsedationをoffしての意識状態の確認といった一般的なICUの診察を見学させていただいた。筆者自身がICU好きなのであるが,かなりリベラルな雰囲気によい印象を持った。そして,夕方にはまたその日の救急で研修を行った1年目研修医の振り返りを行い,頭痛の鑑別など,いわゆる救急の初期対応を症例ごとに振り返っていた。総合診療科はこの4月からスタッフの人数が増えたとのこと。実際のプレゼンテーションの教育はまだ始まったばかりという状態ではあったが,スタッフが増えてこれからどうなるか非常に興味深い。
◆教育者という雰囲気
今回,総合診療科のみで他科の見学は行わなかったが,その分,先に述べた福岡先生としばらく話をさせていただいた。お話の中で一つ感銘した言葉があった。「ディスカッションはどうしてもお互いの非難になったりしてまうけど,重要なんはお互いの信頼や! 信頼というんは話し合って話し合って“こういう風ならあいつならこう考えるやろな”と考えてあげることや,それが信頼っていうことや」ということである。ディスカッションが信頼を生み,信頼がディスカッションおよび人間関係をよりよくしていく。このようにあればよいなぁと実感した。特に研修医や若い医師は知識量にバラツキがあるため,ディスカッションが苦手で,どうしても知識による非難に走りがちである。非難的なディスカッションが自分を優秀に見せる手段であるからなのかもしれないが,信頼しているという大前提がなければ本当に何も生み出せないし,建設的でなくなってしまう。
指導医の教育スタイルとしても非常に重要な観点である。まずはひとかけらの“信頼”を生み出す意識が必要かもしれない。深イイ話である。見学後,福岡先生と食事をさせていただき,そのときにも非常に感銘を受けた言葉がたくさんあったが,これはまた機会があればお話しすることにしよう。まだまだ未熟な一社会人として,視野が広がった1日であった。
最後にお決まりの聖路加国際病院との共通点としては,パソコンなどの環境の充実が挙げられる。どのパソコンからも調べたいリソースにたどり着けるということはかなりよい。筆者も聖路加国際病院にきてよかったと感じた部分の一つである。
Point! 専門科それぞれの専門性が非常に高い病院であることは間違いない。病床数も多く,研修は各人のやる気があれば,専門性の高いことが学べるであろう。それに加え,総合診療科の導入により初期研修のシステムが少しずつ変わり始めていることがポイントであろう!! |
(つづく)
この記事の連載
研修病院見学ルポ(終了)
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