MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内
2009.05.25
MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内


ローレンス・ティアニー,松村 正巳 著
《評 者》堀 成美(聖路加看護大・看護教育学)
看護職がティアニー先生の診断アプローチから学べること
ティアニー先生はよく「鑑別診断の神様」と評されるが,残念なことに世の中の人皆が神様に診断してもらえるわけではない。このため教えを理解して実践したり広めたりする人が必要である。しかし,症例検討会のヒントに「それはハリソン(註)に載っているかどうかだけ教えてくれ」という恐ろしいコメントをする神様の経験知は,ただ話を聞いただけでは共有が難しく,入門者に伝えるのはさらに大変なことである。初学者は何がわからないのか,何がつらいのか,何から学んだらいいのかをよく知り,「なんとかしてやろう」という愛なくしては立ち行かない作業である。これは医学・医療にかぎったことではない。
長年地域でよい医師を育てようと心血を注いできた松村正巳先生ならではの愛情や熱意のおかげで,他の地域にいても本書を通じて神様の経験知を共有することが可能になった。予想に反し,ページの構成は実にシンプルで,選ばれたコメントには無駄がない。
本書は研修医向けではあるが,患者からの聞き取りを重視するティアニー先生のアプローチは,実は医師よりも長い時間患者と接することのできる看護職にこそ有用であるとも思う。
看護職は,経験的に感じ,得られる情報をたくさん持っているが,根拠に基づいた説明や,体系的に整理することに課題を抱えている。本書の1部には改善のヒントがたくさんある。
また2部では,1症例1症例が与えてくれる学びの豊かさと,整理の仕方,フォーカスによってより早く適切な治療やケアに結びつくということを学べる。それは患者や家族の苦痛や心配を軽減することにもつながる。
共に働く医師はどのように診断アプローチを学ぶのか。今何を考え実践しているのか。その理解と支援を通じ,よりよい看護の実践につなげていただければと思う。
編集室註:2754ページからなる世界で最も有名な内科学の教科書。
A5・頁152 定価3,150円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-00698-9


黒田 裕子 編
《評 者》川嶋 みどり(日赤看護大教授/学部長)
膨大な成人看護学の要点を1冊に
成人看護学の領域は極めて広範で,これまでの教科書のほとんどは分冊されているのが常であった。本書は,従来の教科書とは異なるコンセプトのもとに,膨大な成人看護学の要点を1冊にまとめて出版された点が評価される。そのためもあって,ユニークな工夫を随所に見ることができる。すなわち対象の健康問題を疾患ごとに分類せず,成人期にある人々の生活を大切にするという意味を込めて,何らかの機能障害を持つ人,生活変容を余儀なくされている人と捉え,それぞれどのような看護援助が必要かを理解するとともに,健康のレベルアップへのまなざしも忘れない。
総論では,8章に分けて成人期にある人の心身面,社会生活面の特徴と健康問題の概要,ならびに健康の維持・増進への看護援助などを総合的な視点から概説されている。患者を疾病別に捉えないとはいえ,総論に「がん」を独立して取り上げているように,従来の体系にあまりこだわらずに,必要な知識を展開している点も本書の特徴である。すなわち,「ヘルスプロモーション,急性(手術を含む)・慢性・回復の視点,そして,がん,感染の視点を土台として」組み立てられている。成人看護実践に役立つテキスト編集に対して最も苦労されたのが,この構成であったと思われる。
各論では,成人期の健康問題を“栄養”“排泄”“酸素化”“活動/休息”“知覚/認知”“安全/防御”“セクシュアリティ”の7つの柱により展開している。「機能障害を細分化せず,成人看護学領域で押さえておかなければならない主要な解剖学的,病理学的内容はすべて網羅した」とあり,各章ごとにその基礎知識が,続いて観察とアセスメントと主な看護が述べられている。本文を補強する表が随時挿入されるほか,ビジュアルな工夫もされていて,学生が知識を整理する上では役立つと思う。
ただ,臨床実習では,医学的診断による病名や,その疑いのある患者を受け持つことになる。その際,人間の生命維持の要件とも言える基本的ニーズを柱にした「~に健康問題を持つ人のアセスメントと看護」として展開される各論内容を,具体的な個別の患者の看護場面にどのように活かすのか,また,ある疾患を持った患者それぞれに,この健康問題のなかの幾つかの組み合わせが存在することも予測される。看護学の視点から構築されている健康問題と,医学領域における個々の疾患とをどのように統合して理解を深めるかは,看護学教育全体の課題でもある。
成人看護学の授業は実習における指導者の力量がいっそう問われることは申すまでもないだろう。具体的な看護に関する部分の記述が,基礎的な知識に対してやや弱い感もあるが,学生自身に考えさせて発展させる方法もあるかもしれない。ともあれ,基礎教育の場でぜひ活用していただきたい。
B5・頁512 定価6,090円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-00759-7


アセスメントからはじまる高齢者ケア
生活支援のための6領域ガイド
六角 僚子 著
《評 者》唐澤 千登勢(日看協看護研修学校専任教員・認知症高齢者看護学)
高齢者へのケアを変える,アセスメントの6領域を説く
「高齢者に対するケアをどのようにして合理的に実施するか?」という課題は,看護にかかわるすべてのスタッフにとって基本的かつ重要な課題である。特に教育に携わり,これから実社会での看護スキルを学ぼうとしている学生たちに対し,より少ない困難で方法論を教える立場の教育者にとって,臨床実践の視点に立ったガイド教育の類は非常に少ないのが現状である。
本書の著者はまず,極めて重要な問題提起を行っている。それは,「学生たちは,高齢者に対する温かいまなざしを向ける一方で,“高齢者特有の穏やかでゆったりと時間が流れる空間”に巻き込まれてしまい,高齢者ケアをしていくための視点が定まらないようだ」との指摘である。そして「高齢者への視点を明確に示すことでケアが変わっていく」「その視点を明確に設定し,その人に適したケアを実践するスタートとして,まずアセスメントが必要である」との結論を明示している。その結論の明示が,その後に展開される「アセスメント各論」の内容を,読者により理解しやすいものにしている。
アセスメント各論において,著者はアセスメントの6領域(健康領域,安全領域,自立支援領域,安心領域,個別性領域,支援体制領域)のおのおのについて,アセスメントシートを活用しつつ実践的な視点を解説している。アセスメントの上記6領域は,高齢者介護研究会報告書「2015年の高齢者介護」で掲げられた5つの考え方に準拠したものである。著者はその豊富な看護実践および教育・研究に基づき,6領域のより有効な活用方法を提言している。すなわち,各領域のアセスメント結果を統合することにより,より全人的な課題抽出とケア実践が可能となる。“各領域のアセスメントシートから統合シートの作成”のプロセスを通じて,ケアプラン作成・実践の具体的な重要ポイントを深く認識し,習得することができるであろう。
実際のケア場面で,収集した情報をどのように整理・統合して適切に解釈し,高齢者に対する効果的なケアプランが作成・実践されていくべきなのか? そのプロセスを本書に示されたガイドラインに従い,生き生きとした形で身につけていくことができるであろう。
さらに高齢者の“ターミナルケア”という,これからの社会が抱える重要かつ結論が困難な問題についても果敢に言及している。「高齢者が自己決定に基づいて人生最期の舞台をどのように演じるのか」についての解釈は,人生経験に乏しい学生たちにとって困難であろうことは容易に推測できる。しかしながら,医療看護に携わる職業人...
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