成人看護学

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看護学の中でも領域の広い成人看護学を1冊にまとめた教科書。総論では成人期の人々を理解するうえで必要な概念や急性期・慢性期・周手術期での看護問題の捉え方を解説。各論は単なる機能障害別ではなく、「栄養」「排泄」「酸素化」「活動/休息」「知覚/認知」「安全/防御」「セクシュアリティ」という7つの視点からみた健康問題をもつ人の理解と看護を解説。膨大な成人看護学の内容や鍵となる要点がビジュアルに理解できるよう工夫されている。
編集 黒田 裕子
発行 2009年01月判型:B5頁:512
ISBN 978-4-260-00759-7
定価 6,380円 (本体5,800円+税)
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 本書は『成人看護学』の教科書である。『成人看護学』は看護学の中でも領域としてきわめて大きいため,『成人看護学』として1冊にまとまっている教科書は過去に出版されていない。本書は,これをオリジナルな視点から1冊に網羅することを意図して編集したものである。最新の国家試験基準も視野に入れ,この領域で必須となる内容に絞り込んである。
 本書が大切にしていることは,看護の対象者は人間であること,成人期にある人々の生活を中心とすること,健康問題を疾患ではなく,機能障害をもつ人として捉えることである。疾患の看護ではなく,機能が障害され,生活変容を余儀なくされた人々をどのように看護援助していくのかということに焦点を当てている。また,予防的な観点から健康の維持や増進を目指すための看護,成人期にある人々の理解に繋がる看護も視野に入れた。
 本書は,「総論」と「各論」の大きく2部から構成されている。
 「総論」は,成人期にある人々の理解,成人期に特徴的な健康問題の理解,健康の維持・増進の看護援助,急激な身体侵襲時の看護,周手術時の看護,慢性期・回復期の看護,がん看護,感染看護の8つを柱とした。ヘルスプロモーションの視点,急性
(手術を含む)・慢性・回復の視点,そして,がん,感染の視点を土台として組み立て,成人看護領域で見逃すことができない焦点をこの8つの視点から捉えられるように意図して構成した。また,「総論」においては,鍵となる概念や理論を理解すること,概念や理論の基礎的理解と関連づけたうえで実践的な視点で看護援助を具体的に理解することをねらいとした。
 「各論」は,“栄養”に健康問題をもつ人のアセスメントと看護,“排泄”に健康問題をもつ人のアセスメントと看護,“酸素化”に健康問題をもつ人のアセスメントと看護,“活動/休息”に健康問題をもつ人のアセスメントと看護,“知覚/認知”に健康問題をもつ人のアセスメントと看護,“安全/防御”に健康問題をもつ人のアセスメントと看護,“セクシュアリティ”に健康問題をもつ人のアセスメントと看護,の7つを柱とした。機能障害を細分化せず,この7つの視点から成人看護学領域で押さえておかなくてはならない主要な解剖学的,病態生理的な内容はすべて網羅している。そのうえでポイントとなる看護援助が具体的に理解できるように解説した。
 本書は,膨大な『成人看護学』の内容や鍵となる要点がビジュアルに理解できるように,随所に,図表・見出しの工夫を施し,読者がやさしく学習することを目指した。
 本書の企画は5‐6年前に遡る。いろいろな状況を乗り越えてここに至っている。ここまでたどり着くことができたのは,医学書院常務取締役・七尾清氏の着実で時には厳しく,また真摯な教科書編集へ挑む熱意と忍耐のおかげである。この場を借りて執筆者を代表して心より感謝の意を表したい。
 本書は教科書として使用していただけるように執筆者一同努力してきた。しかしながら,適切とは言えない部分があったとすれば,それはすべて執筆者が責を負うものである。本書を,さらにより良いものにするためにも読者諸氏のご助言・ご指導を期待したい。

 2008年11月  黒田 裕子

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 序
 目次

総論
 第1章 成人期にある人々の特長
 第2章 成人期に特徴的な健康問題の理解
 第3章 健康の維持・増進の看護援助
 第4章 急激な身体侵襲時の看護
 第5章 周手術期の看護
 第6章 慢性期・回復期の看護
 第7章 がん看護
 第8章 感染看護

各論
 第9章 “栄養”に健康問題をもつ人のアセスメントと看護
  第1節 摂取
  第2節 消化・吸収
  第3節 代謝
  第4節 水化
 第10章 “排泄”に健康問題をもつ人のアセスメントと看護
  第1節 排尿
  第2節 排便
 第11章 “酸素化”に健康問題をもつ人のアセスメントと看護
  第1節 酸素化
 第12章 “活動/休息”に健康問題をもつ人のアセスメントと看護
  第1節 運動/活動
  第2節 循環反応
 第13章 “知覚/認知”に健康問題をもつ人のアセスメントと看護
  第1節 感覚
  第2節 認知・コミュニケーション
 第14章 “安全/防御”に健康問題をもつ人のアセスメントと看護
  第1節 内分泌
  第2節 体温調節
  第3節 防御機構
 第15章に健康問題をもつ人のアセスメントと看護
  第1節 性的機能
  第2節 乳がん

 索引

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膨大な成人看護学の要点を1冊に
書評者: 川嶋 みどり (日赤看大教授/学部長)
 成人看護学の領域は極めて広範で,これまでの教科書のほとんどは分冊されているのが常であった。本書は,従来の教科書とは異なるコンセプトのもとに,膨大な成人看護学の要点を1冊にまとめて出版された点が評価される。そのためもあって,ユニークな工夫を随所に見ることができる。すなわち対象の健康問題を疾患ごとに分類せず,成人期にある人々の生活を大切にするという意味を込めて,何らかの機能障害を持つ人,生活変容を余儀なくしている人と捉え,それぞれどのような看護援助が必要かを理解するとともに,健康のレベルアップへのまなざしも忘れない。

 総論では,8章に分けて成人期にある人の心身面,社会生活面の特徴と健康問題の概要,ならびに健康の維持・増進への看護援助などを総合的な視点から概説されている。患者を疾病別に捉えないとはいえ,総論に「がん」を独立して取り上げているように,従来の体系に余りこだわらずに,必要な知識を展開している点も本書の特徴である。すなわち,「ヘルスプロモーション,急性(手術を含む)・慢性・回復の視点,そして,がん,感染の視点を土台として」組み立てられている。成人看護実践に役立つテキスト編集に対して最も苦労されたのが,この構成であったと思われる。

 各論では,成人期の健康問題を “栄養” “排泄” “酸素化” “活動/休息” “知覚/認知” “安全/防御” “セクシュアリティ” の7つの柱により展開している。「機能障害を細分化せず,成人看護学領域で押さえておかなければならない主要な解剖学的,病理学的内容はすべて網羅した」とあり,各章ごとにその基礎知識が,続いて観察とアセスメントと主な看護について述べられている。本文を補強する表が随時挿入されるほか,ビジュアルな工夫もされていて,学生が知識を整理する上では役立つと思う。

 ただ,臨床実習では,医学的診断による病名や,その疑いのある患者を受け持つことになる。その際,人間の生命維持の要件とも言える基本的ニーズを柱にした「~に健康問題をもつ人のアセスメントと看護」として展開される各論内容を,具体的な個別の患者の看護場面にどのように活かすのか,また,ある疾患を持った患者それぞれに,この健康問題のなかの幾つかの組み合わせが存在することも予測される。看護学の視点から構築されている健康問題と,医学領域における個々の疾患とをどのように統合して理解を深めるかは,看護学教育全体の課題でもある。

 成人看護学の授業は言うまでもなく,実習における指導者の力量がいっそう問われることは申すまでもないだろう。具体的な看護に関する部分の記述が,基礎的な知識に対してやや弱い感もあるが,学生自身に考えさせて発展させる方法もあるかもしれない。ともあれ,基礎教育の場で是非活用していただきたい。

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