医学界新聞

2009.01.05

新春随想
2009


腎臓病学の未来-2009年の初夢

富野 康日己 (順天堂大学教授・腎臓病学)


 今年は私の干支で,8月にはついに還暦を迎える。医学部卒業以来,牛歩のごとくIgA腎症や糖尿病腎症,腎硬化症を中心に,各種腎臓病の病態解明と治療に努力し,基礎医学の進歩をいかに腎臓病学に活かしていくかを考えながら,仲間と共に歩んできた。しかし,「患者・家族に対し貢献してきたのか?」と問われると,いささか自信がない。じくじたる思いである。

 最近は,国内・外を通じて慢性腎臓病(CKD)についての啓発が進み,末期腎不全への進展抑制等に努力が続けられている。しかし,その抑制は十分とは言えず,わが国の慢性維持透析患者は依然として増加し,現在は27万人を超えている。透析療法も諸家の努力により進歩してきたが,透析ライフをみると完全な代替療法にはなっていない。したがって,“腎臓病学の未来”に最も求められるのは,腎再生であると思われる。

 腎再生の戦略として,(1)有効な腎再生促進因子を究明し治療薬として応用する,(2)腎幹細胞を同定し再生医療へ応用する,(3)骨髄細胞を供給源として腎再生を図る,(4)胚性幹細胞(ES細胞)を用いて腎の再構成を図る,などが挙げられている。こうした再生医療は,皮膚や骨,心筋などでは臨床応用に手が届くところまできていると言われている。しかし,腎の構造と機能は他臓器に比べ複雑であり,腎の再生には多くの課題が残されている。

 今後も地道な基礎研究を継続することにより,腎臓の一部の機能でも代替できる部分的な腎再生とその臨床応用が期待される。また,各種腎臓病の進展に深く関与している高血圧に対する遺伝子治療は,従来の薬物療法よりも長時間作用し,作用の安定性が得られることなどから,その臨床応用は有望な治療法になると思われる。

 そんな初夢で明けた2009年である……。


「日本保健医療福祉連携教育学会」発足に期待する

矢谷 令子 (新潟医療福祉大学名誉教授・作業療法学)


 現在,わが国の医療・福祉関連職は併せて50種に及んでいる。当然ながら職種の専門性にかけられる国民の期待は高い。それは各々の職種が共働して専門性を発揮すれば,より質の高い治療,問題解消という結果が得られると素直に思え,願うからである。

 あるとき学生の一人が「期待されても困るんです」と迷惑そうに答えた。力量を見込まれてこそ期待されるというものだが,「困る」には,それなりの理由や情況があったのだろう。思いおこせば,「たらい回し」や「受け入れ拒否」の実情にも種々の阻害因子があることがわかった。厚労省は「伝達システム」の開発を行うと表明した。シス...

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