緊急論考「小さな政府」が亡ぼす日本の医療(2)
連載
2008.02.18
〔連載〕続 アメリカ医療の光と影 第121回
緊急論考「小さな政府」が亡ぼす日本の医療(2)
李 啓充 医師/作家(在ボストン)
「National Burden Rate」?
医療費も含めて日本で社会保障の財源が論じられる際,「国民負担率」(国民所得に占める租税と社会保険料の割合)なる数字が議論の出発点となることが最近の流行りとなっているようである。しかし,ここで私が読者の注意を喚起したいのは,この「国民負担率」なる言葉,日本以外では一切使われていない事実である。たとえば,私は,米国で暮らすようになって20年近くになるが,当地で,「国民負担率」に相当する言葉が社会保障制度を巡る議論に使われるのを聞いたためしがない。
聞いたためしがなかっただけに,ずっと,「国民負担率」は英語で何というのか知らなかったのだが,「National Burden Rate」と訳すのだと知ったときには,あまりに滑稽で,恥ずかしさすら覚えるような訳だったので,つい,吹き出してしまった。逐語訳の和製英語であることは間違いなかったし,「National Burden Rate」と聞いて「国民所得に占める租税と社会保険料の割合」という元の意味を連想することができる米国人など一人もいないことは容易に想像できたからである(実際,当地の米国人たちに「National Burden Rateと聞いてどんな意味を考えるか?」と聞いたところ,返ってきた答えで一番多かったのは「障害者や失業者など,国家の重荷となる人々が人口に占める割合か?」というものだった)。
さらに,「National Burden Rate」をグーグルで検索すると...
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