医学界新聞

連載

2007.06.11

 

名郷直樹の研修センター長日記

41R

事件は会議室で起きている

名郷直樹  地域医療振興協会 地域医療研修センター長


前回2731号

△月×▲日

 久しぶりに映画を見た。といっても映画館じゃなくて,自宅のテレビで。DVDで。ちょっと奮発して液晶テレビ42型を買ったので。それで映画を見た。テレビを買わなければ,DVDも買わなかったに違いない。買ったDVDで見た映画は,『踊る大捜査線』。何で『踊る大捜査線』か? 別になんとなく,である。「事件は現場で起きている」,そんなフレーズがなんとなく気になって。多分どうでもいいフレーズなのだろうけど。せっかくテレビを買ったので見てみようかな。ゴールデンウィーク4連休だし。

 大型テレビを買ったのでDVDを買う。そんな本末転倒の買い物。恐るべき消費社会。ついこの前は,「世の中金じゃない」,なんて大きなことを言っていたくせに,やっぱり金か。金があるから買い物をする。ほしいものがなくても買い物をする。つまり,ほしいことが重要ではなくて,買い物自体が重要。つまり,人生は買い物である。今日は前と違う結論。人生は交換じゃなかったのか。しかし,それは私自身が落ち着いてきたということだ。人生は買い物である。いいじゃないか。

 

 そのDVDを,立て続けに2本見た。結構面白いじゃんか。特に「レインボーブリッジを封鎖せよ」の殺人事件特捜本部長として赴任した,初の女性キャリア沖田,これはすごい,というかありえない。普通に見ると,そうみえる。でもなんか沖田が気になる。

 事件は現場で起きているという刑事,事件は会議室で起きているのというキャリア官僚。これが物語の軸だ(ということにしよう)。当然事件は現場で起きており,会議室で起きているなどとほざく女性キャリアは更迭され,現場主義者が勝利する。やっぱり現場が第一だ。簡単に要約するとそういう話,と書いて,なんかむかつく。まあ,むかつくのはよくあることとして,問題はその背景。何でむかつくか。だって私自身がやってきたことは,ある面この女性官僚がやってきたようなことだ。現場から離れることも重視する。現場至上主義に対するアンチテーゼ。自分自身は,現場主義の刑事より,会議室主義の官僚に肩入れし...

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