教えないことで教える
連載
2007.01.15
名郷直樹の研修センター長日記 |
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教えないことで教える
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(前回2710号)
×□月▲×日
師走,師が走る,という月である。当然のことながら,医師は走らなくてはいけない。年末年始だからといって休んではいられない。師走のもともとの意味がどうだったか知らないが,医師にとってはまさに師走である。かく言う私も,休みのない年末年始をずっと続けてきた。しかし今年はちょっと違うんだな。週2回の外来以外,医師をほとんど辞めてしまって,もう師走ではないのだ。働き始めて,初めての年末年始続きでの休みである。なんだ,私がしたいことのひとつは,休むことだったんだ。そんなことを初めて自覚する。今までよく働いてきたということだ。まあいいじゃないか,許してくれ。休み慣れていないので,ついつい言い訳したくなる。 そんないまだかつてない年末年始を,いったいどうやって過ごそうか。やはりここは家族でしょう。大晦日は家族みんなで,そばでも食べながら,家族団らんで,と思っていたのだが,これがまたうまくいかない。子どもたちは,それぞれの友達とおでかけ,初詣だったり,部屋にこもってテレビだったり,ゲームだったり。リビングには誰もいない。残った妻はどうかといえば,二人でさびしくそばを食べ。一人より,二人の方がさびしいな。それでも,まだそばを一緒に食うところまではいい。そばを食べ終わり,一段落,さて,これから二人でややさびしい家族団らん,そこで妻が言う。別に正月だからって,いつもと一緒じゃない。眠いから先に寝るわ。まあ確かにそうなんだが。親孝行,したいときには親はなし,なんていうが,家族孝行,したいときに家族なしである。誰もこちらの都合なんかに合わせてはくれない。冷静に考えれば至極当然の状況で,そんな私の都合に合わせるようなことをしていたら,これまでのみんなの生活が成り立っていかなかったのである。当然の報いである。何でオレがせっかくうちにいるというのに,お前らはうちにいないんだ。そんな勝手が通るはずもない。ばかばかしいほど当たり前のこと。
しかし,これも考えようである。よくぞここまで育ってくれた。これまでの家族に対する自立の促し(まあこれまで放っておいただけであるが)が浸透し,誰ももう休みの日に父親なんか必要としていない。よくぞ私の背中をみて,ぐれることもなく育ってくれた。むしろぐれるべきだったのかもしれないが。そんなことを書いて,自分の背中が実際のところどうだったのか。そんなことが気......
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名郷直樹の研修センター長日記(終了)
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