総合リハビリテーション Vol.53 No.5
2025年 05月号

ISSN 0386-9822
定価 2,640円 (本体2,400円+税)

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特集 医療と福祉の工学連携

 リハビリテーションの機器に関する医工連携は古くからリハビリテーション界では行われてきましたが,それらはテクノロジーの進歩によりさらに重要な位置を占めるようになり,近年は,介護・福祉における工学や産業との連携が重要となっています.しかし,技術の進歩からニーズとのマッチング,社会実装に至るまではさまざまなハードルがあります.本特集では,医療と福祉の工学連携として,各界の方々にご執筆をお願いいたしました.本特集を通じて,読者の皆様が医療・福祉の現場における工学技術の活用とその可能性について新たな視点を得られること,そして工学と現場とのコラボレーションのよりよい方法を探る一助となれば幸いです.

1.日本がめざす医療・福祉機器産業の未来 渡辺信彦 氏
 経済産業省では,わが国の国際競争力の強化のために「医療機器産業ビジョン2024」を取りまとめ,グローバル展開へ踏み出す企業の創出と,イノベーションを生み出す研究開発環境の構築のために,各種施策が実施あるいは実施予定である.福祉機器産業においても,「介護テクノロジー利用の重点分野」,「ロボット介護機器の開発・実用化にかかわる重点分野」を定めて経済産業省と厚労省で支援している.「介護DXを利用した抜本的現場改善事業」,「介護テクノロジー社会実装のためのエビデンス構築事業」も開始されている.

2.医療機器開発における医工連携──特にリハビリテーションの分野で 佐久間一郎 氏
 今後需給バランスが複雑化するヘルスケア・医療分野の資源配分,技術開発は重要な課題である.生体レジリエンスをもたらす医工学技術の開発,優れたユーザビリティをもつ医療機器・介護機器・在宅用医療機器開発などが推奨されている.臨床での経験豊富な医療従事者と工学者が連携し,さらには病態生理などの医学的な深い知識をもつ医学研究者が連携することで,医工連携による革新的なヘルスケア・医療機器の開発につながるものと考えられる.

3.高齢化先進国日本における福祉と介護テクノロジーの連携 峰村浩司 氏
 介護テクノロジーの研究開発支援は経済産業省が,開発事業者のシーズと介護現場のニーズをつなぐ役割は厚生労働省が担っている.現在,「介護ロボット開発・実証・普及のプラットフォーム」事業では,相談窓口の設置,全国8拠点のリビングラボの設置,実証フィールドの登録が行われている.介護分野のスタートアップの支援・振興として「CARe Innovation Support Office(CARISO)」の立ち上げも予定されている.また,介護保険事業者に対しても,テクノロジーの導入を支援している.これらの施策効果の見える化も,デジタル庁と連携して行っている.

4.企業支援の立場からみた医工連携のポイント──ユーザーイノベーションの創出 谷下一夫 氏
 2013年以来のトレンドとして,「医工連携出会いの広場」の急増,医療ニーズを探索して技術シーズとのマッチングを行う交流会の増加,医工人材育成の本格化,薬機法や保険収載に関する情報開示や相談機会の増加,公的資金の増加がある.これらによりイノベーションにおける社会的壁は低くなっている.さらに,認知的壁を超える方法はさまざまに模索されており,日本における医療機器開発のエコシステムが創出されることを期待したい.

5.介護支援ロボットの社会実装に向けたリビングラボの活用と展望 加藤健治 氏
 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター健康長寿支援ロボットセンターは,厚生労働省が介護テクノロジーの開発・実証・普及を促進するために設置した全国8か所の「基幹型リビングラボ」の一つであり,多彩な介護ロボットの実証実験を推進している.その一つが移乗支援ロボットであり,リビングラボでの実証を経て介護施設へ導入され,2年以上の長期利用を通じてその有効性が検証されている.リビングラボの機能を最大限に活用するためには,運営体制や連携強化も不可欠であり,今後の産学官の連携の推進が期待される.

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医書.jpにて、収録内容の記事単位で購入することも可能です。
価格については医書.jpをご覧ください。

特集 医療と福祉の工学連携

日本がめざす医療・福祉機器産業の未来
渡辺 信彦

医療機器開発における医工連携──特にリハビリテーションの分野で
佐久間 一郎

高齢化先進国日本における福祉と介護テクノロジーの連携
峰村 浩司

企業支援の立場からみた医工連携のポイント──ユーザーイノベーションの創出
谷下 一夫

介護支援ロボットの社会実装に向けたリビングラボの活用と展望
加藤 健治


●巻頭言
リハビリテーションの未来を築くには
難波 秀行

●入門講座
リハビリテーション患者のための薬剤管理①
リハビリテーション患者における薬剤管理の考え方
小瀬 英司

●実践講座
嚥下障害の評価の実際②
脳血管障害回復期に期待される嚥下機能評価
重松 孝

車椅子クッションどう選ぶ?⑤
高齢者
古田 大樹

●研究と報告
外来理学療法利用者における活動量モニタリングの実施状況──記述的横断調査
伏見 茉純,他

●症例報告
外側上腕皮弁・植皮術後の患者3例に対し,術後管理を目的として行った作業療法士によるスプリント療法
川村 慶,他


●高齢者と障害者の住まいの選択②
高齢者の住まい②──介護保険制度にみる高齢者の住まい
関田 歩

●歩行と動作の計測機器⑤
脳卒中患者の動作分析の実際
田中 惣治

●Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
大江健三郎の『万延元年のフットボール』──障害者文学としての側面
高橋 正雄

●Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「104歳,哲代さんのひとり暮らし」──「人生100年時代」のロールモデルここにあり
二通 諭

●学会印象記
第40回 日本義肢装具学会学術大会
佐藤 未希

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